電気ポットの保温機能(江頭教授)
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最近の新しく研究室に購入した電気ポットの話をしています。最初の記事はポットを買った経緯について。二回目の記事ではポットの加熱に必要な時間について検討しました。水の比熱からポットでお湯を沸騰させるために必要な時間を計算してみたのですが、実はポットの取説にその数字が載っていた(下の図。再掲しました。)、というお話。三回目ではこの数値を使ってポットのお湯を 90 ℃から 98 ℃に加熱し直す時間を計算しました。
さて、ポットの見かけの熱容量を水 1.3 L 分だと見積もりることができたので、今回はこのポットの保温機能について検討してみましょう。表をみると沸騰して 100 ℃になったお湯が 90 ℃まで冷えるのにかかる時間が約35分だと書いてあります。100 ℃と 90 ℃の水(+ポット本体)の持つ熱量が約35分で外部に逃げる、ということですからこの数値を使って熱の逃げる速度を計算することができます。
ポットに入っている水が 3 L、そしてポット自体も加熱される効果が 1.3 L分追加。これが 10 ℃ 温度上昇するのに必要な熱量を求めましょう。
(3×103 + 1.3×103 )× 4.2 × 10 = 1.806×105
約180kJとなりました。
この熱量が35分でポットから逃げるのですから、その速度は
1.806×105 ÷ ( 35 × 60 ) = 86
86Wとなりました。
加熱する速度が 700 W ですから、熱の逃げる速度はその約8分の1くらいです。
もっと単純に考えて「23 ℃の水を沸騰させるまでの時間」が約33分で「それが 10 ℃冷えて 90 ℃になるまでの時間」が約35分でほぼ同じ、と考えれば「77 ℃の加熱速度」と「10 ℃の冷却速度」が同じだと見なすこともできます。この計算なら加熱する速度にくらべて熱の逃げる速度は7.7分の1となるはず。最初の計算と大体同じ結果に落ち着きますね。
さて、このポットのスペックには「700W」と書かれていますが、これは電力利用のピーク時の値です。700Wで加熱し、その熱が86Wで逃げる、という使われ方がされるのですから、このポットにかかる電気料金という観点からすれば「700W」と言うより「86W」の電気ポット、と呼んだ方が適切だ、とも言えそうです。
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