書評

テレビ番組への感想 NHK 「チコちゃんに叱られる」(片桐教授)

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 正月の夜に「ぼ〜っと」テレビを見ていたら、テレビから「ボ〜ッと生きてんじゃないよ」と叱られた。

 「チコちゃんに叱られる」という番組は、いろいろなうんちくを教えてくれる情報バラェティ番組です。つかれた時に「ぼ〜っ」と見るのに適しています。

 先日、その番組で面白いネタをやっていました。「シャボン玉を割らずに手でバウンドさせる」というものです。

 軍手をはめてシャボン玉を紙風船のようにポンポンと手で弾ませることができることを、私は知りませんでした。

 この回では東京理科大学の川村教授が専門家として、シャボン玉の割れる3つの理由、①ホコリやチリにあたる、②水分の蒸発、③重力により液が偏る、ことを解説し、それを防ぐシャボン玉液を使い軍手をはめた手の上で17回もバウンドさせていました。

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忘れようとしても思い出せない映画「あの高地を取れ」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「忘れようとしても思い出せない映画」というのは「昔観て印象に残っているが、映画のタイトルなどが思い出せない映画」のこと。折に触れてシーンやストーリーの断片を思い出してしまって気になって仕方がないけれど肝心の映画のタイトルが思い出せない。いっそ忘れてしまいたいほどだ、とううわけです。映画評論家の町山智宏氏がネットラジオで読者から投稿された映画の断片的な情報を元に映画のタイトルを言い当ててみせる、というネタをやっていて、そのときのタイトルがこの「忘れようとしても思い出せない映画」でした。

 私にとっての「忘れようとしても思い出せない映画」は

アメリカの軍事教練キャンプに新兵達がやってくるが、全くダメダメ。「全体進め」で歩いても隊列はすぐにバラバラに。でも数往復で見事な行進をキメて、教官は涙ながらに「おまえ達は俺の誇りだ!」

というもの。いや、いくら何でも安直だろう。それに映画なのに数分で終わっちゃったよ。

 実はこれ、TVでこの映画を観ながら私が眠ってしまって映画の頭と終わりしか覚えていないわけです。一体この間に何があったんだろう。どうしても気になって「忘れようとしても思い出せない映画」となったのです。

 なんて話をしたのが昨年のお正月。そこで兄から、それは「あの高地を取れ」という映画だよ、と教えられて長年のモヤモヤがはれました。早速DVDを買って鑑賞することに。
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BS1スペシャル「コロナシフトでつくる日本の未来 デジタル」を観て(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回紹介するのはNHKのBS1で放送した番組

BS1スペシャル

「コロナシフトでつくる日本の未来 デジタル」

です。

 落合陽一氏をキャスターに迎え、コロナ禍で明らかになった日本の課題を探る、というシリーズの1作目。本放送は2021年12月3日でしたが、私が見たのは12月19日の再放送(の録画)です。

 「NHKの企画力はスゴイ!」とは先のブログで「魔改造の夜」を表した片桐教授のご感想ですが、残念ながらことこの番組について、私はNHKについて厳しい意見を言わざるを得ません。というか、この「BS1スペシャル」は一体誰に向けた番組なのか、少し考え込んでしまいました。

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テレビ番組への感想 NHK BSプレミアム 「魔改造の夜」(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 最近のNHKの企画は規格外でスゴイ。「魔改造の夜」は年に2回?だけ新作の放映される番組ですが、ある意味「大人のロボコン」いや「プロのロボコン」です。一流企業や技術を誇る企業のエンジニアが、極めてばかばかしい競技課題に挑むというものです。指定された元マシン(おもちゃだったり家電だったり)、その機能を局限まで問う競技です。それに対して、どこまでも知恵を出して極限的なスペックを示すマシンを作る番組は、すごい企画です。企画力です。NHKすごい!。https://www.nhk.jp/p/ts/6LQ2ZM4Z3Q/

 ポップアップ・トースターのパン高飛び、お掃除ロボットの走り幅跳び、ワンちゃんおもちゃの25 mレース、扇風機50m走などなど、その詳細は私にはことばで表現できません。しかもそこへ一流企業のエンジニアが(おそらく)まじめに総力をあげて取り組む姿には,感動を憶えます。上記NHKのホームページの解説でもその雰囲気や番組の「魔力」は伝え切れていません。

 そして、会社名を伏せ字にしているようで全然隠していないところがまたすごい!。山口百恵が「緑の中を駆け抜けてく真っ赤な「車」」と紅白で歌っていた頃を思うと隔世の感があります。

