「実践工学プロジェクト演習」のこと(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
前回の記事では卒論研究での研究室選び、テーマ選びに際しては「情報不足で解像度の低い状態で重要な決断をする」という問題があること。これは就職に際しての企業選びと相似形の問題である、という話をしました。
さて、本学応用化学科では、というか本学工学部では長期・有給の企業における就業体験「コーオプ実習」を中心とした「コーオプ教育」を通じて「就職に際しての企業選び」に際しての「情報不足で解像度の低い状態で重要な決断をする」という問題に対応しています。
だとすれば、卒論研究での研究室選びに対しても「コーオプ教育」に類似した方法で「情報不足での決断」という問題に対応できるのではないでしょうか。
「コーオプ教育」は本学のWEBサイトでは「大学と企業が連携し、学生の実践力を養成する教育プログラム」であり、
学生は、一定期間企業で働くことで就業体験と労働賃金、大学の単位を修得するとともに、実践力や総合的な社会人基礎力を身につけることができます。
と紹介されています。つまり、1)企業でのリアルな就業体験、2)大学と企業が連携(Co-operation)した正規の課程(なので単位が取得できる)、そして3)有給という特徴があるのです。
これを研究室選びに対応させると、1)研究室におけるリアルな研究体験、2)正規の課程として単位が取得でき、そして3)有給……ではないですが、そんな研究室実習とでも呼ぶべき教育プログラムが想定できるでしょう。
表題の「実践工学プロジェクト演習」はそんな発想から生まれた本学応用化学科の(と、いうか工学部の)新しい形態の授業です。
まず「実践工学プロジェクト演習」は一般の授業と違って教室が指定されていません。だからと言って学生実験室が指定されているわけでもありません。「実践工学プロジェクト演習」は研究をリアルに体験するのですから、教室ではなくて研究室で実施されるのです。体験する内容もまた、研究室によって様々。研究室の教授が直接指導するパターンもあれば既に研究室に所属している先輩が協力してくれるケースも。さらには学外に活動の場が広がることもあるでしょう。これらはどれも、研究室の所属しての卒業研究や大学院での研究で経験するバリエーションの一部です。
もちろん、研究室に居れば、あるいは研究室のメンバーと行動すれば研究室の一員になれるわけではありません。「実践工学プロジェクト演習」では各セメスター(前期あるいは後期)毎に、そして研究室毎に目的を明確にした一つのプロジェクトとして研究室での体験をまとめ、さらに単位認定の対象とすることにしました。卒業論文とは期間も頻度も異なっていますが、それでも個別の目的を持って活動するという研究活動の経験は「情報不足で解像度の低い状態」から一歩踏み出す契機となるでしょう。
さらに、この「実践工学プロジェクト演習」には複数回受講のチャンスがあることも特徴です。1年生の前期からはじめて複数の研究室を体験するのも良し、一つの研究室を極めるのもまた良し。実を言えば4年生になって卒業論文の研究室が決まった後で他の研究室をのぞきに行くことも可能で、その気になれば工学部の他の学科の研究室をみる機会にもなるのです。
この「実践工学プロジェクト演習」は、卒論研究に向けた研究室選びの「情報不足」という課題に対して、実際の研究活動を通じた体験機会を提供する重要な役割を果たします。企業選びの際の「コーオプ教育」と同様に、学生は単なる情報収集ではなく、実際の環境での実践を通じて研究室の雰囲気や研究内容を理解することができます。
このような教育プログラムは、学生が自らの適性や興味をより深く探ることを可能にし、より納得感のある研究室選びを支援します。短期間ではありますが、研究室のメンバーとともに活動し、研究の進め方を学ぶことによって、卒論研究開始時の不安を軽減できるでしょう。また、複数回受講のチャンスがあることで、異なる研究室の特色を比較し、より適した環境を見極める機会を得られるのも大きな利点です。
こうした取り組みは、単なる研究室選びの支援にとどまらず、研究に対する理解を深め、将来のキャリア選択にも寄与するものと考えます。大学生活の中で実際の研究に触れる機会を増やすことで、学生は研究者としての視点を養い、社会で求められる実践力を培うことができるのです。
この「実践工学プロジェクト演習」を活用し、学生が自身の研究活動に対してより主体的かつ積極的に取り組めるようになることを期待しています。多くの学生が自分にとって最適な研究環境を見つけ、充実した卒論研究へとつなげていくことができるでしょう。





