電気ポットはどのくらいのスピードで冷えるのか?への追加説明(その1)(江頭教授)
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電気ポットを新しくしたら、その取扱説明書に加熱時間や冷却時間のデータが乗っていたので色々計算してみた、という話を以前に書きました。(こちらやこちら、そしてこちらも。)同シリーズ(?)の最後の記事は「電気ポットはどのくらいのスピードで冷えるのか?」だったのですが、この中で説明を省いたところがいろいろとあったので、今回はその説明を追加しよう、という回です。
さて、件の記事のメインの内容は取説に載っている電気ポットのお湯が沸騰した時から90°、70°に冷えるまでの時間についてのでデータを用いて電気ポットからどれくらいの熱が逃げるかを計算してみよう、というお話しでした。まずはこの辺をもう少し詳しく説明しましょう。
まず「電気ポットからどれくらいの熱が逃げるか」という問いかけには問題があります。これ、電気ポットの温度(正確には電気ポット内の水の温度)が何度かによって答えが変わるのです。水が沸騰していれば熱が逃げるというイメージですが、例えば電気ポットの温度が室温だった場合(取扱説明書の表では 23 ℃ とのこと)には熱は全く逃げません。逆に電気ポットに氷をいれて冷やしたら外から熱が入ってくるはずですよね。
要するに、電気ポットから逃げる熱というのは電気ポットの温度と周囲の温度との温度差によって変化するのですが、このような場合、まずは単純に温度差に比例すると考えます。その比例係数を伝熱係数と呼びます。熱の逃げる速度は W の単位で表されますから、伝熱係数の単位は W/℃ あるいは W/K となります。熱の逃げる速度を Q 、伝熱係数を h 、電気ポットの(中の水の)温度を T 、室温を Tr とすると
となります。
もちろん、この式だけでは取扱説明書のデータとの比較はできません。電気ポットの温度との関係を明らかにするためには熱の逃げる速度をもう一つ別の視点で定式化する必要があります。
それが以下の式
ここで C は電気ポットと水の(見かけの)熱容量、小文字の t は時間です。左辺は電気ポットの温度変化に熱容量をかけて電気ポットのもつ熱量の変化量を表しています。これが前述の Q に対応している、というのが右辺。Q は熱が「逃げる」速度と考えているのでマイナスがついています。
両者を合わせて以下の微分方程式が得られます。
電気ポットの中の水が沸騰しているとき、つまり T が 100 ℃(これを T0 としましょう)の時を時間 t が 0 としてこの微分方程式を解くと
となります。
さて、以上が以前の記事で
「お湯の温度ー室温」と「経過時間」の間には指数関数の関係があると期待できます。
と書いたことの詳細でした。実は、先の記事ではもう一つ省略した点があるのですが、それについての説明は次回にさせていただきましょう。
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