電気ポットはどのくらいのスピードで暖まるのか?への補足説明 その2(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
新しく購入した電気ポット。その取説に書いてあったデータから温度変化を計算する、というテーマでいくつか記事を書いてきたのですが、今回もその続きです。
前回は「電気ポットはどのくらいのスピードで暖まるのか?」という以前の記事に対する補足説明として、電気ポットから熱が逃げる効果を考慮した場合と無視した場合の違いについて検討しました。結果、熱が逃げる効果の影響はそれほど大きくない(時間にして5%ほど)という結果を得ました。これは電気ポットという製品の役割上、加熱速度は大きく、熱の逃げる速度は小さくなるように設計されていることを考えれば、まあ妥当ですよね。(理想の電気ポットなら熱が逃げないはずです。その場合は影響0%となるはずですからね。)
さて、その前回の記事の締めは以下の様でした。
ということで「電気ポット(3L、700W)でお湯を沸かすのに何分かかるか」の内容は大体問題なしです。と、言いたいところなのですがこの記事には実は別のところに問題があるのです。それは、次回にまたご説明しましょう。
なので、今回はその別の問題について説明しましょう。
熱が逃げる効果を計算するかしないかで変わる数値として、実は電気ポットの(見かけの)熱容量があります。
まず、「電気ポット(3L、700W)でお湯を沸かすのに何分かかるか」の中では電気ポットに入れる水(私が購入した電気ポットは 3.0 L サイズでした)とその他の部分の(見かけの)熱容量を分けて評価し、水を除いた電気ポット本体の(見かけの熱容量)を
「ポットの(見かけの)熱容量」は 3.0 L の水の 10/23 倍。つまり水 1.3 L 分に相当するでしょう。
と見積もっています。
一方で熱が逃げる効果を考慮した上で評価した「電気ポットはどのくらいのスピードで暖まるのか?」の記事では水と電気ポット本体を含めて
ともとめています。
さて、水 3.0 L の熱容量は 4.12 × 3000 = 1.24 × 104 J/℃ ですから、これを引き算すると電気ポット本体の(見かけの)熱容量は 4.77 × 103 J/℃ となります。
先の記事と同様に水の量に換算すると 4.77 × 103 / 4.12 = 1.16 × 103 g となり、1.16 L の水に相当することが分かります。1.3 L との見積より少し小さくなっていますがそれほどの変化はありませんね。
次に、電気ポット本体の重さは取扱説明書に 2.2 kg とありました。したがってポットの(見かけの)比熱は 4.77 × 103 / 2.2 × 103 = 2.17 J/g です。水の約半分です。
以前の「電気ポット(3L、700W)でお湯を沸かすのに何分かかるか」の中でも同様の説明をしていて、最後
「ポットの(見かけの)比熱」は水の 1.3/2.2 倍、すなわち 0.6 倍程度ということになります。
と締めています。
さて、わざわざこの説明をしたのは、この結論に大きな問題があるからです。電気ポットを構成している「水の約半分の熱容量をもつ物質」とは一体何なのでしょうか?
たとえば金属。鉄の比熱は 0.46 J/g℃ 程度。アルミは 0.9 J/g℃、銅で 0.39 J/g℃ といずれも小さすぎです。
プラスチックはどうでしょうか。塩化ビニル(硬質)なら 0.8~1.2 J/g℃、ポリエチレンテレフタレート(PET)なら 1.2 J/g℃、ポリエチレンでやっと 2.3 J/g℃ となります。
「なるほど。電気ポットは総ポリエチレン製なのか。」いやいや、電気ポットに金属部品が無いはずはありませんよね。一体どうなっているのでしょうか。これについてはまた別途考えてみましょう。
「日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事
- 英文字略称(片桐教授)(2019.03.13)
- 地震と夏みかん(江頭教授)(2019.03.11)
- 追いコンのシーズンはご用心(片桐教授)(2019.03.07)
- Don't trust over 40℃!(江頭教授) (2019.03.06)
- 「加温」の意味は「温度を加える」?(西尾教授)(2019.03.04)