« 2025年4月 | トップページ | 2025年6月 »

2025年5月

2025.05.30

「実践工学プロジェクト演習」のこと(江頭教授)

|

 前回の記事では卒論研究での研究室選び、テーマ選びに際しては「情報不足で解像度の低い状態で重要な決断をする」という問題があること。これは就職に際しての企業選びと相似形の問題である、という話をしました。

 さて、本学応用化学科では、というか本学工学部では長期・有給の企業における就業体験「コーオプ実習」を中心とした「コーオプ教育」を通じて「就職に際しての企業選び」に際しての「情報不足で解像度の低い状態で重要な決断をする」という問題に対応しています。

 だとすれば、卒論研究での研究室選びに対しても「コーオプ教育」に類似した方法で「情報不足での決断」という問題に対応できるのではないでしょうか。

 「コーオプ教育」は本学のWEBサイトでは「大学と企業が連携し、学生の実践力を養成する教育プログラム」であり、

学生は、一定期間企業で働くことで就業体験と労働賃金、大学の単位を修得するとともに、実践力や総合的な社会人基礎力を身につけることができます。

と紹介されています。つまり、1)企業でのリアルな就業体験、2)大学と企業が連携(Co-operation)した正規の課程(なので単位が取得できる)、そして3)有給という特徴があるのです。

 これを研究室選びに対応させると、1)研究室におけるリアルな研究体験、2)正規の課程として単位が取得でき、そして3)有給……ではないですが、そんな研究室実習とでも呼ぶべき教育プログラムが想定できるでしょう。

 表題の「実践工学プロジェクト演習」はそんな発想から生まれた本学応用化学科の(と、いうか工学部の)新しい形態の授業です。

Photo_20250529231101

続きを読む "「実践工学プロジェクト演習」のこと(江頭教授)"続きを読む

2025.05.29

「大学のメインディッシュは研究ですよ」という話(江頭教授)

|

 小学校、中学校そして高等学校と大学とはどこが違うのでしょうか。大学に入学したばかりの新1年生からみると大学1年生は高校4年生の様に思えるかもしれません。これは偶然ではなく、高校から大学への移行をスムーズにするために我々教員も意図的にそう感じられる様にしているのです。とはいえ、始めは我々がいろいろなことを教え導く対象としての「生徒」だった新入生諸君も、「卒業研究」を経験することを通じて大学を卒業するときには我々の若い研究者仲間である「学生」に成長しています。

 やはり「研究」は私達大学教員にとっては特別なものです。その理由もいろいろ。仮説を実証するデータが次第に集まってくる興奮。データから新たな見方に視野が広がっていく感覚。複雑な問題の解を導いたり、困難な作業をやり遂げたときの充実感。同じ分野の研究者同士での研ぎ澄まされた議論。逆に異なる分野の専門家との会話から受けるインスピレーションなどなど。

 正直はところ大学における授業は、いえいえ、高校やそれ以前の学校における授業さえも、この研究活動のための準備であると思ってしまいます。実のところ「大学のメインディッシュは研究」なのだ、そんな風に大学教員は考えているのです。

 さて、大学教員の考えはこうなのですが、学生の側からはどのようにみえているのでしょうか。

Food_sanzokuyaki_age

続きを読む "「大学のメインディッシュは研究ですよ」という話(江頭教授)"続きを読む

2025.05.28

おもちゃとしてのライターボンベ(江頭教授)

|

 100円ライターが普及したためでしょうか、最近はライターは使い捨ての安価なもの、という感覚の方が一般的かも知れません。しかし、昔はライターといえども高価なものでしたから使い捨てなどもってのほか。燃料を補給して長く使い続けるのが一般的でした。

 では、どうやってライターに燃料を補給するのか。ライターの燃料は室温で気化する必要がありますから、ある程度高い蒸気圧(低い沸点)の物質でなければなりません。とはいえ常温で完全に気体となるようでは小さなライターの本体に充分な量を蓄えることができません。圧力を高くすると漏出の恐れもありますからね。ですから、ライターの燃料には適度な圧力で液化するガスが用いられます。これは瓶に入れて保存することは難しいので小型のボンベ、というかスプレー缶のようなものに入れて燃料を販売していました。ライターに逆流防止弁のついた小さな燃料注入口をつけて、そこにスプレー缶の口を押しつけて燃料を注入していたのでした。

 これがライターボンベ。要するに、可燃性ガスが加圧、加圧されて封入されたスプレー缶です。

 えっ、これがなんで「おもちゃ」なのかって?

