ワットは「ワット」じゃなくて「馬力」と呼んだのです(江頭教授)
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前回の記事で「人名にちなんだ単位の名称」の一例としてトリチェリの名前にちなんだTorrという圧力の単位について紹介しました。今回も人名のついた単位のお話し。仕事率の単位、W(ワット)についてです。
W(ワット)という単位は身近なものです。私の世代なら「○○ワットの電球」という言い方で電球の大きさを言い表していたものです。「○○ワット」という言い方は家電製品一般にも使いますから「電力をどれくらい使うのか」を表した数値だ、ということが分かります。もっとも、W(ワット)で表されるのは仕事率。単位時間当たりにどれぐらいの仕事をするのか、を示す量で別に電気限定というわけではありません。
「仕事」は専門用語として使われているので、敢えてエネルギーと言い換えた方が分かるかも。エネルギーの単位はJ(ジュール)なので「1s(秒)当たり1J(ジュール)」が「1W(ワット)」になるわけです。
さて、このW(ワット)の語源になったのはジェームズ・ワットという人物。18世紀生まれのイギリスの人物で蒸気機関の発明者、じゃなくて改良者(そんな言い方するのか?)です。この言い方では凄さが伝わらないのですが、彼は単なるエンジニアではなく、どちらかというとエンジニアという職業を作り出したとさえいえる人物です。蒸気機関とそれを利用した工業的な生産を世の中に広め、産業革命の切っ掛けをつくったのです。
この偉業をたたえて仕事率の単位がW(ワット)になったのですが、もちろんワット自身が「仕事率の単位は私の名前にちなんでWとする」などと言った訳ではありません。とはいえワットの業績、とうか彼の事業に仕事率の測定は不可欠。では彼自身は仕事率をどんな単位で表していたのでしょうか。
ジェームズ・ワットの肖像。Wikipediaより
ワット自身が使っていた仕事率の単位は「馬力(Horsepower)」でした。馬力は文字通り馬の力のこと。馬が時間当たりにどの程度の仕事ができるかをあらわしたものです。
ワットのビジネスモデルは蒸気機関を導入した工場から代金をもらう、というものでした。蒸気機関を導入することでいままで使っていた動力源、つまり馬を使う必要がなくなる。だから節約できた馬の頭数当たりにかかるコストから支払を求めるわけですね。ワット自身は「導入する蒸気機関が馬何頭分の仕事ができるかを示す数字」として馬力を考えたのでしょう。別に「仕事率の単位はどうしよう」などと考えて決めたのではなさそうです。
ちなみにワットが用いた「1馬力」は745.7Wでした。(なお、現在日本で用いられている定義では735.5Wとなっています。)この値、馬の本来の能力に比較して小さすぎるのではないか、という議論があります。先に述べたワットのビジネスモデルからすれば1馬力の値は小さければ小さいほど儲けが大きくなりますからそう疑われるのも致し方ないところですね。
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