江戸時代の食料自給率は100%ですが……(江頭教授)
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「日本の食糧自給率が低い」という話、昔は時々話題なっていた様に思うのですが、最近はあまり聞かないような気がします。米の値段が高い、という話題がでても「米がなければパスタを食べれば良いじゃない」くらいの、どことなく気の抜けた反応しかない様な。私の観測範囲の問題かもしれませんが「汝臣民飢えて死ね」といった迫力は感じられませんね。
さて、話は戻って食糧自給率について。戦後、食糧自給率はどんどん下がり続けて今(令和5年度のデータですが)ではカロリーベースで38%、金額ベースで61%となっています。カロリーベースと金額ベースで数値が大きく異なっているのは輸入食料の多くが高カロリーで低価格な食物、つまり穀物などに偏っているからでしょう。新鮮な野菜など、カロリーが低くて高く売れるものはやはり国内で生産される傾向があるわけですね。
こんなデータを見ると「日本は大丈夫なのか」と思う人も居るかも知れません。一体なんでこんな状況に。昔は、そう、例えば江戸時代なら食料自給率は100%だったのですが……。
いえいえ、ちょっと待ってください。江戸時代の食料自給率が100%だった、というのはその通り。当時の日本は鎖国していたので海外から入ってくる食品などありません。必然的に食糧自給率は100%になるはずです。
では当時の日本の人口はどれくらいだったのでしょうか。確か三千万人程度だったはず。当時(江戸時代)の日本の農業は三千万人分の食料を生産していたのですね。
一方で今の日本の人口は一億二千万人程度と約4倍に増えています。カロリーベースで考えたとすると約4割の人間の食料が時給できるのですから今の農業で生産している食料は四千八百万人分、だいたい五千万人分になります。
これは仲々立派な成績なのではないでしょうか?多くの人が農業の従事していた江戸時代と比較して、現在では農業に従事している人の割合あかなり低くなっています。それでも江戸時代以上の食料生産が可能になっているのですから農業技術の進歩には目を見張るものがあると言えるでしょう。もちろん、その進歩の中には空気から窒素肥料を無限に生産できる技術(ハーバーボッシュ法)など、応用化学の貢献も含まれています。