溶鉱炉の壁は何でできているの?(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
今回は私の専門、化学工学に関係した話題です。化学工学とは「化学プラント設計学」と説明しているのですが、私はその中でも反応工学を中心にしています。で、反応工学については「反応器を設計する工学」と説明しているのですが、いつも思っているのは「反応器の最高傑作は溶鉱炉だ」ということです。
溶鉱炉が反応器だ、というと(金属工学の先生を中心に)何を言っているんだ、ということになりそうです。でも溶鉱炉では炭素(コークスとして供給されます)と酸素(空気が吹き込まれています)が反応して一酸化炭素を生じ、その一酸化炭素によって酸化鉄(これが鉄鉱石)が還元される、という化学反応が起こっているのですから立派な反応器ですよね。
先日、授業のなかで鉄の製造について説明していたのですが、この溶鉱炉の凄さに関して
溶鉱炉は古くからある技術。昔は高温に耐えられる材料も限られていたのに、反応が起こる場所はものすごい高温でターミネータ2でも融けてしまうぐらいだ
と指摘しました。(数名の学生さんがサムズアップしてくれて、ちょっと嬉しかったです。)
実際、溶鉱炉の中心部は2000℃を超える高温になっています。しかし溶鉱炉を形作っている耐火レンガなどは千数百℃にしか(いや、それだって凄いですが)耐えられません。一体どうなっているのか……。
実は溶鉱炉は下部から吹き込まれた空気(中の酸素)と上部から投入されたコークスの反応によって加熱されています。つまり溶鉱炉は自分で熱をだして内部から温まっていて、外部から加熱されているわけではありません。なので溶鉱炉は中心の温度が高く、外側に行くほど温度が低くなっているのです。このため溶鉱炉の壁は反応温度よりもずっと低い温度に保たれることになります(とはいえ優に1000℃は超えるのですが)。
溶鉱炉の一番温度が高い部分は、実は未反応の原料(鉄鉱石やコークス、それに石灰石)で取り囲まれているのです。ターミネータ2よろしく、これらの鉱物も熱には耐えられません。でも、溶鉱炉の頂上から次々と原料が投入されてくる。分解と追加がバランスして高温部を囲む「かりそめの壁」が維持されるのです。
追記:
えっ、溶鉱炉の中に消えていったのはターミネーター2じゃなくてT-800だって?これは失礼、確かにそうですね。
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