「寒い日になんで換気が必要なの?」(江頭教授)
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もう12月も半ばを迎え、かなり寒い毎日ですね。こんな季節になると子供のころに見たテレビのCMを思い出します。曰く「ときどき部屋の換気をしましょう。」CMといえば何かの製品をPRするものだと思っていたので、何も売り込んでこないCMが珍しくて記憶に残っています。一体、あれはどの企業の提供だったのでしょうか。もしかしたら民放のCMではなくてNHKの注意喚起のショート番組だったのでしょうか。
さて、若い読者さんのためにはこのCMの内容について少し説明が必要でしょう。なんで冬の寒い日に、温まった部屋の空気を追い出して外の冷たい空気を入れる必要があるのか。これは一酸化炭素中毒を防ぐためなのです。
冬の寒い日、暖をとるために炎を囲むという姿、ちょっとオーバーですが人類の進化を象徴する光景ですよね。昔から部屋を暖めるには何かを燃やしていたわけですが、私の子どものころにはガスや石油ストーブが暖房の主役でした。これは燃料を燃やして熱を発生させるのですから室内の酸素を消費する。人間ももちろん酸素を必要とするのでストーブと人間が競合するわけです。
でも、それだけではありません。何かの不具合でストーブが不完全燃焼を起こしたら、人間に有害な一酸化炭素が発生する可能性もあるのです。これはたちが悪い。濃度が高いと死んでしまう、というのが最悪ですが、それより低い濃度でも人間の意識を奪う性質があるのです。部屋の中に一酸化炭素がたまっても外に出れば難を逃れることができます。でも、その「外に出る」という判断をするための脳が最初に影響を受けてしまうのですね。
ということで、転ばぬ先の杖、と言いましょうか。手遅れにならないうちに換気を、というCMが作られたのでしょう。
えっ、でもちょっと待ってください。暖を取るために火を使うのは、それこそ人類の黎明からの習慣ですよね。なら「転ばぬ先の杖」なんて言葉より、そのものずばり、換気を促すためのことわざや慣用句があってもよい、というかあるべきなのでは?
おそらくその理由は「昔は換気の必要がなかった」だろうと私は思います。
昔の暖房の仕方は部屋の中で火を焚いて、その周りに集まって暖を取るという形で、部屋全体を加熱するという方法は比較的最近のものでしょう。理由は簡単で、そもそも昔は部屋全体を加熱することが困難だったから。だって一生懸命暖めてもすきま風が入ってくるんだもん。
「すきま風」という名前のとおり、昔の建物にはどうしても「すきま」ができていたのですね。部屋の密閉性が十分ではないので「ときどき部屋の換気をする」どころか自然に部屋の空気が入れ替わり続けていたのでしょう。
戦後の高度経済成長期(これは私の子ども時代でもあるのですが)には建築に用いられる資材も施工方法も著しく改良されて「すきま」の少ない家屋が作られるようになりました。そのおかげで部屋全体を暖めることも可能になったわけですが、同時に一酸化炭素中毒の可能性が生じ、そして注意喚起のCMが作られる必要がでてきたのですね。
もっとも、私も問題について徹底的に研究してきた、というわけではないので保証はできませんが、まずまず納得できる理由ではないでしょうか。





