ランダムウォークによる移動速度(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
空気中の分子は数百m/sで運動しているのに移動するスピードは遅い、これを以前の記事では「おならの匂いが音より遅れて伝わるのはなぜか」と表現しました。前回の記事ではその説明をしようと思ってランダムウォークについて紹介していたのですがAIによるシミュレーションに感銘を受けて(受けすぎて)話が中途半端で終わってしまいましたね。
さて、今回はランダムウォークの話を続けましょう。空気の分子は互いに衝突してほとんどまっすぐに飛ぶことが出来ません。衝突のたびに方向はランダムに変わる。このような運動をランダムウォークと呼びます。本当の分子は三次元で運動していますが、簡単のために一次元でシミュレーションしてみましょう。
分子が(衝突せずに)まっすぐ進める距離を(単位はともかく仮に)1とします。一次元なので右に進むか左に進むかです。衝突の後に方向がランダムに変化するとしてたくさんの(10,000個の)分子がそれぞれ十分な回数(100回)の衝突を繰り返したとすると、その分布は以下の図のようになるのです。(これは前回AIが作ってくれたグラフと同じものです。)
100回衝突を繰り返しても、すべて右に移動するなら移動距離は右に100ですね。すべて左なら左に100です。(いや、99か?)このグラフ、本来なら-100~100の間の区間で書くべきでしょう。でも10,000個くらいのトライアルでは100回連続で右や左に偏る分子は現れなかったようです。
さて、このグラフを見ると(粒子数が少ないことによる揺らぎはともかくとして)きれいに左右対称になっています。この10,000個の粒子の「平均の位置」(つまり重心)は実は位置0にあります。つまりランダムウォークする粒子は全体としてはどちらにも移動しないということになります。その代わり真ん中に集中していた粒子が右や左に広がっている。これは粒子が「拡散」したのですね。
この場合、個々の分子の速度は普通に「 m/s 」などの単位で表せばよいのですが、「拡散」による移動はどのように表現すればよいのでしょうか?
たしかに1個1個の粒子に注目すると移動速度が「 m/s 」で計算できるでしょう。でも複数の粒子では?そうだ、平均をとれば……ってそれだと 0 なのですよね。
ポイントは「おならの匂いが音より遅れて伝わるのはなぜか」なのですから(えっ、そうだっけ?)「おなら」の分子が出発点から或る程度離れた距離に到達するかどうかを考える必要があります。つまり、分子がどのくらい広がるのか。そう、分子の位置の平均ではなく広がり具合、つまり「分散」あるいは「標準偏差」について考えることが必要なのです。
では、分子の位置の分散(「標準偏差」)と移動速度はどのように関係づければ良いでしょうか。これは次の課題としましょう。
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