大気中の二酸化炭素濃度が400ppmを超えたのはいつか(江頭教授)
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私の担当する授業はいくつかあるのですが後期には2年生向けの「サステイナブル環境化学」という授業をもっています。タイトル通り環境問題と化学に関する話題がいろいろと出てくる授業なのですが、そのなかで
大気中の二酸化炭素の濃度は、産業革命以前は 280 ppm だったのですが、今では 400 ppm を超えています。
という話をしました。続けて、
皆さんも大気中の二酸化炭素濃度が 400 ppm を超えた、というニュースを覚えているのでは?
と問いかけたのですが、なにか曖昧な反応が。学生諸君も、もう少し環境問題に関心をもってくれても……などと思ったのですが、はて、そう言えば「大気中の二酸化炭素濃度が400ppmを超えた」というニュースはいつの話だったっけ?
などと思って調べたところで行き当たった記事が環境省の「季節変動を取り除いた全大気平均二酸化炭素濃度が初めて400 ppmを超えました! ~温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による観測速報~」という記事。なんとこの記事の日付「2016年10月27日」となっていてすでに8年も前なのです。今の2年生の学生さんたちは中学1年くらいでしょうか。覚えていなくても不思議はないかなあ。
図は同記事からの引用。大気中の二酸化炭素濃度には季節変動があるのでその効果をならした平均濃度で考えるのですね。
さて、では今の大気中の二酸化炭素濃度はどの程度に増えているのでしょうか。こんどは気象庁の「大気中二酸化炭素濃度の経年変化」についての解説(こちらの記事)によれば
2023年の大気中二酸化炭素の世界平均濃度は、前年と比べて 2.3 ppm 増えて 420.0 ppm となっています。
とのこと。いや、もうこんなになっているのですね。
考えてみれば大気中の二酸化炭素の濃度は上昇こそしていますが、その上昇速度はここ数年来それほど大きく変化していません。2023年に 420 ppm を超えることは既定の事実だったといえるでしょう。単に私が気が付いていなかっただけ、不明を恥じるとはまさにこのことです。私もこれからは
大気中の二酸化炭素の濃度は、産業革命以前は 280 ppm だったのですが、今では 420 ppm を超えています。
という言わないといけませんね。
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