電気ポットとプラスチックの比熱について(江頭教授)
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またまた電気ポットのお話を。新しく研究室のために購入した電気ポット、取扱説明書に加熱に必要な時間、冷えてゆく時間のデータがあったので、それを利用して電気ポットの熱的な特性を定量化した、というお話しの続きです。
いろいろな解析によって電気ポット本体(水を除いた部分)の見かけの比熱について「2.17 J/(℃g) 」で「水の約半分」という結論を得たので、この電気ポットの材料が何かを予想してみよう、というのが前回の記事。こちらの記事で紹介した化学資料館で少し調べたところ、有力候補であった金属(アルミニウム、銅、鉄)の比熱(重量当り)は非常に小さく、とても「水の約半分」には及ばない、という結論でした。さて、今回は次なる有力候補であるプラスチックについて検討しましょう。
前回同様化学資料館で「化学便覧 基礎編 改訂6版」を検索すると「表10.3-12 有機高分子物質の定圧比熱容量」に各種プラスチックの熱容量が記載されています。この表での熱容量の単位は「J K-1 g-1」でモル当りではありません。まあ、相手が高分子なので当たり前ですが。
このデータによれば、多くのプラスチックの比熱はアルミニウムの値(0.90 J/(℃ g))より大きいか同じ程度。鉄や銅よりも大きな値となっています。とはいえ、水の比熱(4.179 J/(℃ g))はかなり大きい。その約半分である2 J/(℃ g) を超えるものだけをピックアップするとデータの数はぐっと減って以下の4種のみとなりました。
なるほど!ということはこの電気ポットは総プラスチック製なんだね!
いやいや、さすがにそんな事はないでしょう。電気ポットを加熱するためには当然ヒーターが入っているはず。その部分をプラスチックで作るというのはいくら何でも無理があります。
電気ポットがプラスチックと金属と(あとは断熱材くらい)でできていて、その平均の比熱が「水の約半分」なら辻褄が合うと考えられます。でも、金属の比熱が「水の約半分」よりかなり小さいとなると、のこりのプラスチックの比熱はその分大きくなくてはならないはず。にもかかわらず比熱の大きいプラスチックでさえ、せいぜい「水の約半分」程度というのではお話になりませんよね。
さて、これは一体どう理解したら良いのでしょうか?
上でチラリと書きましたがポットの中に断熱材(あるいは保温材)が入っている、というのはありそうな話です。もしかしたらこの保温材の比熱が凄く大きいのかも知れません。次回はこの可能性について検討してみましょう。
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