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「破裂」か「爆発」か?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 まずは以下の記事をご覧ください。我々、東京工科大学工学部応用化学科の片桐教授がテレビのニュースでコメントした、というお話し。実際のニュースは中京テレビニュースのyoutubeでこちらで公開されています。

 これは他大学の化学の研究室で起こった事故、年末の大掃除の途中だったのでしょうか、薬品のビンが「破裂」した、というのです。

 さて、ここでわざわざカッコつきで「破裂」と書いたのは同じ事故についての別のニュースでは「爆発」と表記しているものが多いからです。つまり「爆発」と「破裂」という二つの表記があるのですね。

 まず「爆発」と表現しているニュースについて。これは片桐先生が出演しているニュースの映像にもあるのですが、事故の第一報が「薬品が爆発した」という関係者からの通報であったことが根拠なのでしょう。本人たちが爆発だ、と言っているのですから「爆発」が起こった、とニュースにしたというわけか。

 実は注意してみると各社の報道には微妙な違いがあって、爆発が起こった、と地の文で書いているところと、「爆発が起こった」と通報があった、と伝聞として「爆発」を伝えているものとがありました。

 その一方で片桐教授のコメントを公開している中京テレビニュースでは「破裂」と呼んでいる。これはいったいどうしてでしょうか。

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 まずは「破裂」と「爆発」の違いを確認しましょう。

 オンライン辞書のwiktionaryによると、まず破裂は

内部の圧力により勢いよく裂けること。

となっています。で爆発の方は

熱や音・光などを伴い、一気に飛び散ること。

ということ。どちらも似たようなものですが、熱や音・光の有無が違いのようです。

 でも少し考えてみると、音はともかく「熱」や「光」が発生するためにはそれなりのエネルギーが必要なことに思い至ります。そんなエネルギー源、普通は化学反応、おそらくは燃焼反応が起こる場合以外にはありえないのでは。片桐先生の見立てでは今回の事故の原因はテトラクロロシランの加水分解だとか。ならばそこまでのエネルギーが生じるとは考えにくい。「爆発」よりは「破裂」の方がありそうな事例ですね。

 さて、今回のケースは「爆発」ではなくて「破裂」だったようですが、この「爆発」という言葉の使い方には注意して欲しいと思います。なぜなら「爆発」は火災をひきおこすなど「破裂」より深刻な被害を引き起こす可能性が高いのです。当然、大学の化学系の部署では「爆発」を防ぐような対策は何重にも配慮されているはずで、その対策を潜り抜けて「破裂」ではなく「爆発」が起こったのだ、とすれば今回のニュースは(すくなくとも私たち化学系の人間にとっては)かなり深刻な事態を暗示していることになるのですから。

PS:このニュース、片桐先生は監修していないのだろうなあ。だってアナウンサーのひと、「テトラクロロシラン」を「テトラクロ・ロシラン」と途中で分けて読んでいたのです。「テトラ」+「クロロ」+「シラン」で「テトラクロロシラン」なのですからロとロの間で切るのはいくら何でも変ですよね。

 

江頭 靖幸

 

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