分子の速度と移動速度(江頭教授)
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分子は凄い速度で運動している、という話をこちらの記事で書きました。分子の速度は
窒素分子なら約520m/s、少し重い酸素分子だと約480m/s
なので、この記事のタイトルの「分子の速度」の方はすでに答えが出ていますね。
で、タイトルの後半について。「いや、速度と移動速度ってなにが違うの?」と疑問を持った方もいらっしゃるでしょう。いや、両者は異なる概念です。なんと説明すれば良いかなあ。そうだ、昔、私の同級生が秀逸な例え話をしていましたよ。
分子の速度は数百 m/s でほぼ音速と同じ程度。もし、分子がこのスピードで移動できるとしたら「おならの音を聞いたらすぐ臭い」はずだよね。でも、実際には音がしてしばらくしてから匂うでしょう。分子が移動するスピードは分子の速度よりずっと遅いんだよ。
ですよねー。
ここでちょっと注意するべきなのはおならの「匂い」の原因物質は窒素分子や酸素分子ではない、ということです。(えっ、そっち?)
おならの匂いは、おそらく含硫黄化合物だと考えられます。例えば硫化水素やメチルメルカプタンなどでしょうか。分子の速度(移動速度ではなく、直進運動の速度、つまり熱速度の方です)はある温度での「自由度3の並進運動のエネルギー」によって決まります。運動エネルギーが同じなら重い分子ほど遅い、正確には分子の重さの -0.5乗で遅くなるのです。
硫化水素より重いメチルメルカプタン( CH3SH )を例に考えると分子量は48で窒素や酸素の2倍弱程度。熱速度は 400 m/s 程度でそんなに遅くはならないのですね。
では、おならの音より匂いが伝わるのが遅いのはなぜ、じゃなかった、分子の速度より移動速度が遅いのは何故でしょうか?これもこちらの記事にあるように、分子が
1秒間で世界中のほとんどの人とふれ合うことができるくらいのもの凄い勢いで衝突している
からです。分子はものすごい速さで運動していますが、まっすぐ移動できる距離は 0.1 μm 程度です。紆余曲折があってそんなに早く移動できないのです。
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