先端研究

「研究室ひとり」の学会発表(西尾教授)

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 毎年3月末に開催される,社団法人電気化学会の学会発表(今回の開催名は「電気化学会第83回大会」)に今年も参加し,研究発表を行ってきました.現在,研究室は存在しますが,応用化学科の学生は1年生のみですので,連名無しの単名での発表となりました.お笑い芸人に「劇団ひとり」という人がいますが,私の場合は「研究室ひとり」としての発表でした.依頼講演を除いて,大学の教員が単独で発表する事は異例ですので,事情を知らない人には奇妙に映っていたと思います.

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グリーンケミストリー、クリーンケミストリー、ITRSそしてサステイナブル工学 (高橋教授)

| 投稿者: tut_staff

 工科大学工学部が目指すサステイナブル工学を支える化学のひとつに、グリーンケミストリー(green chemistry)があります。グリーンケミストリーの考え方は、化学製品を設計、合成、応用するときに、人や生態系への悪影響を最少にし、かつ経済的・効率的に実現するというものです。では、クリーンケミストリー(clean chemistry)とはどういうものでしょうか?

 インターネット検索で“クリーンケミストリー”を検索すると、「グリーンケミストリー」の間違いではないか、と表示されました。皆さんも、そう思われたかもしれませんが、タイトルに揚げたのは“クリーンケミストリー”です。検索結果の中に、「純度」、「コンタミネーション(汚染)」というキーワードがありました。そうです。クリーンな状態を創出するための化学です。なんだ、お掃除か、と思わないでください。これなくして現代のIT(ICT、そしてIoT)技術は成り立たないと言っても、過言ではないでしょう。そして、クリーンケミストリーは応用化学科で行っている、化学の力でIT(ICT、IoT)技術を向上するための教育・研究のひとつです。

 現代の私たちの生活を支え、より良い生活環境を提供し続けているIT技術は、スマートフォン、タブレット、パソコンだけでなく、あらゆる電化製品や太陽光発電に用いられています。電化製品に使われているIC(集積回路)やLSI(大規模集積回路)、太陽光発電パネルに使われている太陽電池の基幹部分では半導体デバイスが働いています。この半導体デバイスが正常にそして効率的に動作するためには、使われている半導体材料がクリーンでなければなりません。

 さて、どのくらいクリーンでないといけないのか。それは、タイトルにあるITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors:国際半導体技術ロードマップ)でまとめられています。

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高分子固相光反応の不均一性(山下教授)

| 投稿者: tut_staff

 応用化学科が発進し1年が過ぎようとしています。学科には元気な1年生を迎え、教員も学生も希望にあふれ新鮮な気持ちで第1年目の講義や実験がスタートし、ました。応用化学科にはまだ4年生がいませんが、応用化学科に赴任した教員の研究室には既存学部(応用生物学部、コンピュータサイエンス学部、メディア学部)から学生が所属し、学生たちにとっては正にチャレンジングな卒業研究に挑戦しました。当研究室にもコンピュータサイエンス学部から学生が来て高分子材料の開発や光機能材料の開発を行いました。中でも、今年度大きな進歩を遂げた研究をご紹介します。

 今日の先端機能デバイスの多くは「光」を用いています。たとえば超高速計算機の「京」の電子回路を作るためには数十ナノメートルの精密微細加工が必要であり、光リソグラフィーの技術が活用されています。身の回りのDVDやBlueRayなどの録画機は光で情報を記録しています。このような光で反応する分子を設計するのが光化学の分野の仕事です。通常の化学反応はフラスコ中に入れた溶液を加熱し反応させますが、光化学反応では分子に光を当てることにより、光励起状態を経て、通常の熱反応では起こせない様々な反応を高速に起こさせることができるのです。

