世界の全ての人とふれ合いたい?(江頭教授)
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先にブラウン運動と拡散について紹介しました。「ブラウン運動のようなランダムに運動する粒子は四方八方に広がってゆくものの、その重心は移動しない」そして、そのような運動の様子、粒子が広がってゆく様子が拡散なのでした。
さて、拡散を起こすのはなにもブラウン運動をする粒子には限りません。分子だってランダムな熱運動をしていれば拡散は起こします。というか、拡散という用語は粒子よりも分子の方が一般に使われるように思います。
ということで、今回は分子の熱運動がどのような現象なのか、そのイメージについて紹介したいと思います。
まず分子の熱運動について。例えば気体の分子はどのくらいの速さで飛んでいるのでしょうか。熱運動というぐらいですから、この速さは温度によりますので、まずは室温 ( 298 K ) で考えましょう。並進の自由度3に割り当てられるエネルギーは 3/2kT なので、分子の重量が分かれば速さを計算で求めることができます。
結果は窒素分子なら約520m/s、少し重い酸素分子だと約480m/sに。
これは凄いスピードです。なら、空気の分子はあっという間に何メートルも移動するのか、というとそんなことはありません。分子はある程度はまっすぐ進むことができるのですが、すぐに他の分子と衝突してしまいます。
では、空気の分子はどのくらいの距離直進することができるのでしょうか?
分子と分子の衝突ですから、圧力(分子の密度)が高いほど頻繁に起こります。そして大きな分子ほど衝突も盛んとなるでしょう。条件次第でいろいろ、とまとめてしまってはつまらないのでここでも空気、それも室温で1気圧の空気を例にとりましょう。
厳密には窒素分子と酸素分子のサイズは違うのですが、かなり近いので一緒にまとめて議論しましょう。空気中の分子が衝突なしで直進できる距離は 0.07 μm 程度だといいます。これは驚くほど短いのではないでしょうか?速度があんなに早いのに直進距離が短い、ということはもの凄くたくさん衝突しているということですね。
では1秒当たりの衝突回数を求めてみましょう。空気分子の平均速度を 500 m/s とすると約70億回となるのです。
さて、計算結果が出たところ今回のタイトルを回収しておきましょう。
周りの人に「はいタッチ!」と触れることを想像してみてください。空気分子は1秒間で世界中のほとんどの人とふれ合うことができるくらいのもの凄い勢いで衝突しているんですよ。
なお、この例え話は私が博士課程の学生だったころに先輩から聞いたものです。そのときは「1秒間で世界中の人と2回ちかくふれ合える」という話だったような。分子のスピードも凄いけど人口増化のスピードも恐ろしいくらい早いですね。
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