物価が上がるのは良いことか?(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
今回のタイトルは「物価が上がるのは良いことか?」としました。「いや、良いわけないだろう!」という声が聞こえてくるようですね。わざわざこんな記事を書こうと思ったのは、以前の記事の終わりに書いたこと
物価が上昇することは過去に働いて貯蓄をしていた人たちよりも、現在働いてお金を稼いでいる人たちが有利になる現象
について補足が必要だろうと思ったからです。
ということで今回は、物価の上昇局面で働いていた人の実例を紹介したいと思います。誰あろう、私の父のお話です。
私の父は昭和5年生まれ。戦前の生まれです。終戦の昭和20年(1945)には15歳で「マッカーサー暗殺」を企てるような血気盛んな少年だった、と語ってくれたことがありましたが、果たして本当だったのでしょうか。その父が働き出したのは1950年ごろ。戦後間もなくのことなのでデータも整っていなかったのでしょうか、総務省のデータは1970年からしかありませんでした。少し探して Our World in Data というサイトで以下のデータを見つけました。もともとは世界銀行のデータをIMFがまとめたもので、1960年からのデータが示されています。
入社10年目くらいの父が暮らしていた日本は年に5~6%物価が上がる社会。いまの日本よりもかなりのインフレだったのです。そんな父が人生最大の買い物をした、つまり家を建てたのが1973年ころ。私は1973年4月には新築の家に引っ越して新しい学校に転校しましたから、1973年に入る頃には家は出来上がっていたのですね。そして、この1973年ころから物価は急上昇を始めます。いわゆるオイルショックの影響です。
International Monetary Fund (IMF) International Financial Statistics, via World Bank (2025) – processed by Our World in Data
1973年から1974年にかけての物価高は上昇率約20%と尋常ではなく「狂乱物価」などと呼ばれたというのも納得です。これほどではないとしても物価高はその後も続いたのでした。
さて、こんな激しいインフレ、私の父はさぞ苦労したのだろうなあ、と思えばそんなことはありません。当時父はこんな風に言っていたのです。
家の支払は狂乱物価の直前に済ませておいたのでラッキーだった。それに住宅ローンを借りている身としては物価はどんどん上がってくれた方がありがたい。
そうです。父はこの物価高の時期を借金をしてる状態で過ごしていたのです。インフレは「物の値段が上がる」と同時に「お金の価値が減る」現象とも見なせるのですから、父が返済しなければならないお金の価値がどんどん減ることでもあったのですね。
では母の方はどうだったのでしょうか。
年の初めにはこんなに物価が上がってやっていけるのか不安だ、と思っても、一年経ってみると給料が上がって何とかなってしまうものだった
とのこと。
実はここがポイントで、当時は物価の上昇に連動して給与も上昇していたのです。「現在働いてお金を稼いでいる人たち」は物価の上昇とともに給与が上がります。(上がりますよねえ。)それに対して「過去に働いて貯蓄をしていた人たち」のお金は増えることはない(増えても物価の上昇には追いつかない)のです。
さて、2026年の日本はデフレを脱却し年率3%程度のインフレが常態化しつつある様です。このブログを読んでいるあなたが、もしこれから働き始める大学生や高校生であるのなら、昭和5年生まれの父のようにラッキーな人生を送れるかもしれませんよ。
「日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事
- 英文字略称(片桐教授)(2019.03.13)
- 地震と夏みかん(江頭教授)(2019.03.11)
- 追いコンのシーズンはご用心(片桐教授)(2019.03.07)
- Don't trust over 40℃!(江頭教授) (2019.03.06)
- 「加温」の意味は「温度を加える」?(西尾教授)(2019.03.04)





