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電気ポットはどのくらいのスピードで暖まるのか?への補足説明 その1(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回の記事「電気ポットはどのくらいのスピードで暖まるのか?」では電気ポットでヒーター(私が購入したものは 700 W でした)がオンになったとき、どのくらいのスピードで温度が上昇するかを定式化しました。今回はこの記事に関する補足説明。何を補足するかというと、それ以前の記事「電気ポット(3L、700W)でお湯を沸かすのに何分かかるか」との違いについてです。

  はじめの記事での計算ではポットに入った水にヒーターに加えられた電力が伝わる、という点だけに注目して計算していました。それで得られた時間の計算値は21分。でもそれは現実的ではない。水だけでなくポットも温まるのだから、ポットを加熱する熱も必要なはず。実際、取扱説明書を見ると加熱に必要な時間は33分とありました。記事では時間が長くなっているのはポットを加熱するための熱を供給するための時間が加わるからだ、として結論をまとめていました。

 さて、この説明は前回の記事の内容とは少し異なっています。ポットを加熱する際、ヒーターのスイッチが入った瞬間ならヒーターに加えられた電力が水とポット本体に伝わることだけを考えればよいでしょう。でも水の温度が上がってゆくと外部に向かって熱が逃げるようになる。その効果も計算に入れなければなりません。幸い、電気ポットのお湯が冷却する時間のデータが取り扱い説明書に記載されていたので、熱が逃げる速度も見積もることができます(こちらの記事、とその補足1補足2)。前回の記事での計算はこの「熱が逃げる効果」を加味したものです。

 では、「熱が逃げる効果」は実際どのくらいの影響を与えているのでしょうか。それを示したのが以下のグラフです。

Fig1_20250227070401

 

 グラフの青色の線が前回の記事の式をつかって計算した電気ポットのお湯が温まる過程です。そしてオレンジ色の線は「熱が逃げる効果」がなかった場合の温度変化。御覧のようにほとんど変化は見られません。

 実際、「電気ポットの保温機能」という記事で示した様に、この電気ポットからは 90 ~ 100 ℃で加熱されている状態で 86 W 程度の熱が逃げることがわかっています。これは 700 W の加熱速度よりかなり小さい。しかも電気ポットが加熱されている時間中、温度が低い間は逃げる熱量はもっと少ないのです。熱が逃げる効果を加味しても計算結果は1割も変わらないだろうと予測され、そして計算結果もそのとおりになっています。(熱が逃げる効果を無視した場合、沸騰までかかる時間は33分から約1分半ほど短縮されます。大体5%程度の差ですね。)

 ということで「電気ポット(3L、700W)でお湯を沸かすのに何分かかるか」の内容は大体問題なしです。と、言いたいところなのですがこの記事には実は別のところに問題があるのです。それは、次回にまたご説明しましょう。

 

江頭 靖幸

 

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