解説

植林サイトをドローンで観察(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回もオーストラリア出張でのお話。今回は預け入れ荷物で引っかかったドローンを使った時の話です。

 まずは目視でドローンを飛ばしながら適当な風景をパチリ。植林された樹木が列になっている様子がよく分かります。植林してから2年と少し。ユーカリの木がだんだん育っていることが実感できます。

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 さて、このような少し上空からみた風景、その場で目視する風景から想像はできるのですが、ドローンを使えばちゃんと写真として共有することができる。やはりドローンは便利な道具だと思います。

 そして、ドローンのもう一つの使い方は我々が普段見ることのできない高度からの映像だと思います。我々の植林サイトをより高いところから見たらどう見えるのだろう?高度100mからの映像がこちらです。

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樹木の二酸化炭素固定量はどうやって測定するのか?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回もオーストラリア出張でのお話。今回はフィールドで木を切り倒した話を紹介しましょう。

 今回に出張の大きな目的の一つがこの「伐倒調査」でした。チェンソーで木を切り倒して枝と幹をバラバラに。枝から葉を一つ残らず引きちぎって…、動物で考えれば猟奇的な行為ですが樹木が固定している二酸化炭素の量を測るためは必要な作業なのです。

 皆さんは「一本の木を植えれば○○kgの二酸化炭素を大気中から取り除くことができます」とか「この森には○○トンの二酸化炭素が固定されています」と言った話を聞いたことはありませんか?でもどうやってその量を測ったのでしょうか。

 手に乗るような小さなものなら重さを量って組成を分析すれば炭素の含有量を決定できます。これに44/12を掛ければ固定されている二酸化炭素量を求めることができます。一方、量が多くても均一なものなら一部をサンプリングして同様の手順で二酸化炭素量を決定できるでしょう。

 でも森や木についてはどうすれば良いのでしょうか。

 木を切り倒して全部の重量を量る。単純ですが最後はこれしかないでしょう。実際、伐倒調査では切り倒した木をバラバラにして吊りはかりで重さを求めました。結構大変な作業ですが、これだけで終わりではありません。

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ガソリン車は電気自動車はよりクリーンではないのか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回に引き続いて電気自動車とガソリン車の比較です。「クリーン」の解釈は今回も温暖化に注目して、「ガソリン車 は電気自動車よりCO2排出量が多いか」とします。前回は「化石燃料をエネルギー源とした場合」としましたが、今回はこの制限を取り払って考えてみましょう。

 電気自動車は走行時にはCO2を排出しませんが、これに対してガソリン車は走行時にCO2を排出します。走行時だけをみればガソリン車は電気自動車はよりクリーンではないのですが、システムをトータルでみると、あるいはライフサイクル思考を前提とすると、これだけでは判断できないことがわかります。

 極端な比較としてガソリン車をバイオマス由来の燃料で、電気自動車を化石資源由来の電気で動かしたとするとガソリン車から排出されるCO2はバイオマス成長時に吸収されたCO2とつり合う(オフセットされる)ので、ガソリン車がCO2フリー、一方で電気自動車がCO2を排出する、という状況も考えられます。

 

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電気自動車はガソリン車よりクリーンなのか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 まずは前回と同様、「電気自動車はガソリン車よりクリーンなのか」と問うなら、まずクリーンとはどういうことかを明らかにする必要がありますよね。クリーンということが窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を出さない、ということなら「YES」ですが、今回は温暖化に注目して、「電気自動車はガソリン車よりCO2排出量が少ないか」と言い換えることにしましょう。これでも問いとしてはあいまいなので、もっと限定的に「化石燃料をエネルギー源とした場合」とします。要するに石油を出発点として自動車が走るという結果を得るとして、自動車と電気自動車のどちらが効率的なシステムなのか、という問いに言い換えることができるでしょう。

 いつものことですが答えは「ケースバイケースです」となりますが、まずは現在のガソリン自動車のシステムとくらべて電気自動車のシステムのどこにメリットがあるのか、と考えてみたいと思います。

 ガソリン車の基本部品はエンジンで、ガソリンが燃焼するときに放出されるエネルギーを直接運動に変えています。つまり、

化学エネルギー → 運動エネルギー

の1段階の変換システムです。

 一方、電気自動車の基本部品はモーターで電気を運動に変える。化石燃料がエネルギー源だとすると電気自動車は化石燃料から電力へ変換する発電所ももう一つの必須要素だといえます。そう考えると、

化学エネルギー → 電気エネルギー → 運動エネルギー

となり、電気自動車は2段階のエネルギー変換を必要とするシステムです。より正確にはバッテリーでのエネルギー変換も考えて、

化学エネルギー → 電気エネルギー → 化学エネルギー → 電気エネルギー → 運動エネルギー

という充電と放電を加えた4段階のシステムというべきかもしれません。

 一般的にはエネルギーの変換にはロスがつきものですから、変換の段階の数を少ない方が効率的なシステムになると期待できます。そう考えるとガソリン車の方が効率的で結果としてクリーン、ということになりそうです。