 それを今から説明しましょう。子ども(というか、子供のころの自分)というものは恐ろしいものでこんなものでもおもちゃにしてしまう、というのが今回のお話です。

Lighter_tsukaisute_20250528092801

続きを読む "おもちゃとしてのライターボンベ(江頭教授)"続きを読む

2025.05.27

「地域連携課題」の発表会が行われました(江頭教授)

|

 今週の月曜日(2025年5月27日)2025年度、第一期の「地域連携課題」の学科内発表会が行われました。

 「地域連携課題」という言葉、聞いたことがない、という方も多いと思いますが、本学の授業の名称です。本学科では3年生前期の授業。つまりクォーター制(前期を1期、2期の2つに分ける制度)で実施されるコーオプ実習の際、大学に残っている学生に向けて行われている授業です。シラバスには授業の内容は、「学生が地域の関係者と連携しながら地域・社会的な課題等に取り組む」ものとあります。

 本学部は八王子キャンパスにありますから、この場合の「地域」は具体的には八王子市のことです。八王子市の地域が抱える各種の課題を学んだ後に、「学生が自ら主体的に地域から課題を選定」し、その解決方法を提案する、それが地域連携課題の授業内容です。この授業はグループワークを基本とし、いろいろな施設や企業を訪れて課題の解決方法を調査・分析、結果を比較検討することで効果的で具体的な提案を目指します。

Photo_20250526220701

続きを読む "「地域連携課題」の発表会が行われました(江頭教授)"続きを読む

2025.05.26

「お七夜」と「初七日」(江頭教授)

|

 これは私が子供のころに聞いた落語のネタです。赤ん坊が生まれた、という友達(けっこうぼけた性格です)のところにたずねて行った男とその友達との会話

おい、おまえのところ赤ん坊が生まれたんだって。いつ生まれたんだい?

うん、今日が初七日だ。

えっ、そうなのか。それは可哀想なことだったなあ。

「初七日」というのは人が亡くなってから7日目、という意味なのでこの男は赤ん坊が死産だった(あるいは生まれてまもなく死んだ)と思うわけです。ところが、この「初七日」というのは友達の勘違い。本当は「お七夜」だった、というオチ。「お七夜」は赤ん坊が生まれてから7日目の夜に子供の無事を祝い健康を願う儀式ですから、この友達の赤ん坊は無事なのですね。

 このお話、授業の中で「産業革命前の世界では赤ん坊が生まれてすぐに亡くなることが多くあった」という説明をしていたときに突然思い出しました。授業の中で紹介しようとも考えたのですが、いろいろな前提条件のあるネタで、今の学生さんには通用しないのではいかと思います。

 今の感覚なら、この友達が「初七日」と言った段階で

それを言うなら「お七夜」だろう

とツッコミを入れるのが自然ではないでしょうか。

Baby_umaretate

続きを読む "「お七夜」と「初七日」(江頭教授)"続きを読む

2025.05.23

「預金の利息が凄く増えた」とは言うものの(江頭教授)

|

 この記事を読んでいるあなたがもし高校生なら「学会」というものに興味があるかも知れませんね。「学会」には二つの意味があって、一つはいろいろなところから研究者が集まって成果を発表する「学会」。言うなれば「学術研究発表会」の略称でしょう。

 そしてもう一つの意味は研究者が集まった組織としての「学会」です。これは「○○学者同好会」ぐらいの意味でしょうか。同好会と言いましたが、「日本化学会」や「化学工学会」などはそれなりの規模のある「会」で法人格をもった組織です。他にももっと小規模な「学会」もたくさん有って、それぞれの分野でいろいろな活動をしています。その中には先の「学術研究発表会」としての「学会」の開催もあるのです。

 えっ、「学会」と表題の「預金の利息が凄く増えた」がどう関係しているかって?そうそう、その話ですね。

 実は先日、そんな「学会」(法人の方の意味です)の総会に出席したのですが、この「預金の利息が凄く増えた」というのはその総会の中の会計報告で出てきたセリフなのです。「数倍どころか100倍近く増えていまして……」えっ、そんなに儲かっているの?

