日本のエネルギー消費が減少するとき(江頭教授)
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前回と前々回の記事ではエネルギー白書のデータを元に増え続ける世界のエネルギー消費にも突発的に減少する年があることを指摘しました。2020年と2009年。それぞれコロナ禍とリーマンショックによる影響です。
さて、今回はそのコロナ禍とリーマンショックの影響が日本のエネルギー消費にはどのように影響したのかを見てみましょう。元ネタは同じく「エネルギー白書2024」です。
日本のエネルギー動向は第2部 第1章にまとめられていて、最初に以下の様な図(【第211-1-1】最終エネルギー消費と実質GDPの推移)がでてきます。さて、日本のエネルギ-消費が減少しているのは……ここのところほぼ毎年じゃないか!
そうなんです。日本のエネルギー消費は2000年ごろまでは増加傾向だったのですがその後は安定化し2008年ごろからは減少に転じているのです。増加を続けている世界のエネルギー消費とは全く逆。「日本の常識は世界の非常識」なのですね。
さて、本題に返ってコロナ禍とリーマンショック時のエネルギー消費どうなっているのでしょうか。
まずコロナ禍の影響について。「新型コロナウイルスによる感染症」自体は2019年に現れたのですが、その影響が日本をはじめ世界に広がったのは2020年でした。その影響は日本のエネルギー消費にもはっきりと現れています。2020年はそれ以前よりも明かにエネルギー消費が大きく減少していますし、なにより翌2021年にはエネルギー消費の増加も見られます。全体として減少傾向だが2020年の減少が特別に大きかったから翌年には増加、となっているのですね。
では、2019年と2021年のエネルギー消費の平均値をコロナ禍の影響がなかった場合のエネルギー消費の概算とみなしてコロナ禍のショックの大きさを見積もってみましょう。元データから計算すると約4%の減少。これは奇しくも世界のエネルギー消費の減少率と同程度です。
次にリーマンショックの影響を見てみましょう。リーマンブラザーズの破綻は2008年ですが、その影響が世界のエネルギー消費の減少として現れたのは2009年からでした。その一方で日本の場合は2008年度からすでに大きな落ち込みが見えています。
気が付いたでしょうか。世界のはなしをしているときは○○年ですが、日本の場合は○○年度と言っていますよね。世界のエネルギー消費と日本のエネルギー消費とでは対象としている期間には4ヶ月のズレがあるのです。その影響を考えれば日本のデータの方が影響を受けているように見えることも理解できますね。
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