一酸化炭素中毒に男女差?(江頭教授)
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ここ数回の記事では一酸化炭素中毒について考えてきました。昔(それこそ産業革命以前)の建物は気密性が低く、家の中で火をたいても一酸化炭素中毒にはなりにくかった。わざわざ換気をしなくてもすきま風で新鮮な(そして冷たい)空気が入ってきたのですね。
それが高度経済成長期に建材が革新されると部屋の気密性が一挙に向上。当時普及した石油ストーブやガスストーブの不完全燃焼による一酸化炭素中毒が無視できないリスクになり始めた。それが意識されたため「ときどき部屋の換気をしましょう。」というCMが作られたのでしょう。(思えばこれが話の発端でしたね。)
ところが、その後のエアコンの普及によってストーブはマイナーな存在に。燃焼を伴わない暖房器具であるエアコンのおかげで一酸化炭素中毒のリスクは低減した、と思われる。
さて、ここまでは今までの記事の振り返り。そして、はっきり言えば、単なる推測です。いや、本当はどうなんだろう。ちゃんとしたデータで裏付けることができるのでしょうか。
と、言うことで一酸化炭素中毒による死亡者についての文献をさがすと、以下の様な論文を見つけました。
伊東 岡、中村 好「日本における一酸化炭素中毒による死亡 -1968-2007年の人口動態統計をもとに一」日臨救医誌(JJSEM)2010:13:275-82
というもの。そのものズバリ、という感じですよね。
で、結果は以下のグラフに。えっ、これってどういうことなの?
グラフをみると四角のキーと三角のキーの線があります。キーが三角の、点線のラインはいままでの推測そのままに見えます。グラフの始まり、1968年から増加した死亡者数は1974年頃をピークとして減少に転じ、そのままどんどん小さくなって……あれっ、2004年ころに小さな山ができているのですが、これは一体なんでしょう。
いや、それよりも問題なのは四角のキーの実線のほう。なんだか変な増減を繰りかえして減る気配がない。それどころか2004年頃のピークはかなり巨大です。
よく見ると、この二種類のラインは男性と女性の死亡率を区別して表していることが分かります。三角のキーの点線は女性の、そして四角のキーの実線は男性の値だとか。女性の死亡率はほぼ予測通りなのに男性の値はどうしてこんなかたちなのでしょうか。いや、それ以前に男性の死亡率の方が女性の死亡率より高い、というのはおかしな話です。
もったいぶるのは止めましょう。この論文に示されている「一酸化炭素中毒による死亡」には一酸化炭素中毒を利用した自殺もカウントされているのです。日本では男性の自殺率が女性のそれよりも大きい、というのは良く知られた事実。それを合わせて考えると一見不可思議な「一酸化炭素中毒に男女差」がある、という結果も理解できますね。
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