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電気自動車はクリーンなのか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 電気自動車はクリーンだ、というイメージを多くの人が持っている、と言ってもそれほど異論は出ないのではないでしょうか。とは言え、「電気自動車はクリーンなのか」と問うなら、まずクリーンとはどういうことかを明らかにする必要があります。

 走行時に窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を排出しない、という意味でクリーンというならばこれは明白でしょう。ガソリン車やディーゼル車でこのような物質が発生するのは燃料に含まれる不純物や窒素と酸素が反応するほどの高温状態が存在するからであり、電気自動車にはそもそもそんなものはありません。排気ガスのにおいも気にする必要はありませんし、まして中毒になる危険もありません。この意味でなら「電気自動車はクリーンだ」といえると思います。

 では、グローバルな環境問題から考えて電気自動車はクリーンなのでしょうか。より具体的に言うなら、電気自動車からのCO2排出量はガソリン車より少ないのでしょうか。

 

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聖火と炎色反応(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 7月24日の朝、新聞の一面にオリンピックについてのニュースが。そうか、オリンピックまであと一年か。で、今回の聖火は水素燃料で灯すのだとか。

 水素じゃ炎が見えないじゃん。

まあ、化学の先生ならだれもが突っ込むところです。

 水素が燃える際の炎は薄い青色で、いわゆる聖火のようなオレンジや黄色の炎にはなりません。あのオレンジ色は実は炎の中の炭素の粒が発光しています。なんで炭素の粒が?それは燃えるガスに炭素原子を含む分子が含まれていて燃焼に際して炭素が粒子として析出するのです。

 高校生の皆さんの中にも都市ガスを利用したブンゼンバーナーを扱ったことがある人がいるかもしれません。空気不足の状態ではオレンジ色の炎がでます。炎の内部は酸素不足の部分があって、そこで炭素が析出。その粒子が光るわけです。空気の供給を増やすにつれてオレンジ色は消え、青白い炎になりますが、これは炎の中の酸素不足の部分がなくなったことを反映しているわけです。

 水素が燃料の場合、もともと炭素が含まれていない以上、炭素の析出もなく、炎に色がつかない。結局青白い炎で聖火と言うより昼行燈になるのでは…。

 記事の続きには「添加剤を使うことで、赤や紫、緑など様々な色の炎を作り出せる」と書いてありました。

 

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おっと、件の新聞記事はネット非公開になっていました。

 

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少し真面目に食料安全保障を考えてみる(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 日本は食料を自給できていない国で海外から食料を輸入しています。「それではダメだ。食料の自給率を上げるべきだ。」という話もあるのですが、それは非常時に合わせて日常を制限することになって本末転倒ではないか。まるで「電車が止まったら困るから歩いて行けるところに就職しよう」という様な話だと思います。とはいえ、何かの理由で海外から食料が輸入できなくなったらどうするのか。これが今回のお題、「食料安全保障」の意味です。

 農林水産省のホームページには「食料安全保障について」というページがあり、その中で「不測時の対応」として「緊急事態食料安全保障指針」という資料が公開されています。

 なるほど、農水省も自給率アップを呼びかけるだけではなくて本当に危機的な状況になったときのことを考えているのか、というのが最初の印象です。食料の輸入が難しくなる状況に対応して、レベル0、レベル1、レベル2の三段階の対応を想定しているとのこと。レベル0は食料輸入に問題が生じる可能性が予見された場合。つまり、問題がありそうだから情報を集めようか、という段階です。レベル1は本当の危機が起こった場合。そして食糧不足で飢餓がおこる危険性がある場合がレベル2だ、といったところでしょうか。ちなみにレベル1までの「不測の事態」は過去に実例がある(米の凶作と米国による大豆の輸出制限)とのことですが、レベル2はさすがに「前代未聞」のようです。

 レベル0はともかく、食料が輸入できない、という事態をレベル1とレベル2に区分して考えるのは非常に良いことだと思います。

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省エネを実現する仕組み「トップランナー制度」ーその2ー (江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 一般の人が省エネルギーや地球温暖化対策に貢献したいとき、どうすれば良いか。一つは「我慢すること」ですが、それには限界がある。可能な範囲で我慢したとして、さらにエネルギー消費を減らすには省エネ機器を導入するのが有効だろう。

 ここまでは誰もが納得できる考えではないでしょうか。でも省エネ機器を入手するためには、まず省エネ機器が売っていることが必要です。そのため政府は省エネ機器の開発を促す政策をとっていて、それが「トップランナー制度」です。

 トップランナー制度ではいろいろな機器の供給者に対し、製品ごとの省エネルギーの目標値を示し、その目標値を達成するように促しています。前回はその目標値の設定の仕方について、省エネルギーの目標値が製品のそれ以外の価値に対する評価に歪みを与えないように定められている事を説明しました。同じ機能の製品には同じ目標値を設定する。逆に言えば機能が違えば目標値も変わる、ということです。例えばTVについて、全てのテレビに同じエネルギー使用量を目標値として設定してしまうと小さいテレビの方が有利になってしまう。だから目標値はサイズ毎にエネルギー利用効率で決める、といったことです。

