「100点以外は0点とおなじ」という厳しい基準(江頭教授)
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研究室での学生さんとの会話です
どう、巧くいってる?
いや、ダメですね。この電圧変換モジュールの5V側は正常に動いているのですが3.3V側の電圧がおかしくて……
えっと、これってどうつながっているの?ここがGNDで……
あっ、この部分の配線、抜けていました!
ということで配線を刺し直したらすぐに正常に動作。これはこれで良いのですが、この会話から「複数の要素が組み合わされた装置を動かす」というのは学生さんにとっては意外に大変に感じられるのかも知れない、と思い至りました。
「複数の要素が組み合わされた装置」というものはどこかに一つでも不具合があるとすぐに動かなくなります。(いえ、動かなくなること自体はありがたい。これがもし中途半端に動いておかしなデータを出したら、そしてそのデータを信じ込んでしまったら目も当てられないことになりますからね。)
当たり前といえば当たり前なのですが、大学以前の、というか大学でも3年生までの教育ではこのタイプの「もの」に出会う機会は意外と少ないのではないでしょうか。だって「一つでも不具合があるとすぐに動かなくなる」ということは、テストで例えれば「100点以外は0点とおなじ」という評価に等しいのです。
この世に100点以外とったことの無い人など居るでしょうか。いや、居ない(反語)
ものづくりでは60点で合格とか、80点で優だとか、そんな生ぬるいことは認められません。テストは、というかテストを出題する先生は学生さんたちの努力を優しく忖度してくれるのですが、実際の「もの」にはそんな優しさはありません。100点以外は全部ダメ、とまあ極端なのですね。なんて非人間的なんだ、と言ってもしょうがない。だって「もの」は人間じゃないのですから。
この状況、なんてご無体な、と思いますが「もの」づくりとテストとの違いにはこちらに有利な部分もあります。テストは基本一回勝負、そして毎回新しい問題が出されるのです。でも、ものづくりは何回くり返してもOK、というかくり返しなしで最初から完璧なものができるなど、だれも期待していませんよね。
それを考えるとものづくりをテストに例えるのは少しズレているのかもしれません。ものづくりは「100点を取れなかったテストを何度も復習して確実に100点が取れるようにすること」に近いのでしょう。「この世に100点以外取ったことのない人」は居ないと思いますが、テストをきちんと復習する人にはなれる気がしませんか。
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