究極の保温材とはどんな材料か(江頭教授)
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電気ポットは何からできているのでしょうか?これは前回からの続き、というかその前回がそれ以前からの続きなのですが、とにかく今回のお話しは「金属」「プラスチック」以外の電気ポットの材料として予想される物として挙げた「保温材」についてです。
まず「金属」「プラスチック」「保温材」というのでは並びがおかしいですよね。プラスチックは電気ポットの「外装」に使われているのは見た目で明かです。そして「ヒータ-」には金属が。電気ポットの筐体は金属でしょうか、それともプラスチックでしょうか。おそらく「筐体」「ヒーター」「外装」とさらに「保温材」辺りがポットのメインの構成材料でしょう。
では「保温材」とはどんなものでしょうか。以下のグラフは丸善の「化学工学便覧(第6版)」からの引用です。全部で13種の保温材がリストアップされていて、その熱伝導度の温度依存性がグラフとして示されています。
図をみて分かるのは保温材の熱伝導度が強い温度依存性を示すこと、そしてその値が室温付近で0.1 Wm-1K-1 以下だと言うことです。
以前、こちらの記事で示したように「熱伝導度」というのは熱の伝わり易さを示す材料に固有の値(物性値)ですが、その値は物質によって大きく変化します。なかでも金属は熱を伝えやすく、銅やアルミニウムの熱伝導度は先ほどと同じ[Wm-1K-1]という単位で数百という値になります。つまり保温材の千倍以上(いや、保温材が金属の千分の一以下というべきか)です。本材は金属にくらべて非常に熱を伝えにくい材料だということですね。そして続編に当たる記事で示したように
すべてを一つの要因で説明できるほど簡単ではありませんが、(中略)気体は熱を伝えにくく、固体は伝えやすい
ことが分かっています。
熱を伝えにくいという条件なら気体が良い。でも気体では材料になりませんから「気体を多く含んだ固体」が保温材として用いられます。上の図に挙げられている保温材はたとえば「グラスウール」「ロックウール」「石綿」のような「空気を多く含んだ繊維」や「多泡ガラス」「ポリスチレンフォーム」「硬質ウレタンフォーム」のような「気泡を多く含んだ固体」などです。
空気など気体以外の部分「グラスウール」のガラスの部分や「○○フォーム」のポリマーの部分は空気の部分より熱が伝わり易いのですから「保温」という目的からすれば足を引っ張る方です。ですから「究極の保温材」とは「空気」だ、ということになりますね。
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