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蒸留は最古の分離技術(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 私(江頭)の専門は「化学工学」なので、そのものズバリ「化学工学」という授業を受け持っています。後期はちょうどその「化学工学」の開講期間で、いまは「分離技術」それも「蒸留」について説明したところです。

 「化学工学」はそもそも「化学プラント設計学」でもあるので化学工場に設置される装置をどう設計するのか、が授業の大きな割合を占めています。もちろん、化学工場にはいろいろな装置があって、いろいろな役割を持っているのですが、その中で「蒸留」は比較的多くの人に知られているのではないかと思います。

 もちろん「高校の化学の授業にでてきます」という事情もあると思いますが、やはり我々の身近に「蒸留」とついた言葉がある、ということが大きいと思います。その言葉、皆さんは思いつくでしょうか?

 皆さんがもし高校生なら少し縁遠いことばで、化学の授業の方が身近かも、などと思いますが……。

 いや、もったいぶるのは止めましょう。ズバリ「蒸留酒」のことです。

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 お酒の主成分は、いや、主成分は水か。じゃあお酒の「有効成分」はアルコール、正確にはエチルアルコール(いや、化学の関係者ならエタノールと言うべきですね。)です。これは糖類を酵母で分解して作られるのですがどうしてもその濃度には限界があるのです。

 考えれば当たり前のこと。「エタノール消毒」というエタノールで細菌を殺す作業が在るわけですから酵母自体もアルコールに無限の耐性が有るわけではないのですね。

 そこで醸造したお酒を加熱し、蒸発してきたアルコールを凝集させてより濃度の高いアルコールを得る、という技術、つまり蒸留が開発されたというわけです。

 お酒を加熱する、つまり「お燗を付ける」とお酒の効き方が弱くなる、ということは経験的に知られていたのではないでしょうか。これはお酒を「煮詰める」と逆効果だ、ということになります。ですから発想を逆転させて煮詰めたときにでる蒸気を集めよう、と考えた人がいたのでしょう。

 蒸留酒の起源はかるく紀元前までさかのぼることができるそうです。今となってはだれが蒸留酒の、じゃなかった蒸留の発明者かは分かりません。もしかしたら複数の場所で独立に何度も発明されているのかもしれませんね。

 江頭 靖幸

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