「公害の輸出」と「水俣条約」(江頭教授)
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以前、こちらの記事で「公害の輸出」と呼ばれる現象、グローバル化した世界では環境規制の緩い国に化学工場が集まって公害の原因物質を出し続けること、を説明しました。グローバル化した世界では、規制の緩いところに問題が集中する。これは一般的な傾向で、化学工場の廃棄物による環境汚染もその例に漏れない、ということです。
この「公害の輸出」を防ぐためには世界で一斉に規制を行うことが必要ですが、「世界政府」が存在しない現在の世界では、法的規制は多国間での条約締結という形をとるになります。
その具体例として思い浮かぶのは「水俣条約」でしょう。
水俣、という地名から連想されるように水俣条約は水俣病の原因物質であった水銀を規制するためのものです。条約については環境省のこちらのページで説明されていますが、水銀の使用や取引を管理し、使用量を減らしてゆくこと、一部の用途については使用を禁止することで「水銀及び水銀化合物の人為的な排出から人の健康及び環境を保護すること」を目的としています。
2020年までに製造、輸出、輸入が原則禁止される水銀の用途として体温計や血圧計もリストアップされていますから、今後普通に生活している人が水銀を見ることはなくなるのではないでしょうか。
水銀の化学工場での利用については「塩素アルカリ工業及びアセトアルデヒド製造施設を対象に、製造プロセスにおける水銀の使用を禁止。」と定められています。そして、「 塩化ビニルモノマー、ポリウレタンなどの製造プロセスでの水銀使用を削減。」とされていて、触媒としてでも、工場ではなるべく水銀を使わないことにしよう、という取り決めがされています。
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