試験にでない「ゲイ=リュサックの法則」(江頭教授)
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このブログ記事の内容は私(江頭)の個人的意見であり、学校法人片柳学園、東京工科大学、あるいはその一部(工学部、応用化学科)の組織としての意見をかならずしも反映するものではありません。
さて、予防線を引いたのでここから私個人の意見を展開させてもらいましょう。
化学の基礎を学ぶといろいろ人名がついた法則がでてきます。うーん、誰が誰だったっけ。良くわからん。そう思っているあなたに朗報です。「ゲイ=リュサックの法則」は試験にでない。これは試験問題の作成にかかわった(何時どこでだって?禁則事項です。)経験からの私の意見です。
例えば以下の様な問題を考えてみましょう。
「ゲイ=リュサックの法則」の内容としてもっともふさわしいものを以下の選択肢から選べ
A) 2種以上の気体が関与する化学反応について、反応で消費あるいは生成した各気体の体積には同じ圧力、同じ温度のもとで簡単な整数比が成り立つ。
B) 一定の圧力の下で、温度の上昇に対して気体の体積が単調に増加し、一定の温度上昇に対して気体の種類に依らず同じように膨張する。
皆さん、これどちらが正解だと思いますか?
もしあなたが教科書に忠実な高校生ならこう考えるはず。
A)の内容は「気体反応の法則」だな。それでB)は「シャルルの法則」。どっちも「ゲイ=リュサックの法則」の法則じゃない!っていうか、そもそも「ゲイ=リュサックの法則」なんて有ったっけ?
といった感じ。
高校の化学の教科書では普通「ゲイ=リュサックの法則」という名称の法則はありません。ですが科学の世界一般では「ゲイ=リュサックの法則」と呼ばれる法則があるのです。問題はA)もB)も「ゲイ=リュサックの法則」だ、というところなのです。
高校の化学でゲイ=リュサックの名前は「気体反応の法則」の発見者として出てくるのが普通です。ならA)の「気体反応の法則」の別名が「ゲイ=リュサックの法則」なのか。実際その通り。世間一般の化学ではそう呼ばれることがあります。ですがB)の「シャルルの法則」も「ゲイ=リュサックの法則」と呼ばれることがあるのです。
じつは今「シャルルの法則」として知られる気体の特性についてはじめて報告したのはゲイ=リュサックなのです。ですが、かれはその論文の中でその法則が以前にシャルルによって発見されていたことを明記していました。たまたま知った先人の業績に対するリスペクトを示したゲイ=リュサックの心意気に共感した(かどうかは分かりませんが)人々によって、その法則は「シャルルの法則」と呼ばれる様になったのです。
とはいえ一部のゲイ=リュサックの心意気に共感しなかった(かどうかは分かりませんが)人々は同じ法則を「ゲイ=リュサックの法則」と呼びました。おかげで一つの法則に「シャルルの法則」と「ゲイ=リュサックの法則」の二つの名称ができてしまいました。
ゲイ=リュサックの業績がこの「シャルル・ゲイ=リュサックの法則」だけだったらシンプルだったのですが……。ゲイ=リュサックは「気体反応の法則」も発見していてこちらも「ゲイ=リュサックの法則」なんですね。
とまあ、ここまでややっこしくなると試験問題に出すのは憚られるというもの。ですから「ゲイ=リュサックの法則」は試験にでないのです。
あっ、もちろん試験に出ないのは「ゲイ=リュサックの法則」という名称のことです。法則の内容についてはどちらの「ゲイ=リュサックの法則」もきちんと理解しておいてくださいね。ここ、試験にでます。
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