電気ポットはどのくらいのスピードで暖まるのか?
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
ここ最近続けている電気ポットに関する記事、まだまだ続きます!
ということで、今回のタイトルは……えっ、前回と同じって?いえいえ、よく見てください。前回までは冷える話だったのですが、今回は暖まる話になっていますよ。
前回までで電気ポットの冷える速度を定式化し
という式を導きました。この式ではT は電気ポットの(中の水の)温度、 Tr は周囲の温度(室温。ここでは 23 ℃ )、 T0 は冷却が始まる時の温度(この時、ポット内の水は沸騰しているので 100 ℃ です)。C は電気ポットと水の(見かけの)熱容量、小文字の t は時間です。そしてh は伝熱係数です。電気ポットの取説に書いてあったポットのお湯が沸騰してから90℃、70℃に冷える時間を対数グラフにして h/C = 3.02 × 10-3 min-1という数値を得ています。(おっと、SIに準拠すれば h/C = 5.03 × 10-5 s-1ですね。)
さて、取扱説明書にはもう一つのデータとしてお湯を温めるのにかかる時間も書いてありました。室温から沸騰まで33分とのこと。今度は個のデータを使って電気ポットの性質について調べてみましょう。
まず、電気ポットが冷えるときの定式化を振り返ってみましょう(こちらの記事)。電気ポットから逃げる熱だけを考えると以下の式が成り立ちます。
これに電気による加熱の効果を加えてみましょう。ポットに内蔵されているヒーターの出力をQe (単位は W )とすると
となります。まずは微分方程式を解きましょう。先に加熱が無い場合の解を得ていますから、Qe を含むこの式を満たす解を一つ(これを特解といいます)見つければよいですね。特解をT†とし、定数と仮定すると左辺の微分は0となり
から
となります。
初期の温度が周囲と同じ Tr からスタートして加熱される際の温度変化を求めると
となります。
この式で温度 T が100 ℃ になるまで(沸騰するまで)の時間が 33 分だという情報が取扱説明書に載っていました。また h/C の値も冷却過程のグラフから求めてあります。数値をいれて計算すると
となりました。
ここで電気ポットのスペックから Qe は 700 W ですから
となり h を求めることができました。 h/C の値も冷却過程のグラフから求めてありますから、今度はポットの(見かけの)熱容量 C を求めることができます。これは
となりました。