 さて、これは当然と言えば当然の話です。日本の金利はいままでほとんど0に近い値(「金利の単位は%ではなくてppmだ」というくらい」だったのですが以下の図(日本銀行の「時系列統計データ検索サイト」より)の様に昨年(正確には一昨年)から徐々に上がってきているのです。

Photo_20250523091401

続きを読む "「預金の利息が凄く増えた」とは言うものの(江頭教授)"続きを読む

2025.05.22

江戸時代の食料自給率は100%ですが……番外編(江頭教授)

|

 今まで三回にわたって(第1回第2回第3回)江戸時代の農業と今の日本の農業との比較を示してきたのですが、今何かと話題の米(というか稲作ですね)について少し触れましょう。

 以下は e-Stat(政府統計の総合窓口)にある稲の作付面積についてのデータです。サイトの機能を使ってグラフ化したのですが、横軸が見えなくなってしまいました。データの始まりは何と明治12年。終わりは平成26年となっていてかなり長期のデータです。

 グラフの特徴を挙げると

1) まず前半は右肩上がりだが真ん中辺りで伸び悩み、急落して底を打つ

2)その直後から反発し伸び悩み以前の水準を超えてピークに

3) しかし後半では再度の急落を示した後、数回の反動はあるものの全体として急激な右肩下がりの傾向

といったところでしょうか。

 1)の「真ん中当たりの急落」は先の大戦の影響でしょう。一番減少しているのは終戦の翌年の昭和21年です。

 作付面積の減少が戦争によるものだ、というのですから終戦ととも反発するのは道理ですよね。上記 2)に示したように最高値を330万haを達成。これが昭和35年のことだそうです。前回の日本の農作物全体の作付面積のデータ(昭和35年で813万ha)と照らし合わせると約4割が稲作用だったことがわかります。「田んぼ」と「畑」を比べると「畑」の方が多いのですね。

 

Photo_20250521172501

続きを読む "江戸時代の食料自給率は100%ですが……番外編(江頭教授)"続きを読む

2025.05.21

江戸時代の食料自給率は100%ですが……その3(江頭教授)

|

 江戸時代と現代の日本の農業を比較する記事、今回はその3回目です。今までの記事(1回目2回目)ではおおよそ、

江戸時代の食料自給率は確かに100%だったが、人口の増加を考えると現在の自給率の低い農業でも江戸時代より食料を多く生産できている。

しかも、農業に携わる人口は江戸時代より一桁小さいレベルでその生産を達成している。

ということを述べました。

 江戸時代の農業は自給率100%である上にサステイナブル(持続可能)だったと考えられます。でもだからと言って今の農業より優れているという訳ではないのですね。

 さて、今回は農業に利用される土地、つまり農地について見ていきましょう。データは前回と同様に「農業の動向に関する年次報告 平成5年度 農業白書」のものです。グラフは昭和35年から令和5年までと長期にわたっていますが、その間農地面積は減少を続けていて、607万haから430万haにまで下がっていることが分かります。現在、実際の作付面積は農地面積を1割程度下回っており、最新の令和4年のデータでは395万haと400万haを切る状態です。 

Photo_20250521092801

続きを読む "江戸時代の食料自給率は100%ですが……その3(江頭教授)"続きを読む

2025.05.20

江戸時代の食料自給率は100%ですが……その2(江頭教授)

|

 前回の記事では日本の食糧自給率に関して、

江戸時代の食料自給率は確かに100%だったが、その当時の人口は3千万程度

しかし、現在の人口は約1億2千万人で当時の四倍。値が小さく出るカロリーベースの食糧自給率でも38%あることを考えると江戸時代より食料を多く生産できている

という話を書きました。

 今回は農業従事者の人口について考えてみましょう。

 まず、現在の状況は以下の表の通り(出典は「農業の動向に関する年次報告 平成5年度 農業白書」)です。令和5年で約116万人。日本の就業者人口が約7千万人近くであることを考えると1~2%程度という低い割合なのです。

Photo_20250520064601

続きを読む "江戸時代の食料自給率は100%ですが……その2(江頭教授)"続きを読む

2025.05.19

江戸時代の食料自給率は100%ですが……(江頭教授)

|

 「日本の食糧自給率が低い」という話、昔は時々話題なっていた様に思うのですが、最近はあまり聞かないような気がします。米の値段が高い、という話題がでても「米がなければパスタを食べれば良いじゃない」くらいの、どことなく気の抜けた反応しかない様な。私の観測範囲の問題かもしれませんが「汝臣民飢えて死ね」といった迫力は感じられませんね。

