江戸時代の食料自給率は100%ですが……その3(江頭教授)
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江戸時代と現代の日本の農業を比較する記事、今回はその3回目です。今までの記事(1回目、2回目)ではおおよそ、
江戸時代の食料自給率は確かに100%だったが、人口の増加を考えると現在の自給率の低い農業でも江戸時代より食料を多く生産できている。
しかも、農業に携わる人口は江戸時代より一桁小さいレベルでその生産を達成している。
ということを述べました。
江戸時代の農業は自給率100%である上にサステイナブル(持続可能)だったと考えられます。でもだからと言って今の農業より優れているという訳ではないのですね。
さて、今回は農業に利用される土地、つまり農地について見ていきましょう。データは前回と同様に「農業の動向に関する年次報告 平成5年度 農業白書」のものです。グラフは昭和35年から令和5年までと長期にわたっていますが、その間農地面積は減少を続けていて、607万haから430万haにまで下がっていることが分かります。現在、実際の作付面積は農地面積を1割程度下回っており、最新の令和4年のデータでは395万haと400万haを切る状態です。
さて、江戸時代の農地はどの程度の面積だったのでしょうか。これについては同じ様な疑問を持った人が居たらしく、国立国会図書館による調査の結果がまとめられていました。
その結果によると江戸時代初期は200万町で末期には400万町に増加したということ。「町」は「町歩」のことで約1haと換算すると江戸時代末期には400万haだということです。
全体を通してみると江戸時代初期が200万ha、末期には400万ha、その後600万haを超えるも減少に転じ、いまは江戸時代末期の値に戻っているのです。
現在の農作物の生産量は江戸時代のそれを超えている、ということですから農業の生産性は農地面積当たりでも江戸時代を凌駕しているのですね。
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