重量と質量(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
1962年生まれの私は今61歳。私が子供のころには宇宙旅行を扱った子供向きの読み物がたくさんあった様に思います。アポロ宇宙船による有人の月面着陸が1969年だったので、それに会わせたブームがあったのでしょうか。
さて、その中で読んだ話だと思いますが、月の重力は地球の約6分の1なので物の重さも6分の1になる。宇宙ステーションでは無重力なので重さはゼロ、という知識は小さい頃からありました。でも、
月面でも宇宙空間でも質量は変わらない
という話は中学か高校になってから知ったのではないかと思います。だって重さ、というか重量と質量との違いというのは分かりにくいものです。というか、そもそも力学を学ぶ前は質量という概念を(正確には)知らないのですから重量との違いを考える必要、というか機会がそもそも無い訳ですよね。
私達は運動方程式
f=ma
について学んではじめて質量という概念にであう訳です。でもこの質量が重量とどう違うのか、という点に関しては多くの学習者が分かりにくいと感じるポイントなのだそうです。
質量とは力(f)と加速度(a)を関連付ける式に現れる定数。重量とは(通常は)地球の重力によって生じる力のこと。重量は本来は力を表すものなので質量とは単位も異なっています。しかし、重量には質量と数値が同じになるkgfやkgwなどの単位系が用いられて日常生活で両者を区別する必要はありません。というか、その必要が無いように kgf という重量に特化した単位が用いられているのです。
つまり、日常生活では重量には質量とを区別しないことが慣習によって「推薦」されているわけです。それを物理を習ったから、といって急に区別しろといわれても、戸惑ってしまうのは仕方の無いことですよね。
さて、私自身は重量と質量の違いを
重力の無い宇宙ステーション内でなら1トンの車でも支えることができる。でも時速百キロで走ってくる車にひかれたら即死します。
と説明した文章を何となく覚えています。いや重力がない場合、何をもって支えると言うかは不明だという気もするので、本当にこの通りの文章だったかは分からないのですが、この様な説明でなんとなく重量と質量の違いに納得した記憶があります。地球上に話を限定していると重量と質量の違いは分からない、というか気にならないのですが、地球外の異なる重力の場所を想像すれば違いが分かりやすいのですね。
さて、大変役に立ったこの説明ですが(少し高級な)宇宙旅行の子供向けの読み物だったのか、それともSF小説の一部だったのか、詳しいことは覚えていないので原典を確認することはできないでいます。
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