 さて、話は戻って食糧自給率について。戦後、食糧自給率はどんどん下がり続けて今(令和5年度のデータですが)ではカロリーベースで38%、金額ベースで61%となっています。カロリーベースと金額ベースで数値が大きく異なっているのは輸入食料の多くが高カロリーで低価格な食物、つまり穀物などに偏っているからでしょう。新鮮な野菜など、カロリーが低くて高く売れるものはやはり国内で生産される傾向があるわけですね。

 こんなデータを見ると「日本は大丈夫なのか」と思う人も居るかも知れません。一体なんでこんな状況に。昔は、そう、例えば江戸時代なら食料自給率は100%だったのですが……。

Photo_20250519075701

続きを読む "江戸時代の食料自給率は100%ですが……(江頭教授)"続きを読む

2025.05.16

年に一度のワックスがけ(江頭教授)

|

 小学校や中学校くらいの生徒さんたちは自分の教室の掃除をしているのではないでしょうか。高校生の皆さんもやっているのでしょうか。自分がどうだったのか、あまりにも古いことで思い出せません。とはいえ、一般的なビルのオフィスで社員がみんなで掃除、さあ机を動かしましょう、という姿は想像しがたいと思います。そういう場所では清掃は専門の業者に依頼しているのではないでしょうか。


 本学、東京工科大学もそれは同じです。床、廊下の掃除からゴミの回収、庭の手入れまで、専門の方々が担当してくれいていて、学内は清潔に保たれています。


 とはいえ、例外もあります。(いや「清潔」の例外じゃありません、業者の方が担当するかどうかの例外です。)研究室の中は一般の清掃業者の方には依頼できない場所です。何しろ、研究室の中には危険な薬品や高価な測定装置がゴロゴロしていて、その部屋を使っていない人にはどこをどう掃除して良いのか分からないのが普通でしょう。


 と、いうわけで研究室の掃除は研究室を使う人間、つまり我々教員と学生諸君、ということになるのです。では、どのくらい清潔度が保たれるのか。これは研究室によってレベルはバラバラだと思います。まあ、使用する装置や実験の形態など、もともと研究室の環境はバラバラですからね(ということにしておきましょう。)


 とはいえ、例外もあります。こんどは「研究室の掃除は業者の方が担当しない」ということの例外。それが年に一度のワックスがけです。


Virus_corona

続きを読む "年に一度のワックスがけ(江頭教授)"続きを読む

2025.05.15

東京工科大学の「新⼊⽣のコミュニケーションツール利⽤実態調査」(江頭教授)

|

 皆さんは本学、東京工科大学の新入生を対象とした調査「コミュニケーションツール利⽤実態調査」をご存じでしょうか。この調査は2014年から毎年行われており、今回で12回目となると言いますから、我々の応用化学科の設立の直前から始まっていたことになります。

 その最新版、2025年度版が公開したとのこと。さっそくチェックしましょう。新入生諸君はどんなコミュニケーションツールを使っているのでしょうか。

 LINEは高いなー。二番手はInstagramとX(旧Twitter)。昔はTwitterが有力でしたが、ここ最近はInstagramが追い上げていて、今年度ついに二位の座を占めたとか。

 以下はTikTokとかDiscordとか。あれ、BeReal.って何だろう?女子学生に人気なようですが……。

 あと「ソーシャルネットワーク」の代名詞のようだったFacebookは今やレアなものになっているようですね。

Photo_20250514161901

なお、本学のプレスリリースのページには他にもいろいろ興味深いデータが載っています。

続きを読む "東京工科大学の「新⼊⽣のコミュニケーションツール利⽤実態調査」(江頭教授)"続きを読む

2025.05.14

なぜ雷が「稲妻」なのか?(江頭教授)

|

 今回のお題は表題とおり、なぜ雷が「稲妻」と呼ばれるのか、についてです。なんで雷が「稲の奥さん」なのでしょうか?