 これらの材料を設計する上で光励起状態の分子の「反応論」を解明することが重要になります。

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キラリと輝くキラリティー(山下教授)

| 投稿者: tut_staff

 前稿「生命の起源の謎を解き明かす不斉誘起反応(山下教授)」では、分子のキラリティー(不斉)と生命の起源の謎についてご紹介しました。

 分子のキラリティーを測る手法の一つは旋光度という測定で、その名のとおり、物質に偏光を入射させ物質を透過する間に偏光面が回転する角度を測定します。分子の構造と光は密接にかかわっており、光で分子を反応させることも、分子で光を制御することもできます。

キラリティーは分子の不斉に基づくものなので医薬や香料、化粧品などの生理活性物質の分野でよく研究対象とされていますが、最近では光情報記録や光情報制御などのICT分野で分子のキラリティーが活躍しています。家庭でのインターネット接続も従来のような電気の回線から光ケーブルに変わってきています。従来の電気信号による通信では多くの情報を送るために信号の周波数を高くしなければなりませんが、電気の周波数が最大でGHzであるのに対し、赤外線は100THzもあり、数十万倍ものデータを処理できる能力があります。(GHzやTHzの単位については前稿「It’s a small world ~桁を表す接頭語(山下教授)」 を参照)。

 光で情報を記録したり演算を行う上で、材料の色を情報として記録するというアイデアがあります。しかし材料の色を見るということは材料がいくらかの光を吸収しているということを意味するので、その過程で材料が変化したり光が減衰することが避けられません。一方、先に述べたキラリティーを情報とした場合、光の吸収は起こることなく光の偏光面が回転するだけなので非常に高効率な光情報処理ができるわけです。

 では、光の偏光面の回転はどのようにして観察できるでしょうか?ここでディズニーランド等で見ることができる3D映画を思い出してください。

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ある国際シンポジウムに参加してきました(森本講師)

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 7月の初め、「Supramolecular Chemistry...and beyond !! International Symposium Celebrating 50 Years Labo Lehn」と題された国際シンポジウムが、フランス・アルザス地方の都市ストラスブールで開催され、これに参加してきました。
 タイトルの最後「Labo Lehn」とは、1987年ノーベル化学賞を受賞したJean-Marie Lehn(ジャン-マリー・レーン, 1939年-)教授の研究室を指しています(私は2005年に訪問研究生として在籍していました)。そして、今回のシンポジウムは研究室創設50周年を記念したシンポジウムでした。

 ここで驚くことが二点。一つは、研究室が50年(1965年-)も続いている点。日本の大学だと60代で退官するのが普通なので、どんなに早く研究室を立ち上げたとしても、研究室創設40周年を迎えることさえ稀です。Lehn教授は20代半ばから現在まで研究室を主宰し、今なお第一線で活躍され、海外を飛び回っておられます。

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光で動く材料~フォトメカニカル材料(山下教授)

| 投稿者: tut_staff

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 自動車はガソリンでエンジンを回転させて動きますし、電車は電気と磁石でモーターを回転させて動きます。ジェット機は高圧ガスを噴射して動き、また、生物はATPで組織を変形させて動きます。
 近年、光エネルギーにより動く材料の開発が精力的に行われています。光で発電してモーターを回して動くのではなく、光エネルギーを直接材料の動きに変換する研究で、フォトメカニカル効果と呼ばれます。(右図をクリックしてください。フォトメカニカル現象の具体例です。)

 この研究は化学者にとっては大変魅力的なテーマです。

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「電気化学的脱合金」~リチウムを利用してナノスケールの構造を作る~(西尾教授)

| 投稿者: tut_staff

 近年,「脱合金」による金属微細構造の作製が注目を浴びています.
 「脱合金」(dealloying)は,2種類以上の金属が均質に混ざった合金(alloy)を強酸あるいは強塩基の水溶液に浸漬し,卑金属の成分を選択的に溶解除去する手法です.(“dealloying” の “de“ は接頭語で,attach:くっつける / detach:引き離す に代表される様に,「離れる」,「取り除く」などを意味します.) 適切な条件で脱合金を行うと,残された貴金属に無数のナノスケールの孔が形成されます.近年は,こうしてできた金属の多孔質構造を触媒に応用する研究が活発に行われています.

