化学実験とガラス器具(江頭教授)
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「化学」の実験というと一般の人はビーカーや試験管、フラスコなどのガラス器具を思い浮かべるのではないでしょうか。透明で中身を観察しやすく、耐熱性でほとんどの試薬(一部を除く)に対しても耐性があるガラス器具は化学の実験にはうってつけです。また、プラスチックが登場する以前の時代を想像すると自由に複雑な形状の器具を作ることができる、という点も魅力的だったのではないでしょうか。
例えば下の写真。加熱されたフラスコなどから昇ってくる蒸気を外側の冷却水で冷やし凝縮させてフラスコに戻すための装置です。よく用いられているリービッヒ冷却管では中の蒸気の通り道が直管ですが、このタイプ(グラハム冷却管)ではらせん形になっていてより冷えやすくなるように作られています。
性能は高そうですが複雑な形状です。こんな構造をガラス以外で作るとしたら……今なら3Dプリンターでプラスチックでつくるのでしょうか。いや、耐熱性に問題がありそう。それに使用する薬品によっては溶けてしまうかも。少し厳つくなりますが金属でつくることはできそうですが、中の様子を観察することはできません。
化学の黎明期の研究者たちは、きっとこのような器具をつくってくれる腕の良いガラス職人を懸命に探していたのでしょうね。
では、逆にガラス職人からみて化学者はどのように見えていたのでしょうか。
化学の黎明期、ガラス職人からすれば化学者はたくさんいるお客さんのごくごく一部だったはずです。ガラスの加工の主な目的は食器や装飾品などの制作で、化学実験器具の作成はついでの仕事、ちょっとしたサイドビジネスといったところだったのでしょう。奇天烈な形状のガラス製品を作ってくれ、と無理難題を言ってくる変わった人たち、と言ったところでしょうか。「○○先生たってのご依頼とあっては仕方ねえなあ」とか。ガラス加工業という業種がしっかりと成り立っていたからこそ、当時の化学者達は化学実験用の器具を入手できたのですね。
さて、時は流れて現在。化学実験器具に限らず多くのガラス製品の製造は機械化されています。それでも世の中からガラス職人がいなくなってしまった訳ではありません。いまでも芸術性の高いガラス製品が手作りされていますよね。





