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Al原子よりMg原子が大きいのはなぜか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回の記事で紹介したように金属マグネシウムはアルミより軽く、2/3くらいの密度です。正確には36%程度軽いのですが、そのうち約10%はMgの原子核がAlより軽いから、で説明できる。残りの26%は金属内での原子間距離の差で説明できます。金属マグネシウム内のMgの原子間距離は 3.20Å、その一方アルミ中のAlでは 2.86Å となるからです。つまりAl-Al間の距離よりMg-Mg間の距離の方が大きいのですね。

 皆さん、この説明を聞いて不思議に思いませんでしたか?これって「Al原子よりMg原子が大きい」ってことですよね。

 私は不思議に思いました。実は私が化学を勉強しはじめたころ、もう半世紀近く昔になるのですが、そのとき原子の周期律表にそって原子のサイズについての説明が教科書か参考書(さすがにどちらかは覚えていません)に書かれていました。

1)周期律表を縦にみると、上から下に向かって原子は大きくなる

2)周期律表を横にみると、左から右に向かって原子は小さくなる

というのです。

 当時の私は、1)は納得できたのですが、2)は意外に感じました。どうしてかって?1)は原子番号が増える順に並んでいることになりますが、2)の方は逆になっているのです。Mg原子とAl原子で考えると、Mg原子の持つ電子は12個。一方Al原子はそれより一個多い13個の電子を持っています。普通に考えるとAl原子の方が大きいのでは……。

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 当時の私は、上の図に示した様な電子の配置図で原子をイメージしていたのだろうと思います。

 1)の様に周期律表を上から下に見る場合は電子の配置図の外側に新しい円が追加されるので、原子は大きくなる、という印象を受けます。これは実際の原子の大きさの変化を、それなりにモデル化しているわけですね。

 その一方で、2)に示されたように、あるいはMg原子とAl原子との比較の様に周期律表を左から右に見た場合、配置図では同じサイズの円が示されているだけですから、敢えて言えば「原子のサイズに変化はない」となるべきでしょう。でも、当時の私は上から下の変化、のイメージに釣られて何となく「原子は大きくなる」と考えていたのだと思います。

 その状態で、教科書(か、参考書)で逆のデータを見せられた。なので、当時の私は不思議に思った、という訳です。

 では、ここで2)の周期律表を横に見た場合のサイズの変化の理由について種明かしをしましょう。周期律表を左から右に見る、ということは原子番号が上がる方向で見る、ということです。電子の個数も増えますが、それと同時に原子核の電荷も増える。したがって原子に含まれる一つ一つの電子に対するクーロン力も強くなるのです。電子がより強く原子核に引きつけられることによって両者の距離が縮む。したがって原子のサイズが小さくなる、と説明されていたのです。

 しかし、半世紀近く前のことをよく覚えていたなあ。私にとってこの説明は「原子」という化学の世界の存在が「クーロン力」という物理の世界の原理で解き明かされる、という化学と物理のつながりをはじめて理解した経験だったから、なのでしょうか。

江頭 靖幸

 

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