誰が公害問題を解決したのか?(江頭教授)
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このブログを読んでいるあなたがもし高校生なら「公害問題」は遠い昔のお話、歴史で習うトピックスだと感じているかもしれません。でも、私(今年で62歳!)にとっては多感な子供時代に世の中を騒がせた問題なのでビビッドに記憶が残っています。多分、いま学生である皆さんにとって「温暖化問題」のニュースが頻繁に目に入ってくるのと同じ様に、私も「公害問題」に触れながら学生時代を過ごしていたのです。
さて、2025年、21世紀も1/4過ぎた今の時代、公害問題は過去のものになった、つまり解決されたといっても良いでしょう。では、誰がこの公害問題を解決したのでしょうか?
この質問に対する答えは1つに限定することはできないでしょう。たとえば法律を専門にする人だったら、「公害対策基本法」(今の環境基本法です)や「水質汚濁防止法」「大気汚染防止法」といった法制度が整備されたことで新たな公害の発生が未然に防がれていることが「公害問題を解決」したことなのだ、と説明してくれるかもしれませんね。
なら法律を作った人が公害問題を解決した人ということになります。国会議員の皆さん、よく頑張った!
いや、まあ、当時の雰囲気を知る人間から言わせてもらうと、とてもそんな雰囲気ではありませんでしたよ。国会の、特に与党の議員の皆さんは、激しいマスコミによる告発に野党からの突き上げもあり、渋々法律を通した……ように私には見えていました。なら公害問題を解決したのはジャーナリスト達なのでしょうか。
これの見方も一理ありますよね。ジャーナリストの皆さんの反骨精神は素晴らしい!
とはいえ、ここは化学、というか化学工学が専門の私にも一言意見を言わせてほしいですね。
ジャーナリズムの力で公害問題の存在が広く知られるようになりました。解決が必要だ、というコンセンサスが得られて国会を通じた立法によってそれが具体的なルールへとつながります。でも、それだけでは絵に描いた餅では。社会の利便性を損なうことなく、新たにできた法律に合わせて公害の無いものづくりを進めていく。そのためには例えば化学工場の再設計や、あるいは自動車エンジンと排ガス処理システムのイノベーションが必要だったのです。
この立場で考えると公害問題を解決したのはエンジニアだ、ということになりますよね。そして、面白いことに公害問題を解決したエンジニアたちは公害問題の専門家ではなかったのです。
彼らは化学工場やそこで用いる装置の設計の専門家であり、あるいは、エンジンと電子制御の専門家だったはずです。そして、公害問題という漠然とした課題に取り組んだのではなく、法律で定められた環境基準をクリアするための具体的な技術的課題に取り組んだのでした。
「公害問題」に限らず、世の中に存在する「問題」が解決に動き出すときには、実はその「問題」の専門家の役割は終わっているのかも知れません。それは決して悪いことではないと思います。だって、その「問題」の解決はその専門家達の失業とイコールなんですよ。「問題」の専門家が解決の役割を担ったとして、「解決を遅らせたい」という欲求に勝てる人が、果たしてどのくらいいるのでしょうか。
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