大気中の二酸化炭素濃度が400ppmを切ったのはいつか(江頭教授)
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えっ、昨日同じタイトル?いえいえ、よく見てください。今回のタイトルは「大気中の二酸化炭素濃度が400ppmを切ったのはいつか」です。前回のタイトルは「大気中の二酸化炭素濃度が400ppmを超えたのはいつか」なので真逆なのです。
まあ、半分ネタの様な話ですが、昔は大気中の二酸化炭素濃度は高くて400ppmを超えていたどころか、もっとずっと濃度が高かったこともあるのです。問題はどのくらい昔か、ということでして……まあ46億年くらい前、ですかねえ。
地球ができたとき、大気の主成分は水蒸気だったそうです。地球が冷えて水が液化(海の誕生ですね)すると、二酸化炭素が主成分に。やがて二酸化炭素は海水の溶けてカルシウムと結合し、石灰石になることで減少。大気の主成分は窒素となって現在に至ります。しかし、大気中の二酸化炭素はそれ以降も減少を続ける。その大きな理由は光合成を行う生物(植物の誕生ですね)が現れたことで27億年前のことだとされているそうです。
図は国立環境研究所の「環境展望台」というサイトから(こちらのページ)。出典情報は「大気組成の変化(田近、1995)出典:丸山茂徳・磯崎行雄著『生命と地球の歴史』(1998, 岩波新書)の図より改編」となっています。
現在の大気中には20%程度の酸素が含まれているのですが、その全てが光合成によって作られた、と考えると植物の成し遂げた偉業にめまいがします。
これに比べると人間は……人間が全力で化石資源を燃焼させても、(産業革命以来の)200~300年で大気中の二酸化炭素濃度を 280 ppm から 420 ppm に変えるのがやっとだったのです。変化の幅は 140 ppm で、パーセントにすれば 0.014% に過ぎませんから、1000倍以上の差があるのですね。
いや、ちょっと待てよ!植物による大気組成の改変には10億年単位の時間がかかっています。人間が 140 ppm の改変に要した時間は数100年ですから一千万倍以上の違いです。変化の幅は千倍でも時間は一千万倍違うとしたら変化の速度は一万倍も早いのです。
これはさすがに……めまいどころか頭痛がしてくる話ですよね。
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