 脱合金は,ナノスケールの金属加工を容易に行う優れた手法ですが,均質な合金の調製に手間がかかるほか,濃硝酸,水酸化ナトリウムなどの危険な試薬を使います.私は,純金属を出発材料にしたナノスケールの表面加工に関する研究に注力していますが,研究テーマの1つに,リチウムを使った電気化学的脱合金があります.

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光触媒で化学物質をつくりだす(森本講師)

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 触媒とは、それ自身は反応の原料にはならないけれども、起こらなかった反応を進行させたり、遅い反応を促進する作用を持つ物質のことです。ハー バー・ボッシュ法によるアンモニア合成をはじめとする現在の化学工業における重要な反応には、たいてい触媒が不可欠です。また、実験室スケールの実験で も、酸・塩基や遷移金属等を触媒とする反応が日常的に使われ、様々な新規化合物を創り出すための原動力となっています。

 この触媒の一種として「光触媒」と呼ばれる物質があります。これは、光エネルギーを吸収して、それによってある反応を促進する物質です。私たちの 身の回りでは、壁や窓ガラスに光触媒を塗ることで、光エネルギーを使って汚れを分解したり、汚れを防ぐ反応を進行させる、というような応用例があります。 また、植物が行っている光合成は、光エネルギーを使って二酸化炭素を炭水化物に変換するので、一種の光触媒系と見ることもできるでしょう。

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「炭素ー水素結合活性化」って何??(上野講師)

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 私の専門とする有機合成化学では、常に新しい反応が開発されています。その研究対象も時代と共に変化します。そのため、大学で研究している私たちは常に最新の論文を読み、これまで誰にも為し得なかった研究成果を挙げるために日夜研究に励んでいます。

 有機合成化学の分野で、近年特に注目を集めている研究対象に、「炭素−水素結合活性化」があります。化学分野で権威のある国際雑誌の一つであるJournal of the American Chemical Societyは毎週発刊されますが、近頃「炭素ー水素結合活性化」に関連する論文を見ない週はありません。今回は、この「炭素ー水素結合活性化」とは何かということを、これを読んでいる高校生の皆さんに理解できるように紹介して行きたいと思います。

 炭素−水素結合とは、炭素(C)と水素(H)との共有結合であり、ほとんどの有機化合物には複数個含まれる結合です。例として図1にシンナーやマニキュアにも使用されているトルエンの構造式を記しました。これを省略せずに書くと図2のようになります。ここには、8個の炭素ー水素結合が含まれていることが分かると思います。有機合成化学では、こういったある分子を、医薬品や材料など価値のある別の分子に変換することを研究する学問です。ここで、トルエンのある炭素ー水素結合を別の結合に置き換える事を考えてみると次の二つの大きな問題があります。1つ目に炭素ー水素結合は他の結合よりも多くの反応試薬とは反応しにくい、2つ目に複数の炭素ー水素結合をもつために望みの炭素ー水素結合だけを変換することは困難であることです。世界中の有機合成化学者たちは、この二つの課題を克服するために、それぞれ独自の「解決法」を発見し、それが毎週のように論文として報告しているという訳です。

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本学のリグニン利用技術が国家プロジェクト(戦略イノベーション創造プログラム)に採択されました。(山下教授)

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 現在の有機材料のほとんどは石油から合成されたものです。もし石油がなくなったらどうしますか?ガソリンなどのエネルギーは太陽光や原子力などの他のエネルギーに替えることができますが、医薬品の原料や構造材料などに変わる新しい資源をつくる技術が求められています。


 我々の身の回りにある樹木は豊富な天然資源の一つです。樹木の成分としてセルロースはよく知られています。樹木中に30~40%程度含まれ紙などに加工されています。セルロースは糖が沢山結合した構造をしています。一方、樹木中にはリグニンという物質が30%程度含まれています。リグニンはポリフェノール構造をしており、すなわち石油由来の物質と同じく芳香環をもつ構造をしています。これまで製紙工場ではリグニンは不要物として捨てられていましたが、これを有効利用できれば資源問題、廃棄物問題を一気に解決できることになります。

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