核融合は未来のエネルギー源か(江頭教授)
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先日の記事で本学工学部応用化学科の1年生諸君が「核融合」について熱い議論を燃せてくれた(大袈裟?)という話題に触れました。そう言えばこのブログでも核融合について触れたっけ、などと思い出して見つけたのが2018年4月18日の記事。今回はこの記事を再録しましょう。
未来のエネルギー源、ここで未来というのはかなり遠い未来、たとえば2100年くらいのことだと思ってください。日本政府の「エネルギー基本計画」でも言及されるのはせいぜい2050年くらいまでですから、2100年とか22世紀になると具体的な計画や政策の射程を越えた未来、となるわけです。となれば、なんでも自由に想像しても良いのですが、少しでも合理的に考えれば石油や天然ガスなどの化石燃料は枯渇している、あるいは温暖化問題で使用が規制されているはずで、未来のエネルギー源にはなり得ないでしょう。
未来のエネルギー源の候補の一つは「核融合」です。核反応を利用したエネルギーですが、核分裂と違ってウラン資源を必要としない点で実質的に無尽蔵のエネルギー源だと言えます。
実際、石炭から石油へのエネルギー源のシフトが行われたころから、化石燃料から核分裂、そして核融合へ、というエネルギー源の変化が、ある種の社会的なコンセンサスがあった様に思います。
では、現在の核融合はどのように見られているのでしょうか。
今の核融合研究の中心は国際協力による核融合実験炉 ITER(イーター) にあると言って良いと思います。ITERのWEBサイトには
「ITER」は、国際熱核融合実験炉が語源で、イーターと読みます。 ITER計画は、平和目的の核融合エネルギーが科学技術的に成立することを実証する為に、人類初の核融合実験炉を実現しようとする超大型国際プロジェクトです。ラテン語で道や旅という意味を持つ「ITER」には、核融合実用化への道・地球のための国際協力への道という願いが込められています。
ITER計画は、2025年の運転開始を目指し(2016年6月ITER理事会で決定)、日本・欧州連合(EU)・ロシア・米国・韓国・中国・インドの7極により進められています。
とあります。
「全世界が一体となって未来のエネルギー源を研究しているなんて素晴らしい!」と思いますが、どの国も一国で核融合の実験炉をつくる予算がない、という言い方もできます。実のところ ITER の核融合実験炉建設費用は2兆円以上となる様です。その先の実証炉から実用化にいたる道のりを考えると、本当に遠い未来のエネルギー源の様です。