拡散による移動の速さ(江頭教授)
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前回と前々回の記事では空気分子の拡散の過程を念頭に、一次元のダンダムウォークのシミュレーションを行って(AIに行わせて、の方が正確か)、その結果から、拡散による分子の移動では、分子の集団の平均の位置(重心の位置)よりも、その広がり(分散)が重要だ、というところまで話が進みました。
さて、今回もAIにランダムウォークのシミュレーションを行ってもらいましょう。以下の図の青の線は
粒子数:10,000個
ステップ数:100ステップ
モデル:各ステップで粒子は +1 または -1 の方向にランダムに移動
という条件でランダムウォークをさせた後の粒子の位置当たりの分布の様子です。(これは前回・前々回のシミュレーションと同じ条件です。でも、乱数の違いで結果は必ずしも同じではありませんが。)
さて、この青の線に注目すると分子の位置の広がりはどの程度でしょうか。大きめに見て右は+20、左は-20、その差40といったところでしょうか。半分の20(つまり-10から+10まで)とするとちょうど良い、というより少し細めでしょう。まあ、ざっと見たところ広がりの幅は20から40の間、といったところでしょうか。
次に図のオレンジのライン。こちらはステップ数を10倍の1000ステップにしたシミュレーションの結果です。ステップ数が10倍ということは10倍の運動時間があったということです。なのでこちらの分子の位置の広がりも青のラインの10倍、200から400の間……には到底見えません。どう見てもそんなに広がってないですよね。これは一体どうしたことでしょうか?
拡散による分子の移動を「速度」と表現すると、なんとなく移動距離が時間に比例しているように考えてしまいます。「移動速度は何 m/s ですか」てな感じでしょうか。でもシミュレーションの結果をみると移動、というか拡散による広がり方は時間に比例していない。時間が経つにつれて広がり方が遅くなっている様です。
ここでは天下り式に結論を先に述べておきましょう。拡散による分子の広がりは経過時間そのものではなく、経過時間の平方根に比例しているのです。
たとえば上で示したシミュレーションのグラフですが、オレンジの線(1000ステップ)は青の線(100ステップ)の10倍の時間が経過した状態を示しています。ということは10のルート、つまり約3.16倍の広がりを持つことになります。ざっと60から120くらいの幅ということ。どうでしょうか?少し見にくいですが、オレンジの線が描くピークの幅として妥当ではありませんか?
さて、拡散による移動を「速度」で表現するのは相応しくないようです。今回のシミュレーションで見たように、拡散では時間が経つにつれて、あるいは移動距離が増えるにしたがって、どんどん「速度」の値が変化してしまいますからね。「速度」とは移動距離を移動にかかった時間で割り算した値ですが、その値が一定にならないならどう表現するのがよいでしょうか。難しく考える必要はありません。割り算などせずに「距離○○mを移動するのに××秒かかります」と言っておけば良いのです。
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