化学反応は原料分子にとっては「死」を意味するが、同時に生成物分子にとっての「誕生」でもあるのです。(江頭教授)
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いや、人生の教訓とか、哲学的に深いこととかを言いたいわけではないのです。実は前回の記事の「死亡率」にまだこだわっているのです。
まず、死亡率ですが英語では「mortality rate」と言うのですが(あるいは「death rate」という表現もあるそうです。ちょっとどぎつい言い方ですかね。)、これ「mortality」が「死亡」で「rate」が「率」ですよね。
これは別に良いのですが、私は化学の、特に化学工学の先生なのでどうしても比べてしまうのですよね。「reaction rate」という言葉と。
「reaction」というのはこの場合は「反応(化学反応)」のことで、その「rate」だから「反応率」でしょうか。いえいえ、「reaction rate」の和訳は「反応速度」なのです。
まあ「rate」という英語には「割合・率」という意味も「速度」という意味もあるそうです。(ついでに「比率」、とくに「交換比率」という意味もあります。「円ドルレート」なんてよく聞きますよね。)なので、訳語が「率」になろうが「速度」になろうが、間違いではないのですが、なにか気になります。
というか、前回の記事では私は
「死亡率」ではなくて「年間死亡率」と書くのが相応しい表現のような気もします。数値も単位をつければ「7.0人」とかではなく「7.0人/年」とか書くべきですよね。いや、もっと言うと単位が「人/年」なら、これは「死亡速度」と書くべきなようにも思います
と書いているのです。なぜこう感じたのかを考えてみて「reaction rate」との対比に思い至った、と言うわけ。一体何が違うのだろう?
化学反応の速度は普通「原料物質(あるいは生成物質)濃度の時間変化」として定義されています。「時間変化」というよりは「時間微分」と言った方が正確に意味が通じますかね。つまり濃度という連続量があり、しかもその時間に対する変化が微分可能だ、という前提があるのです。
その一方で「死亡率」はどうでしょうか。10万人を単位として考えて、仮に1年でその全員が死んでしまう、という極端なケースを想定しても一人一人の死亡というイベントは平均で5分に一回程度です。死亡(つまり人口の変化)は連続的な変化とはみなすことができない。人口という数値は連続量ではなく、時間微分という扱いにそぐわないのですね。
つまり「rate」という用語は時間変化を示しているが、連続量についてはその微分を意味していて「速度」と訳される。連続ではない、つまり離散的な数値については「一定期間の前後の比率」という意味で「率」と訳されるのですね。
とまあ、きれいにまとまったのですが、ここでタイトルにもどりましょう。化学反応だって本当は個々の分子の変化(死と誕生)なんですよね。人口と同様で濃度も本当は連続ではないのですが……。
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