金属マグネシウムはなぜアルミより軽いのか(江頭教授)
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前回、マグネシウム合金の話を紹介したのですが、もう少し話を続けましょう。金属マグネシウムがアルミと比較して優れている点は何でしょうか?機械材料としてみると、もっとも注目すべき点はその軽さ(密度の低さ)だといいます。実際、金属マグネシウムの密度は 1.74 g/cm3 であり、アルミの 2.70 g/cm3 の 64% 、ほぼ2/3しかありません。
さて、皆さんはこのデータを見てどう感じるでしょうか?MgとAlは周期律表では隣同士。確かにMgの方が原子番号が小さい分、一個の原子の重さも軽そうです。
調べてみるとAlは殆ど質量数27の原子からできていて平均原子量は26.98だとか。一方Mgは質量数24の原子が約9割を占めるものの25、26の原子も含まれるため平均原子量は24.30となるそうです。原子量だけを比較するとMgはAlの約90%です。金属マグネシウムがアルミより36%軽い理由のうち10%程度が「原子そのものの重さ」の違いなのですね。
36%のうち10%の説明が付いたとして、残りの26%は何が違うのでしょうか。
単純に考えると「原子の大きさの違い」となりますが、金属マグネシウムやアルミの場合、原子そのものの大きさというのは違いますよね。金属は「自由電子の中に陽イオンが浮かんでいる」というイメージですからどちらかというと陽イオンのサイズが近いのかも。いや、そもそも原子やイオンのサイズ、といっても卵の殻のような明白は境界はありませんよね。
ということで、金属の中での原子と原子の最短距離(最近接原子間距離)を原子の直径と考えることにしましょう。マグネシウムは六方最密充填構造、アルミニウムは面心立方構造という違いはありますが、どちらも原子(あるいは陽イオン)の充填率は74%と同じです。X線回折のデータなどから最近接原子間距離を求めるとマグネシウムは 3.20Å、アルミニウムは 2.86Å、となります。両者の比は約 0.893。89.3%なので100%から10.7%の減少です。思ったほど違わないかな……。
おっと、これでは単なる長さの比較ですね。体積で比べるには三乗しないと。結果は 0.714、つまり 71.4% となります。100%と比較して 27.4% 小さい。先ほどの「残りの26%は何が違うのでしょうか」の答えとして満足のいく結果の様です。
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