 ワンちゃんおもちゃの競争では世界のTヨタのエンジニアが、その素晴らしい美的センスでかわいいわんちゃん人形をケルベロス化していました。

 またお掃除ロボットの走り幅跳びではH田技研の改造により、飛び上がった瞬間に変形していました。それはロボットアニメのワン・シーンを見ているようでした。

 赤ちゃん人形の綱上りではN産自動車が「やっちまったぜN産」してました。

 参加している組織は大企業だけではなく、ユニークな技術を誇る町工場や大学など多彩です。

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「SFパニックドラマの超有能なイケメン官僚に転生してしまった件」じゃなくて「日本沈没 希望の人」の感想(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「日本沈没」は小松左京氏のSF小説で1973年に刊行後すぐに大ヒット。同年に映画化されてこれもヒットし、引き続き翌年にはTVドラマ版も放送されました。私より上の世代には耳慣れたタイトルなので、これが新たに映像化、TVドラマになると聞かされてはどうしても見てしまいます。小松左京を今リバイバルさせるなら「復活の日」じゃないか、とも思いますが、あれはいくら何でも生々しすぎて無理ということなのでしょうか。

 ということで、全9話見て思うこと。この「日本沈没 希望の人」の「日本」、いくら何でも現実の日本と違いすぎです。現実の日本の人口一億二千万人の一万分の一くらい、きっと一万二千人くらいの人口で、面積も本当の日本の一万分の一くらいにしか見えません。(いや、作中で「二千万人の移民受け入れが決まった、あと一億人だ」というセリフがありました。きっと人間については一人を一万人と数える特殊な風習のある異世界なのでしょう。)たまたま現実世界の日本と同じような形をした島国ですが、あれも偶然の一致にちがいない。

 人数の規模感についてもさることながら、このドラマでは物理現象としての「日本沈没」と、それを予測する「科学」のあり方が現実の私達の世界と根本的に異なっています。現実世界の科学は「分からない」という前提からスタートして現実と格闘しながら利用可能な仮説を組み立ててゆくものです。繰り返しの多い現象なら比較的容易に予測が可能になりますが、希に起こる現象の予測は困難を極めます。日本の沈没というような現象(たとえそれが一万分の一の面積でも)は作中でも前代未聞の現象とされているのですから、現実の科学であるなら正確な予測などできるはずもありません。

 これを確信を持って予言する人間は精神に変調をきたしている可能性が高い。でもこの世界ではその予言が本当のことになってしまうのです。変調をきたしているのは世界の方か。と言うか、この物語世界は我々の世界とは異なった物理法則によって支配されているのでしょう。

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「日本沈没」のサイトのトップページなのに人の顔の写真ばかり。爆発する富士山もくずおれた東京タワーもない。これだけで今回のドラマの作り手の姿勢が分かるというものです。

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「アナと雪の女王2」っておかしくないですか?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 私は「アナと雪の女王2」は公開当時(2019年の暮れだったかと)に見に行きました。その際の私の印象は、これは一言いわねばならん、でした。とはいえネタバレ無しで書くのは難しい。そう思って我慢していたのですが、先頃TV放映が有ったそうなので疑問を吐き出そう、というのが今回の趣旨です。あっ、「アナと雪の女王2」がディスられるのが耐えられない人はここまでにしておきましょう。

 まずはネタバレ無しで大まかなお話しから。大ヒットした「アナと雪の女王」の第一作目は素晴らしい音楽の魅力もありましたが、ストーリーが斬新で、今までディズニーが作ってきたプリンセスの物語とは明らかに違う、というのも人気の理由の一つだったと思います。

 とは言え、良く考えて見ると「アナと雪の女王」第一作はほとんど従来のプリンセスの物語をなぞっています。見ている私達は大体こうなるだろうと予測しながらみることになる。そして最後の部分でその予測を裏切ることで「今までのとは違う!」という新鮮な驚きを与えることに成功したのだと思います。

 その第一作を引き継いだこの「アナと雪の女王2」ですが、今度ははじめから「今までのとは違う!」ことをばかりなのです。新鮮な驚きを感じる以前に、物語は一体何の話をしているのか理解不能な状態に。どうして「これ」をすると「あれ」になるのか、斬新過ぎてよく分からない、という感じなのです。

(以降には「アナと雪の女王2」のネタバレを含みます。)

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書評 りょうしりきがく for babies サンマーク出版、2020 サイエンス・コミュニケーターを目指す人の必読書…かな?(片桐教授)

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 本年度も後期の量子化学の講義が始まりました。毎年、第1回は量子力学の誕生の歴史の解説を行ない、その課題として「前期量子論に最も貢献したのは誰か?」という課題を出します。
 今年の一番人気はやはり「プランク」で62%の受講者に支持されました。次点は「アインシュタイン」の17%、3位は「ボーア」の12%でした。

 さて、この量子化学の第1回をその誕生の歴史から始めるのは、学生さんたちの多くがニュートン力学を引きずっているからです。マクロの世界を記述する「力を基盤とする」ニュートン力学の不都合と克服から「エネルギーを基盤とする」量子論が生まれてきたことを理解してもらい、マクロの世界の物理がミクロの世界に通用しなかったという歴史的事実を理解してもらうことから始めるためです。我々マクロの住人には、生活感覚で力は理解できても、エネルギーを理解することは困難です。生活感覚で量子の世界を理解することは極めて困難です。

