至高の保温材は「真空」だが、というお話し(江頭教授)
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前回の記事、切っ掛けはこちらの記事で、不調になった電気ポットを新しいものに買い換えた話だったのですが、流れ流れて電気ポットの材料についての話になり、保温材についての説明をさせてもらいました。
曰く
究極の保温材は空気だ
という結論に。
で、究極がでたからには至高も必要だろう、ということで(なんで?)今回は至高の保温材である「真空」のお話しをしましょう。
至高の保温材、つまり熱の流れを断ち切って、熱を逃がさない様にする容器について、実はこのブログで以前に触れたことがあります。「魔法瓶ってどうよ」という記事では
一定距離の壁の間が真空になっている場合、熱を伝えるものがないため伝熱が進まない
という仕組みで保温あるいは保冷を行う容器として、家庭用のいわゆる「魔法瓶」と研究室などで利用されるデュワー瓶について紹介しました。
「真空」なら何もない、何もないなら熱を伝える物もない、だから断熱できる、と理屈は明解。でも実は「完全な真空」を作ることは難しい、というか不可能です。そしてこちらの記事で紹介したように大気圧の付近では「圧力が変わっても伝熱はほとんど変化しな」いのです。
例えば真空を取り囲んでいる壁(魔法瓶やデュワー瓶なら二重ガラスの容器の壁)の間隔が 1 cm だとすると、大気圧の10万分の1くらいまで減圧しないと「真空による断熱」の効果は現れないのです。これだけの真空度を維持するのはかなり大変で、メインテナンスフリーで長期間利用すると考えるとガラス製の容器でないと難しいでしょう。
これは予め形状をきっちりと定めた特性のガラスの容器を準備することが必要だ、ということを意味します。「保温材」という名称が示すように材料として利用する、つまり「断熱効果を持たせたい部分にその材料を置く」といった使い方をするのはおそらく不可能。
ぎりぎり「空気を含んで熱が伝わりにくい材料」とのアナロジーから「内部が真空になった柔軟なチューブの集合体」とか「内部が真空のビーズの集合体」といった形状の材料を想像することはできますが、難易度はかなり高いでしょうね。(なにしろチューブやビーズの中の真空度が低いとすぐ伝熱が始まってしまいますし、その真空度をモニタリングする手段はほぼなさそう。)
ということで、保温材について「究極」対「至高」の争いは「究極」に軍配が上がることになりそうです。
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