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新しい技術が世間に受け入れられるまで(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 新しい技術が登場して世の中に受け入れられてゆく過程を考えると「これは凄い!」「こんなこともできる、あんなこともできる」と興奮する時期があり、その後興味が冷めてゆくもののいつの間にか世間に受け入れられている、という経過をたどるものです。何となくそんな事を考えていたのですが、それを良くモデル化したものを見つけました。技術に関する調査会社のガートナーが提案している「ハイプサイクル」というモデルです。

 このモデルはガートナー社のWEBサイトから引用した以下の図で表現されています。横軸は時間、そして縦軸はその技術に対する世間の「期待度」だと言います。

 新しく登場した技術が進歩するにしたがって世の中の期待度も高くなる。最初は常識通りの経過をたどるのですが(この期間を黎明期と名付けています)、やがて期待は技術の実力を上回ってバブル化し、そしてバブルがはじけるという経過をたどります。つまり「過度な期待」のピーク期を経て「幻滅期」に入るのですね。

 この「過度な期待」という感じ、インターネットが登場してきた初期の頃を覚えている身としてはかなりリアルに感じられます。新しい技術の概念を理解するといろいろなアイデアが頭に浮かびます。「こんなこともできる、あんなこともできる」という思いが溢れて興奮状態に。そんな個人が世の中で増えてゆくと、世の中全体が少しおかしな雰囲気になってしまいます。

 とはいえ、想像のエネルギーで膨らみきった期待に実際の技術がついて行くことができるはずもありません。過度な期待はやがて幻滅へと変わるのですね。

Gartnerhypecyclejp

 実は、このハイプサイクルモデルの重要な点はこの「幻滅期」の後にあると思います。一度は幻滅された技術にもやがて、その技術に対する理解を深めることによってメリットを受けるユーザーが現れてきます。そんなユーザーの経験が共有されるにしたがって技術への期待は再び盛り上がり始める。この期間は「啓発期」と名付けられています。

 先進的なユーザーによって確立されたその技術の巧い利用法が世間全体に広がると、その技術のポテンシャルに相応しい期待度がもたれる様になる。これが技術の最終段階である「生産性の安定期」。この段階でその技術が達成していることは必ずしも「過度な期待」のピーク期に予測されていたこととイコールではありません。場合によってはピーク期に予測されていた以上のことを達成している場合、あるいはその時期には全く予測もできなかった新たな価値が生まれていることもあるのです。それにもかかわらず「期待度」はそれほどでもない。新しさが薄れて当たり前になってしまうからですね。つまり技術が達成していることと「期待度」とは比例していないのです。

 このモデル、私としては非常に納得感がある、というか思い当たる節がある、と言いましょうか。さて、皆さんはこのモデルについてどのように感じられたでしょうか。いま皆さんが注目している技術はこのハイプサイクルのどの段階にあると思いますか。(もしかしたら「過度な期待」のピーク期なのでは……。)

江頭 靖幸

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