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続 世界のエネルギー消費が減少するとき(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回の記事ではエネルギー白書から「世界のエネルギー消費の推移」のデータを参照して「世界のエネルギー消費は年々増加する傾向にある」が「2020年には一時的に減少し」ていて、「その程度は4%強と見積もられる」と指摘しました。授業の中で学生さんにこの原因ついて聞いてみると「コロナ禍」という答えが普通にでてきます。まだそんなに経っていないので、皆さん記憶が新しいですからね。

 さて、以下に再掲した図を見てもらうと2020年の様に世界のエネルギー消費が突然減少する事象は実は以前にも起こっていることが分かります。2009年がそれ。前回同様、このグラフの元データに当たってみましょう。世界のエネルギー消費は「100万石油換算トン」を単位として

2008年 11,783

2009年 11,593

2010年 12,152

でした。2008年と2010年の平均から2009年の「有るべき消費エネルギー」を計算すると11,967。実際の値はこれより374小さく、約3%の減少でした。

 さて、これは一体何が原因なのでしょうか?

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 こちらの質問は今年2年生になったばかりの学生さん達には少し難しいようでした。生まれる前、というのは言い過ぎですが4-5歳の幼児だったころの出来事ですからそんなに記憶もないでしょう。かといって歴史で学ぶほど昔のことでもないですからね。

 もったいぶらずに言うと、これは「リーマンショック」の影響でしょう。リーマンショックとは2008年から始まった金融危機のことで、リーマン・ブラザーズというアメリカの銀行が破綻したことが切っ掛けとなったことからこのように呼ばれています。混乱はアメリカに留まらず、ヨーロッパを始め世界各国に影響を及ぼし世界的な金融危機へと発展しました。金融危機はやがて実体経済にも影響を与え、経済不況もまた世界的なものになりました。とうとう世界のエネルギー消費までがその影響を受けた、ということですね。

 実は2009年のエネルギー消費、地域別にデータ見ると「北米」「中南米」「欧州(旧ソ連を除く)」「ロシア」「その他旧ソ連邦諸国」では減少しているものの、「中東」「アフリカ」「アジア大洋州」のエネルギー消費は増加を続けていました。2020年のコロナ禍によるエネルギー消費の減少では上記全ての世界の地域でエネルギー消費が減少に転じていることと比較すると対照的ですね。

江頭 靖幸

 

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