 理由は「雷があると稲の実りが良くなるから。」です。「奥さんと実りに何の関係が...」というと難しい話になりそうですが、「雷と実りの関係」に注目すると少し化学の世界に近づいてきます。

 雷は大気中での大規模な放電現象であり、そのさい普通には起こらない化学反応も起こります。おそらく窒素分子の分解も起こる。通常の環境ではほぼ起こることのない窒素分子の活性化によって窒素酸化物などが生じ、それが窒素肥料の役割を果たすことで植物の(ここでは稲の)成長が良くなる、という訳です。

 窒素原子は大気の8割を占める窒素ガスの形で自然界に大量に存在しています。同時に生物の体を構成するタンパク質の基本要素、アミノ酸に必ず含まれている元素でもありますが、窒素ガスの分子はきわめて安定で植物はそれを直接吸収することはできません。(動物もですが。)窒素分子を分解してアンモニアや硝酸イオン、亜硝酸イオンなど、植物が利用できる形態に変化させる機能は自然界ではマメ科の植物の根に共生している根瘤バクテリアと呼ばれる細菌の作用が知られている程度です。雷の放電、つまり稲妻はもう一つの自然産の窒素肥料なのです。

 ハーバーボッシュ法による窒素固定技術が開発される以前、水田は窒素肥料不足の状態にあったはずですから、雷によって生じた窒素酸化物、窒素肥料を含んだ雨の降った場所は他より目に見えて稲の育ちが良かったのでしょう。

Thunder

続きを読む "なぜ雷が「稲妻」なのか?(江頭教授)"続きを読む

2025.05.13

世界の飢餓情報をまとめた「Hunger Map」(江頭教授)

|

 前回の記事では国連の機関であるFAO(Food and Agriculture Organization)の報告書「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)2024年報告」から、世界の飢餓に苦しんでいる人々の割合が2015年ころから下げ止まり、2020年にはついに上昇に転じてしまった、という話を紹介しました。2020年の上昇はコロナ禍によるものだとも考えられますが、それ以降高止まりしデータのある2023年まで下がる気配がない。このデータは世界の発展の行き詰まりを示すものの様にみえます。

 さて、今回は同じくFAOが公開している「Hunger Map」つまり「飢餓マップ」を見てみましょう。世界のどの国で飢餓が起こっているかを示すものです。

 まず世界全体の様子を大まかに示したものが以下の図です。(オプションで「View by Regions」を選択しています)北米とヨーロッパ(含ロシア)以外は飢餓の問題を抱えている。特にアフリカは深刻だ。

 このデータには意外性はないと思います。皆さんもそんな印象を持っていたのではないでしょうか。とはいえこれではあまりにも大雑把に過ぎるでしょう。

Photo_20250513093201
 ということで、もうすこし細かく表示したものがこちら。(オプションは「View by Subregions」を選択。)

 オーストラリアが白(飢餓人口2.5%以下)になっている点は納得です。中国も白になりましたがインドは一段濃い色(飢餓人口5-9.9%)になっていて、なるほどなあ、と思います。

Photo_20250513094001

 

続きを読む "世界の飢餓情報をまとめた「Hunger Map」(江頭教授)"続きを読む

2025.05.12

高止まりしている世界の栄養不足人口(江頭教授)

|

 「世界は良くなっている」というのは私達の世代、おっとこれは主語が大きすぎですね、私の年来の信念です。いや、信念と言うほどでもなく、常識くらいの意識。つまり信じる信じない以前の当たり前のことだと思っていました。自分が子供の頃(50年位前)と今を比べて、どう考えても今の方が「良い」世界になっている。そんな日々の生活の中で感じる感覚的なものだけでなく、いろいろなデータがそれを示していました。なかでも世界で飢えている人が確実に減っているというデータは「世界は良くなっている」ということを明白に示していたと思います。

 ところが!最近の、というかコロナ禍後の世の中は一体どうなってしまったのでしょうか。コロナ禍自体は仕方のないことでしょが、それに続くロシアウクライナ戦争に中東の問題など世の中を揺るがすような出来事が次々と起こっています。それを受けて「世界で飢えている人」の人口はいったいどのように変化したのでしょうか。

 今回はその世界の栄養不足人口についてデータをまとめたグラフを見てみましょ。出典はFAO(国連の食糧農業機関のこと)の「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)2024年報告」です。

