電気ポットはどのくらいのスピードで冷えるのか?への追加説明(その2)(江頭教授)
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前回の記事では以前に書いた「電気ポットはどのくらいのスピードで冷えるのか?」という記事への追加説明として
「お湯の温度ー室温」と「経過時間」の間には指数関数の関係があると期待できます。
という説明を追加させてもらいました。で、今回は件の記事でこの直後に書いた
指数関数の関係を確認するためには縦軸を対数軸とした片対数プロットをとって、直線になるかを確認すればよい。
という内容についての追加説明です。
さて、前回の追加説明では電気ポットから逃げる熱がポットと周囲の温度との差に比例すると仮定して電気ポットから逃げる熱と電気ポットの温度変化の関係から
という関係を導きました。この式で T は電気ポットの(中の水の)温度、 Tr は周囲の温度(室温。ここでは 23 ℃ )、 T0 は冷却が始まる時の温度(この時、ポット内の水は沸騰しているので 100 ℃ です)。 C は電気ポットと水の(見かけの)熱容量、小文字の t は時間です。 そして h は伝熱係数。さきに「電気ポットから逃げる熱がポットと周囲の温度との差に比例すると仮定」したのですが、その比例定数となります。
さて、この式をグラフ化するとどうなるでしょうか。 t = 0 で T0 - Tr = 100 - 23 = 77 となり、右肩下がりで徐々に0に近づく曲線になります。実際のデータ(この場合は電気ポットの取扱説明書にある数値)に基づいてこのグラフを書き、その「右肩下がり」の下がり具合から h/c の値を決めることができる。というのが先の記事の趣旨なのですが、簡単に「下がり具合から h/c の値を決める」と言っても昔、つまり MS-Excel の様な表計算ソフトが、というかコンピューターが利用出来なかった時代には、そのままでは簡単に具体的な数値を決めることはできませんでした。
そこで利用されていたのが対数軸をもったグラフ用紙です。このケースの場合は縦軸が対数になったグラフ用紙を利用していました。先の記事のグラフは「対数グラフ用紙」こそ用いていませんが、その考え方に沿って縦軸を対数軸にしたものです。(以下に再録します)
縦軸を対数にする、とはどういうことなのでしょうか。言葉で説明すると
縦軸の数値目盛りの位置をずらし、グラフ上の数値を表す点の間隔をその数値の対数に比例するように変える
ということになります。もっと簡単に言えば y=f(t) の関数をプロットするとき、横軸 t の位置に y をプロットする代わりに y の対数をプロットする、ということです。先の式について、まず両辺の自然対数をとってみましょう。
ln( T - Tr ) は t の一次関数になっていて、比例定数が - h/c となっている。これならグラフの傾きを求めれば(コンピューターのない時代にどうやったかって?物差しを当ててグラフ用紙上の距離を物理的に測ったのですよ!)具体的な数値を決めることができます。
さて、上式で自然対数をとることにしていますが、実際に市販されている方対数グラフの対数軸は常用対数用のものです。なのでこの式も少し変わって以下のように。
傾きを求めるところまでは同じですが、そのあとで ln(10) で割る、という操作が入ります。
さて、ここまで整理してこの先のグラフを見てみると少し気になる点があります。傾きはともかく、y切片はどうでしょうか。先に示したように T0 - Tr = 100 - 23 = 77 なのでピッタリ 77 ℃ になるはずです。で、Excelが出した近似式では 75.9 ℃。ほとんど同じと言うこともできますが、この近似式だと 0 分で瞬間的に温度変化が起こる計算になるのですが……。
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