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実験データをとる順番はどう選ぶのか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 昨日の記事では実験中には手書きのグラフを書くことをお勧めしたのですが、今回は実験データをとる順番についてのお話。もっとも前回の記事であつかった「反応速度の測定」の実験ではデータをとる順番について議論する余地はありません。だって、時間変化を追跡してデータをとるのですから、順番も何もありません。時間の進むとおりにデータをとるだけですよね。

 同じ「染料が漂白剤で脱色される反応の速度を測る」という実験でも、漂白剤の濃度を変えるとどんな変化があるのか、を調べる実験を行うとすればどんな順番でデータを取るのかが問題になります。いや、問題というより選択肢ができるというべきですかね。

 さて、この場合どうやってデータを取るのが良いでしょうか。

 まず思い付くのは「漂白剤の濃度の低い側から順番にデータを取る」というやりかたでしょう。

 普通に考えて漂白剤が濃い方が脱色する反応は早くなるはず。ならば「薄い漂白剤に濃い漂白剤が混ざる」と影響が大きいのですが「濃い漂白剤に薄い漂白剤が混ざる」場合には影響は少ないはずです。漂白剤の濃度の低い側、つまり薄い漂白剤を使った実験からスタートしておけば、もし実験で漂白剤の混入が起こったとしても、その影響は少ないはず。これならきれいなデータが取れるでしょう。

 と、まあ、理屈はその通りなのですが、はて、それで良いのでしょうか?

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 本当に大切なのは「きれいなデータを取ること」ではないはず。間違いのない実験操作を行って正しいデータを得ることのはずです。もしそうなら逆に「漂白剤の濃度の濃い側から順番にデータを取る」ことにすれば間違いに気が付きやすくなって良いのでしょうか。

 でもこれも「漂白剤が濃い方が脱色する反応は早くなるはず」という思い込み(かもしれない)を前提とした判断ですよね。

 結局のところ、一般的には実験データをとる順番はランダムに取るのが良い、ということになるでしょうか。

 で、最後には前回と同様に「実験中には手書きのグラフを書く」のがお勧め、という話に戻ってきます。一番望ましいのは予め順番を決めず、データが出るたびにグラフにプロットしてみることでしょう。はじめは実験条件の上限と下限、真ん中、とデータを取ってゆき、グラフがどんな形になるのかを探る。右肩上がりか右肩下がりか、あるいはピークが出るのでしょうか。ピークがあるのなら最大がどの辺りか細かくデータを取りたくなるでしょう。形がはっきり分かるまで必要十分なデータを取れば良いのです。また、異常なデータがでたらその場で再実験、というのは前回も強調したことですよね。

江頭 靖幸

 

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