Photo_20250512070301

続きを読む "高止まりしている世界の栄養不足人口(江頭教授)"続きを読む

2025.05.09

「省エネ」と「再エネ」どっちが大切?(江頭教授)

|

 これは典型的な

 「あ! どっちもデス」

案件なわけですが、わざわざこんなタイトルで記事を書こうと思ったのは学生さんのレポート課題を読んでいて最近の学生さんは「再エネ」を重視している割に「省エネ」に関心が薄いのではないか、という印象を受けたからです。

 将来の日本のエネルギー自給率についての課題だったのですが、「石油燃料に変わる再生エネルギーを用いれば良い」と解答してくれた人が多かったのに対して「省エネルギー化を進める」あるいは「再生可能エネルギーの導入拡大と同時に徹底的な省エネを」などと解答した人は少なかった。はて、これはどうしたことでしょう。私が学生のころは省エネは世間的にも注目のキーワードだったと思うのですが...。

21131_20250509085501

 

続きを読む "「省エネ」と「再エネ」どっちが大切?(江頭教授)"続きを読む

2025.05.08

今日は連休明け。ええ、昨日じゃなくて今日です(江頭教授)

|

 今日は2025年5月8日。我々応用化学科がある東京工科大学八王子キャンパスは今日から活動再開。連休明けとなります。えっ、連休明けは昨日じゃないかって?確かに世間的には昨日の2025年5月7日が連休明けですが以前の記事でも説明したように本学のゴールデンウィークはちょうど1週間になるように調整されており、一日延ばして昨日までがお休みだったのです。ということで本日は1週間ぶりの授業再開となります。

 授業が始まってから少し間を置いての連休。これはなかなか良い制度ではないかと思います。4月にスタートした新生活。最初は無理をしつつ適応できても次第に疲れが溜まってくることもあるでしょう。五月病という言葉もありますよね。そこで一旦休みをいれて体制を整える。そのために5月のゴールデンウィークはうってつけですよね。

 とまあ、これはゴールデンウィークの良い側面。でも良い事ばかりとは限りませんよね。

52_2_20250508063501

続きを読む "今日は連休明け。ええ、昨日じゃなくて今日です(江頭教授)"続きを読む

2025.05.07

「行」を「御中」に直すべきか否か(江頭教授)

|

 手紙を書くとき、宛名には普通「様」などの敬称を付けます。個人なら「様」とか「殿」ですが団体や組織なら「御中」ですね。これはいわゆる一般常識。

 普通の葉書はそれでOK。では往復葉書や返信用の封筒などを同封した場合など、自分の名前を宛名に書く場合はどうするべきでしょう。自分に「様」を平然と付けられる「俺様」なひとは別として、まあ尊敬の意味の無い「行」などと書く事になります。

 さらに、その「往復葉書」や「返信用封筒」を受け取った側の人はどうするか。送り返す時には、宛名は自分ではなくて送ってきた人になりますから、こちらからは尊敬の意を表したいところです。そこで宛名についている「行」を訂正線で消して「様」に直すわけですね。

 さて、ここからが今回のお題。相手が組織の場合でも返信の際に「行」を「御中」に直すべきか否か。どうしましょう。 

Hagaki_2mai

続きを読む "「行」を「御中」に直すべきか否か(江頭教授)"続きを読む

2025.05.06

日本のエネルギー消費が減少するとき(江頭教授)

|

 前回前々回の記事ではエネルギー白書のデータを元に増え続ける世界のエネルギー消費にも突発的に減少する年があることを指摘しました。2020年と2009年。それぞれコロナ禍とリーマンショックによる影響です。

 さて、今回はそのコロナ禍とリーマンショックの影響が日本のエネルギー消費にはどのように影響したのかを見てみましょう。元ネタは同じくエネルギー白書2024」です。

 日本のエネルギー動向は第2部 第1章にまとめられていて、最初に以下の様な図(【第211-1-1】最終エネルギー消費と実質GDPの推移)がでてきます。さて、日本のエネルギ-消費が減少しているのは……ここのところほぼ毎年じゃないか!

