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ブラウン運動と原子論(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 皆さんはブラウン運動についてご存じでしょうか?いつも通りWikipediaをみると

物理学におけるブラウン運動(ブラウンうんどう、(英: Brownian motion)は浮遊する微粒子が不規則に運動する現象である

とのこと。

 植物学者のブラウンという人が花粉、が破裂して出てきた微粒子を観察していてそれが運動していることを見つけたのだとか。花粉という生物由来の粒子なので、当然ながら生物特有の性質だと思われたのですが、実は無生物でも同様の現象が起こるのです。

 もったいぶらずにこの運動の正体について述べましょう。まず、微粒子には液体(気相に浮遊する微粒子の場合なら気体ですね)の分子が、それこそ四方八方から衝突しています。

 もし微粒子が「微」ではなくて大きな粒子であれば衝突による四方八方からの力はバランスして正味0となります。(マクロ的に見ればこれがパスカルの法則ですね。)ですから普通の粒子は止まったままで運動はしません。

 さて、粒子が小さく小さくなって「微」粒子となると衝突してくる分子の数も少なくなります。大きな粒子にはたくさんの分子が一斉にぶつかっていたのに対して、微粒子にぶつかる分子はまばらになる。ある一瞬に注目すると微粒子はその瞬間にぶつかってきた分子の反対方向にはじかれて、その方向に動くのです。また次の瞬間には別の方向から次の分子がぶつかってくるので微粒子はまた方向を変えて動く。これを連続して観察すると「微粒子が不規則に運動する」ように見えるのですね。

Fig1_20250831191001

 

 さて、以上がブラウン運動の説明なのですが、この議論の中で「大きな粒子」と「微粒子」が区別されている点に注意してください。両者の違いは周りの液体(または気体)の分子の衝突が「平均的な力と見なせるほど頻度が大きい」場合と「個別の力が区別できるほど頻度が小さい」場合との相違となっています。分子の衝突のことを「粒子が周囲の液体(気体)からうける圧力」だと言い換えると、その圧力は実は、充分小さいスケールで観察すると一定値ではなく、変動していると言っているのです。

そりゃあ、圧力の実態は熱運動する分子の衝突なんだから小さな変動(揺らぎ)くらいあるでしょう。

とお思いでしょうか。

 今なら当然の考えなのですね。でも、このブラウン運動のメカニズムが解明されるまでは、ブラウン運度を起こす粒子を取り囲んでいる液体(あるいは気体)を構成する分子は「非常に小さい」としか言えませんでした。それが「ブラウン運動を起こす粒子のサイズで揺らぎが起こる位の小ささだ」と表現できる様になったのですね。

 分子は小さいとはいうものの、無限に小さい訳ではない。これが明らかになったことでブラウン運動のメカニズムの解明には「原子論」が机上の空論ではなく実態に沿った理論なのだ、ということが示したという歴史的な意義もあるのです。

 原子や分子の存在が仮説に過ぎなかった時代、というのは今の私達には想像しにくいものです。でもこの様な一見些細な現象の発見とその理解によって今の化学の基礎が作られている。これは仲々凄いことなのではないでしょうか。

PS:このブラウン運動の発見者のフルネーム、ロバート・ブラウンと言うそうです。不思議と知っているような名前だな、と思ったらウイスキー野ブランド名だとか。しかもキリンビールの販売の国内ブランドなんだとか。てっきり海外の有名ブランドだと思っていたので二度びっくりです。

 

江頭 靖幸

 

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