電気ポット(3L、700W)でお湯を沸かすのに何分かかるか(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
前回の記事で書きましたが研究室の電気ポットを新しくしました。新しいポット、いままで使っていたものと同じサイズを選んだので容量は 3 L 、電力は 700 W でした。
さて、このポットでお湯を沸かすのにどのくらいの時間がかかるのだろうか。これは計算してみましょう。
まず前提として水の最初の温度は 20 ℃ としましょう。それを加熱して 90 ℃ にすることにします。 70 ℃ の温度上昇ですね。
水は満水で 3 L とします。重量にすれば 3 kg になります。水の比熱は 1 cal/(℃g) です。まあこれはカロリー( cal )の定義ですね。W に関連付けるなら SI に直して 4.2 J/(℃g) 。ここで 4.2 は熱の仕事当量です。
まず、水をお湯に加熱するために必要なエネルギーを計算しましょう。
3×103 × 4.2 × 70 = 8.82×105
だいたい 900 kJ ですね。700 W でこれだけのエネルギーを供給するために必要な時間は
8.82×105 / 700 = 1.26×103
です。この値の単位は秒なので分に直すと 21 分 になります。
もっともこの計算には問題もあります。まず、水が温められているとき、ポット本体も水と一緒に温められますからそちらにも熱が取られてしまいますね。それに電気ポットが温まって周囲よりも温度が高くなれば、こんどはポットの周りの空気に向かって熱が逃げてゆくことになります。そう考えるとざっと30分くらいで温まる、という見当でしょうか。
と、ここまで書いたところで気が付いたんですよね。取説に以下の情報が載っていることに。
表をみると 3.0 L のタイプで約33分だとか。「ざっくり30分」という見立てはそれなりに良かったのでは、と少し安心しました。
さて、よく見るとこちらの表は、先ほどの計算と条件設定が少し違っています。水の最初の温度は 20 ℃ ではなくて 23 ℃ となっています。それに 90 ℃ までの加熱ではなく、沸騰するまで、つまり 100 ℃ になるまでの時間が取扱説明書に記載されている条件なのですね。温度差が 70 ℃ から 77 ℃ と1割増しに変わっているので、最初に計算した水だけが暖まると考えた条件での加熱時間、21 分は 約 23 分となります。
表に記載された「約33分」という数字との約10分の差は先ほど指摘した「ポット本体も水と一緒に温められ」ることに対応すると思われます。ポットの中の水が 3.0 L で、これの加熱に23分、のこりがポットの加熱に使われたのだとすると、ポットを加熱するために使われた熱量は水を加熱するために使われた熱量の 10/23 の割合だということになります。ならば「ポットの(見かけの)熱容量」は 3.0 L の水の 10/23 倍。つまり水 1.3 L 分に相当するでしょう。
この電気ポットの質量は 2.2 kg だと取扱説明書に記載がありましたから「ポットの(見かけの)比熱」は水の 1.3/2.2 倍、すなわち 0.6 倍程度ということになります。
「日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事
- 英文字略称(片桐教授)(2019.03.13)
- 地震と夏みかん(江頭教授)(2019.03.11)
- 追いコンのシーズンはご用心(片桐教授)(2019.03.07)
- Don't trust over 40℃!(江頭教授) (2019.03.06)
- 「加温」の意味は「温度を加える」?(西尾教授)(2019.03.04)