映画「不都合な真実2」にはまだ言いたいことがあるんだ(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
前回、前々回と映画「不都合な真実2」を擦り続けているのですが、もう一言良いですか?(いや、これで最後にしますから。)
「不都合な真実2」は気候変動問題の世界に注目させた映画(と書籍)「不都合な真実」の約10年振りの続編。日本語版のタイトルは「不都合な真実2 放置された地球」ですが、原題は「An Inconvenient Sequel: Truth to Power」です。今回は原題の副題にもはいっている「TRUTH」について、一言もの申させてほしいのです。
映画は、世界各地で進む気候変動の影響を映像とデータで示しながら、アル・ゴア氏が講演や研修を通じて対策を訴える姿を追います。再生可能エネルギーの普及状況や企業・政治家との協力の様子が紹介され、特に2015年のCOP21でパリ協定が採択されるまでの交渉過程がこの映画のメイントピックです。インドとのやり取りも焦点となり、国際的合意形成の難しさが描かれるが、映画は最後に「TRUTH TO POWER」というメッセージで締めくくられています。
さて、この映画のキーワード「TRUTH」とは何を意味しているのでしょうか。まずは、気候変動についての知識、と常識的に考えましょう
「人間が化石資源を利用して二酸化炭素を大気中に排出したことにより地球の気候に変化が起きている」
ということでしょうか?
これを温室効果ガスの排出量削減に対して消極的な人、たとえばインドのモディ首相に伝えたとします。それで
な、なんだってー!これは大変だ!我が国で電気を使えない3億人の人たちのために火力発電所なんか造っている場合じゃないぞ、すぐに二酸化炭素の排出量削減に取り組まなくては
となる……わけないですよね。
ですからゴア氏と、この映画のスタッフ達が思い描いている「TRUTH」はおそらくもっと別の、すごいPOWERがあるものなのです。たとえば
「今すぐ化石資源の利用を中止しないと地球の環境は徹底的に破壊され、早晩全ての人類が死に絶えるのだ」
とか。
全地球規模の決定的な破壊が確実にかつ短期間に訪れる。まるで地球に妖星ゴラスが衝突して全ての水と空気が吸い取られてしまうような、そんなインパクトがないと、モディ首相も12億5千万人のインド国民の夢を脇にどけ、3億人の貧困層に我慢を強いるような決断はできないのではないでしょうか。
最初に挙げた「人間が化石資源を利用して二酸化炭素を大気中に排出したことにより地球の気候に変化が起きている」という科学的な知識としての「TRUTH」であれば、立場により、人により、気候変動の対策にどの程度の犠牲を払うことができるのか、その判断はいろいろだと思います。豊かな国の豊かな人たちが少し高くても「ゼロエミッションの電力」を利用する、などということは有りそうなことです。でも、電気を使えず貧しい暮らしをしている人々に、発電所の建設を諦めて貧しい暮らしを続けろ、と言えるのでしょうか。
この科学的な知識としての「TRUTH」には人々の行動を縛る絶対的POWERはありません。人々の選択に際して考慮する、数多くの事象についての知識や経験、つまり数多くの「TRUTH」の一つに過ぎないのです。
では、「今すぐ化石資源の利用を中止しないと地球の環境は徹底的に破壊され、早晩全ての人類が死に絶えるのだ」というPOWERに満ちた「TRUTH」は一体だれが主張しているのでしょうか。それについては次回の記事で触れたいと思います。(しまった、これで最後にするって言っていたのに続いてしまった!)
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