 そうなんです。日本のエネルギー消費は2000年ごろまでは増加傾向だったのですがその後は安定化し2008年ごろからは減少に転じているのです。増加を続けている世界のエネルギー消費とは全く逆。「日本の常識は世界の非常識」なのですね。

 さて、本題に返ってコロナ禍とリーマンショック時のエネルギー消費どうなっているのでしょうか。

Photo_20250506063001

続きを読む "日本のエネルギー消費が減少するとき(江頭教授)"続きを読む

2025.05.05

続 世界のエネルギー消費が減少するとき(江頭教授)

|

 前回の記事ではエネルギー白書から「世界のエネルギー消費の推移」のデータを参照して「世界のエネルギー消費は年々増加する傾向にある」が「2020年には一時的に減少し」ていて、「その程度は4%強と見積もられる」と指摘しました。授業の中で学生さんにこの原因ついて聞いてみると「コロナ禍」という答えが普通にでてきます。まだそんなに経っていないので、皆さん記憶が新しいですからね。

 さて、以下に再掲した図を見てもらうと2020年の様に世界のエネルギー消費が突然減少する事象は実は以前にも起こっていることが分かります。2009年がそれ。前回同様、このグラフの元データに当たってみましょう。世界のエネルギー消費は「100万石油換算トン」を単位として

2008年 11,783

2009年 11,593

2010年 12,152

でした。2008年と2010年の平均から2009年の「有るべき消費エネルギー」を計算すると11,967。実際の値はこれより374小さく、約3%の減少でした。

 さて、これは一体何が原因なのでしょうか?

Photo_20250502063301

続きを読む "続 世界のエネルギー消費が減少するとき(江頭教授)"続きを読む

2025.05.02

世界のエネルギー消費が減少するとき(江頭教授)

|

今年もまたこの季節がやってきたなあ。

 私は2年生向けの「サステイナブル工学基礎」という授業を担当しているのですが、その中でちょうど今ぐらいの時期にエネルギー需給に関する話をするのです。授業に際しては、説明に利用する統計データなどを毎年更新しています。その際、資源エネルギー庁が出している「エネルギーに関する年次報告」通称「エネルギー白書」はとても便利。

 さて、そのデータの一つが下の図。「世界のエネルギー消費の推移(地域別、一次エネルギー消費)」です。

 ご覧の通り、グラフがスタートする1965年以来、世界のエネルギー消費はほぼコンスタントに増加を続けています。これは日本のエネルギー消費のグラフとは大きく異なっています。日本のエネルギー消費はすでに2007年頃にピークを越え、今は減少に転じています。

 とまあ、こんな話を授業で説明したのですが、ついでにこんな話も。

全体としては増加の傾向ですが、部分的にな例外もあります。例えば2020年は減少していますが、これは何が原因だか分かる人はいますか?

Photo_20250502063301

続きを読む "世界のエネルギー消費が減少するとき(江頭教授)"続きを読む

2025.05.01

オゾンの臭い(江頭教授)

|

「先生、オゾン発生装置を持っていませんか?」

と、学生さんに質問されました。聞けばオゾンについて何やら実験をしたいとか。うーん、残念だけど持っていないなあ。そもそもオゾンが発生していることをどうやって確認するつもりなんだろう。

「分かりますか?」

「……臭いだな」

てな感じだろうか。と、ここまできて気が付いたのですが今の学生さんは「オゾンの臭い」というのを知っているのでしょうか。そもそも「オゾンの臭い」をどう説明したら良いのだろう。

 さて、少し説明しておくとオゾンというのは酸素原子が三つ結合した酸素(正確には酸素分子)の同素体です。空気中の酸素から紫外線照射などによって生じます。有名な「オゾン層」では太陽から来る紫外線によって大気中にオゾンが生じているわけですね。

 ずいぶん昔、私が高校生だったころに学校にあった複写機からすごく嫌な臭いがしていたことがありました。これがオゾンの臭いだよ、と先生だったか先輩だったかに教えてもらったおかげで私は「オゾンの臭い」を知っています。複写機で使われている紫外線の影響で大気中の酸素からオゾンが生じていたのです。

 いちど気が付いてしまうと電車がブレーキを踏む際などに同じ様に「オゾンの臭い」がしていることが分かる様にまりました。なるほど電車のパンタグラフと高架線との間での放電によってオゾンが発生しているのだな、などと説明が付くようになりました。

 とはいえ、最近久しく「オゾンの臭い」を嗅いだことがないなあ。酸素の同素体といえどもオゾンは有毒な物質です。複写機や電車など、いろいろ工夫や改良が施されてオゾンが発生しないようになっているのでしょうか。

Ozone3dvdw

続きを読む "オゾンの臭い(江頭教授)"続きを読む

« 2025年4月 | トップページ | 2025年6月 »