 そのような講義をどのようにすすめれば、学生さんにわかってもらえるか、を考え、ネットであれこれ調べている時に、『クリス・フェリ−著「りょうしりきがくfor babies」サンマーク出版、2020年』という絵本の存在を知りました。「大学生に教えることの難しい量子論の幼児向け絵本?」「なんじゃそりゃ?」と興味をひかれました。早速、アマゾンでポチりました。

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映画「赤ちゃんよ永遠に」の描くディストピア(江頭教授)

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 「赤ちゃんよ永遠に」は以前このブログで紹介した「ソイレント・グリーン」と同じくディストピア(ユートピアの反対。悲惨な未来。)を描いた映画です。1972年制作のイギリス映画で「ソイレント・グリーン」の一年前、ほぼ同時期に作成された映画であり、当時のアメリカやイギリスの人々が考えていた未来の姿を反映したものと言えるでしょう。

 正式な日本語タイトルは「赤ちゃんよ永遠に SFロボットベイビーポリス」となっていますが、原題は「Z.P.G.」。これは「Zero Population Growth (人口増加ゼロ)」の略です。

 さて、この映画は

舞台は近未来のある都市(のちにロサンジェルスであることが示唆されます)。スモッグで視界の限られた街の上空を浮遊するマシンのスピーカーから「大統領の重大発表がある」とのアナウンスが流されています。その発表の内容は「環境破壊と資源枯渇はすでに限界に達しこれ以上の人口増加は許容できない状態にある。そこで、これから30年間、すべての人々に対して出産を禁止する」という決定でした。それから8年、子供を持つことをあきらめた夫婦はこどもをまねたロボット、体温があり、子供のかかる病気にはすべて罹り、でも必ず治るように設計されている、という人形の世話をしながら寂しさを紛らわせていたのです。時には隠れて子供を作る夫婦もいますが、やがて密告されて「全人類に対する罪 ( 原語での humanity に対する罪、というのが皮肉に聞こえます)」で公開処刑の運命が待っています。依然としてスモッグに包まれたその都市で、ある夫婦もまた子供を作ることを決意するのですが…。

という内容です。

 さて、この映画の世界設定もまた映画「ソイレント・グリーン」と同様に極端に物資が不足した社会を描いていて、奇しくも同じ1972年に発刊された「成長の限界」(詳しくはこちらを)の示した未来予想に連なるものです。当時の「飽食の生活」が持続可能ではないことを薄々感じていた人々がそれぞれに物資不足のディストピアを想像して物語をつくったのでしょう。

 

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書評「マイケル・サンデルの白熱教室 エリートたちよ 君の成功は努力の結果?それとも運?」(その2)(江頭教授)

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 前回に引き続き、の2021年7月24日に放送された「マイケル・サンデルの白熱教室 エリートたちよ 君の成功は努力の結果?それとも運?」という約2時間の番組についての紹介です。なお、今回私が見たのは再放送で本放送は2021年の7月4日から行われていたようです。

 今回のタイトルは「マイケル・サンデルの白熱教室 エリートたちよ 君の成功は努力の結果?それとも運?」とありますので、アメリカ、日本、そして中国のエリート達がサンデル教授の議論の相手となっています。前半のコロナ禍についての話題から、後半ではいよいよこのタイトルの内容、「エリートの成功は努力の結果?それとも運?」なのか、という問いかけへと進んでゆきます。

 少し驚きましたが、この問に「努力の結果」だ、と応える人は中国の若手エリートでは6人中4人、アメリカでは6人中2人なのに対して、日本では6人中0人、全くいなかったのです。まあ、日本人特有の謙遜なのかも知れませんが、それにしても極端な。サンデル教授がそれぞれの意見を聞いてゆくと、中国の若者達の猛勉強ぶりが際立ってきます。中国の若者達は猛勉強によってエリートの地位を手に入れた。そのことが彼らの意見、「エリートの成功は努力の結果だ」という結論につながっているのでしょう。

 では日本の若手エリート達はどうなのでしょうか。私が大学を受験する頃には(正確にはその少し前には)、日本にもちょうど今の中国の若者達が語ったような「受験戦争」と言うべき現象がありました。でもそれも今では昔の話でしょう。

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書評「マイケル・サンデルの白熱教室 エリートたちよ 君の成功は努力の結果?それとも運?」(その1)(江頭教授)

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 マイケル・サンデルの白熱教室については以前「マイケル・サンデルの白熱教室2018」について書きました。今回私が見たのは今年(2021年)7月24日に放送された「マイケル・サンデルの白熱教室 エリートたちよ 君の成功は努力の結果?それとも運?」という約2時間の番組です。なお、これは再放送で本放送は2021年の7月4日から行われていたようです。

 最初の「白熱教室」の放送は2010年だったでしょうか。講堂一杯の学生と討論形式で進めるという授業形式はなかなか高度なもので、私の周りでも話題になった記憶があります。

「なるほど...。君の名前は。」

と学生に名乗らせて、その名前を覚えて議論を展開してゆく臨場感に、私もワクワクしたのを覚えています。

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