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リサイクルが原因で牛丼が販売中止になった件(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以下の写真は東京工科大学キャンパスにある「FOODS FUU」という建物。頭に「FOODS」とある様に食堂を中心としたお店の入っている建物です。(もっともコンビニや本屋さんも入っていますが。)そして、この建物の中には牛丼で有名な吉野家さんも入っています。

 さて、このブログを読んでいるあなたがもし高校生だとして、この吉野家さんで牛丼が販売中止になっていた期間がある、という話を知っているでしょうか?

 吉野家さんのWEBサイトで「吉野家の歴史」を見ると2004年に「2月11日、吉野家での牛丼販売が終了した。」とあります。そして2008年には「3月、牛丼の24時間販売を再開。」とも。限定的な販売再開はあったものの、牛丼の販売は約4年間中止されていたのです。

 ではなぜこの期間、吉野家の牛丼を食べることができなくなったのでしょうか。理由はやはり吉野家さんのWEBサイトにありました。「米国でBSEに感染した疑いのある牛が発見されたことより、米国産牛肉の調達が不可能に。」これが原因なのです。

「BSE」は「狂牛病」ともよばれ、正確には「牛海綿状脳症」という牛の脳の病気です。そしてこのBSEが世界に広がった原因こそ、前回紹介した「肉骨粉を通じた牛の体のリサイクル」なのです。

 子牛に母牛(とは限らないが)の体の一部(肉など有価物を取り去った残渣)を飼料として食べさせる、肉骨粉の利用というリサイクルは単にグロテスクな感じがする、というだけではなく現実的な問題もはらんでいました。BSEを発症している牛の体の一部を子牛が食べることで子牛にもBSEが伝染するのです。牛と肉骨粉のリサイクル、そのサイクルの中にBSEの病原体が一旦混入すると継続的にBSEの牛が作り続けられるのです。

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 さて、吉野家さんの記述「米国でBSEに感染した疑いのある牛が発見されたことより、米国産牛肉の調達が不可能に。」の内容を一つ一つ見てゆきましょう。

 まずなぜ「米国産牛肉の調達が不可能に」なったのでしょうか。理由はこの牛の病気、BSEが人間にも伝染する可能性があるから、です。BSEは「牛海綿状脳症」という名称のとおり、牛の脳が海綿(スポンジ)のように変質してしまう、という病気です。人間に伝染すれば人間の脳にも同様の変化が起きる。物言わぬ牛とは違い、その変化を体験する人間の苦しみを私達は見聞きすることができる。そして恐ろしいことにこの病気は治療することができないのです。このリスクを考えたとき、BSEに感染した可能性のある牛の肉を抵抗なく食べることができる人は少ないのではないでしょうか。(なお、人間に伝染したBSEはvCJD:変異型クロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれます。)

 次に、なぜ「米国でBSEに感染した疑いのある牛が発見されたこと」で全ての米国産牛肉を輸入できなくなったのでしょうか。BSEに感染していない健康な牛なら輸入しても良いのではないか。そう単純に考えるのですが、問題はBSEに感染した牛、感染していない牛を簡単に見分けることができないことです。いえ、正確には「明らかにBSEに感染した牛」を見分けることができる。しかし一見健康な牛でもBSEに感染している可能性はある。そしてその可能性を確定するには長い潜伏期間の経過を待つ必要があったのです。

 肉骨粉と牛のサイクルがある国、ほとんどの国がそうだったのですが、ではBSEの病原体がどこまで広がっているか分からない。この最悪のリサイクルを中止してサイクルを切り離したとして、それで影響が消えるのは何年後なのだろうか。2000年当時、世界で答えを知っている人は居なかったのです。一つの国のなかで一度もBSEの牛が見つかっていないなら、その国は大丈夫だろう。でも1件でも見つかれば……その国にどのぐらいBSEの牛がいるのだろうか。この牛は大丈夫なのだろうか。それとも潜伏期間の途中なだけなのか。病気への恐怖と共に疑心暗鬼が広がったのでした。

 BSEのもつ牛から人に、つまり動物の種を超えて伝染する性質、そして非常に長い潜伏期間をもつという特徴がこのリサイクルに最悪の副作用をもたらしたのでした。では、このような特徴をもつBSEの病原体とはどのようなものだったのでしょうか。それについては次回に説明したいと思います。

PS: 「FOODS FUU」という名称は「Who's Who」(著名人名鑑や人物辞典といういみですね)をもじった名称ですね。でも「FUU」って何だろう?

PS2:「FOODS FUU」は実は本学(東京工科大学)の蒲田キャンパスにもあるそうです。

江頭 靖幸

 

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