 さて、ここまでの話は相対的な目標値の設定に関するお話です。では目標値そのもの、絶対的な値をどのように決めるかというのが今回のお題です。

 まず、前提として目標値達成するとはどういうことか。目標値を「合格の基準」のようなものだと考えてみましょう。たとえば「テストで60点以上は合格、60点未満は不合格」という決め方。この場合、目標値は60点で、最低の基準を定めています。全ての学生がこの成績を満たす必要があり、少しでも基準を下回ればその科目は不合格になります。

 「トップランナー制度」も当然そうなっている、と思われる方も多いかと思いますが、実は「そのメーカーの製品が平均で目標値をクリアすればOK」という制度になっているのです。

 学校で言えば「クラスの平均点が60点以上なら全員合格」とか「期末試験の平均点が60点以上の人はその学期全部合格」とかでしょうか。なんとも変な制度の様にもみえます。でも「トップランナー制度」の目的は目標に到達しない製品を市場から追い出すことではありません。あくまでのメーカーによる省エネ機器の開発を促すことなのです。平均が目標を達成することができたなら、そのメーカーには目標レベルの製品を作る能力がある、ということになりますよね。

 

 

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(図は「省エネ性能カタログ」(資源エネルギー庁)より)

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省エネを実現する仕組み「トップランナー制度」ーその1ー (江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 サステイナブルな世界を作るため、いま一番大きな問題は化石燃料由来の二酸化炭素の放出による気候変動への対応である。これには多くの人が同意してくれるのではないでしょうか。では、私達が個人として実践できることは何か。すぐ思いつくのは省エネ機器の導入なのですが、これを政策的に進めるにはどうするのか、というか今現在どのように省エネ機器の導入が進められているのか、というのが今回のお題です。

 たとえば「新しいテレビを買う」場合、省エネのためにどうすれば良いのでしょうか。今と同じサイズのテレビを買うより、より小さいテレビを買う方が省エネですよね。大型テレビを買おうなんてもってのほかです。でもちょっと待ってください。そもそもテレビってそんなに必要なのでしょうか。これを機にテレビをなくしてしまった方が省エネですよね。

 政府としては省エネルギーなテレビの開発を促すべきですが、それ以上にテレビの廃止をすすめるべきではないでしょうか。電波利用を規制してテレビ放送ができないようにすれば簡単に目的が達成できます。

 これは凄いアイデアです。なんでテレビに限る必要があるのでしょうか。エネルギーが消費されるのはそもそも人間がいるからです。一番良いのは人間そのものを減らすことです。「全宇宙の半分の生命を消し去る」のはちょっと大変そうなので、さしあたり人口を半分にしてはどうでしょうか。それを達成したらもう半分。さらに半分にして...。

 まあ、冗談はさておき、このように考えると「地球に優しくする」ことが目的であっても政府にはできないこと、やってはいけないことがあることが分かると思います。

 「省エネ機器を普及させる」という政策目標が議会の承認を得たとして、その目標を実現する際に、人々の他の面での選択(テレビを見るかどうかから、どんなサイズのテレビを所有するかまで)に影響を及ぼしてはならない。少なくとも影響を最小限に抑える努力をしなければならないのです。

 

 さて、テレビの省エネ化を進めるために、実際はどのような政策がとられているのでしょうか。資源エネルギー庁が公開している「トップランナー制度」という資料に基づいて紹介しましょう。 

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世界のエネルギー起源のCO2排出量の動向 ―2016年アップデート版―(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

(以下の記事は2018年7月3日の記事「減少する世界のエネルギー起源のCO2排出量」のアップデート版です。)

 地球温暖化の作用をもつガスはいろいろありますが、人間の活動によってもっとも大量に排出されていて、地球環境にも大きな影響を与えているガスはCO2であるということは良く知られています。なぜCO2ガスが排出されるのか、それは現在の社会では十分なエネルギー供給のためには化石燃料の利用が不可欠だから、ということも知られていると思います。

 では、その化石燃料から発生するCO2ガスの量はどのぐらいなのでしょうか。エネルギーに関する国際機関のIEA ( International Energy Agency ) から正にその点についてまとめた資料が出ています。

”CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION”

この資料はIEAのWEBサイトのこのページに記載があります。正規の報告書はダウンロード販売されていますが、概要(OVERVIEW)は無料でダウンロードできます。(IEAへの登録が必要。)

 2018年版の資料では2016年までのデータが整理されています。世界の総排出量は 32.31 GtCO2 、つまり 323億1千万トンとなります。日本の温室効果ガス排出量の約30倍で、やはり非常に大きな値というべきでしょう。

 排出量の2015年の値は32.28Gtで2016年の値はごくわずかに増加していますが、ほぼ変化無しと言って良いでしょう。昨年度報告された2015年の排出量はと比較すると 0.1% の減少だったのですが、その傾向は続かなかったということのようです。

 同資料の概要から以下の図を見てみましょう。

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