解説

温室効果ガスの単位として「二酸化炭素○○g」というのは適切か(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今学期(2020年度一期)、授業のかなりの部分がオンラインとなっているのですが、オンライン授業では必ず質疑応答の場が必要、とのことで私が一部担当している「サステイナブル工学基礎」の授業でも質問コーナーを準備しました。いろいろな質問をしてくれる学生さんがいたのですが、その中の一つに

 温室効果ガスの単位として「二酸化炭素○○g」は分かりやすいのでしょうか?

という趣旨の質問が。カーボンフットプリントの表示を見たことがあって、そこで「二酸化炭素○○g」という表示に違和感を感じた様です。

 質問してくれた学生さんは応用化学科の所属の様で、確かに化学の人間からすると「二酸化炭素○○g」というのはあまり聞かない表現で、普通はモルで表現するのではないでしょうか。二酸化炭素は通常は気体ですから「二酸化炭素○○L(リットル)」というのもありでしょう。あるいは通常固体である炭素を基準にとって「炭素○○g」というのも据わりが良い感じがします。

 でもこれは仕方がないのでは。なぜならカーボンフットプリントの「二酸化炭素○○g」は別に二酸化炭素そのものを示していないからです。259environmentillustration

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やっぱり log の底は10だよね、という話(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 ずいぶんと昔ですがこのブログに「logの底はいくつですか?」という記事を書きました。

高校では log(x) は自然対数の事だ、と習ったかも知れませんが、世の中では自然対数は ln(x) と書きますよ。

というのが一つめの要点。もう一つは

log(x)は普通は10底の対数のことですよ。

という事でした。

 自然対数を log(x) だと思って電卓で計算して間違った学生が多数。「これだから最近の若い者は」と思っていたら、実は高校の教科書で「 log(x) は自然対数のこと」と教えていた、という私にとっては衝撃の事実があって書いた記事です。最近ふと思いついたのですが、この log(x) を自然対数とする、という「文化大革命」ならぬ「数学小革命」は一体どのくらい世界で受け入れられているのでしょうか。

 そう思って調べたのは「amazon.com」のサイトです。co.jpじゃなくてcomですから、本家アメリカの巨大通販サイトですね。

 電卓、それも少し高級な関数電卓では log はどのような意味で使われているのでしょうか。日本でいう「関数電卓」に相当するものは英語では「scientific calculator」と呼ばれるようです。いろいろな製品が並んでいました。「CASIO」の製品も目立ったのですが、ここはアメリカンに「Texas Instruments」製品を見てみましょう。

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クーラーを使うと温暖化が進むのか?その2(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回のブログ記事では「クーラーを使うと温暖化が進むのか?」と題してクーラー一台分のエネルギー消費、約100Wの人工熱によって地球がどのくらい暖まるのかを概算してみました。計算過程は元の記事見てもらうとして、結果は2.47×10-13 ℃ 、「四兆分の1℃」でした。これは温室効果の影響を計算したものではなく、どちらかと言えばヒートアイランド現象(の一部)に類似した効果です。(ヒートプラネット現象とでも呼びましょうか。)

 さて、今回の記事では本命の?温暖化の効果を考えてみましょう。まず、100Wの電力を使用するとどのくらいのCO2が出るのか、というお話し。これは「電力のCO2原単位」と呼ばれる数値ですが、最近は「CO2排出係数」の方が通りが良い様子です。日本の電力会社はこの値を公開していて、たとえば東京電力はこちらのプレスリリースで「2018年度の当社のCO2排出係数は、0.455kg-CO2/kWhでした。」と報告しています。

 100Wの電力を一年間使ったとすると電力量はkWhに換算して 876.6 kWh となります。これと排出係数から年間のCO2排出量は約 400 kg-CO2 と計算されます。

 さらに、こちらの記事で紹介した IPCC の「1.5℃特別報告書」によれば、詳細な因果関係は別として「1GtCO2の二酸化炭素を排出すると 5×10-4℃ の温暖化が起こる」という関係が成り立っていると言います。

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クーラーを使うと温暖化が進むのか?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 クーラーは部屋の中の熱を室外にくみ出す機械(ヒートポンプ)です。でもくみ出された熱が消える訳ではないから、地球が暖まってしまう...。なんて思ったことのある人、居ませんか?

 部屋からくみ出された熱は冷房を止めればすぐに部屋に戻ってきます。でも、部屋から吸い取る熱に比べて部屋の外に吐き出す熱の方が多い。これは熱力学の第二法則から避けられない現象です。最近のクーラーは効率(COPとかAPFとか言うべきですね)が良くなったとはいえ、部屋からくみ出された熱の6分の1程度の熱はクーラーを使ったことによって地球に吐き出された熱だということになります。

 では、この熱で地球はどのぐらい温暖化するのでしょうか。凄く小さいのは判っているのですが、はて具体的にはどのぐらい小さいのか、ちょっと計算してみようというのが今回のお題です。

 クーラー、というかエアコンを一台使っていると大体100W程度の電気エネルギーを消費するといいます。これが全部熱に変わって地球を暖めるとしましょう。

 以前の記事では地球の熱のバランスに新たに QH [W]の人工熱を加えると、その影響で変化する地球の温度 Δ

ΔT ≒ 1/4 T (QH/QS)

と評価されることを紹介しました。ここで T は地球の温度で 300K としましょう。QS は太陽から来るエネルギー でアルベドを考慮した値で 3.04×1016 Wです。QH = 100 W として値を計算すると

ΔT ≒ 2.47×10-13 K

となりました。

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二酸化炭素排出量と温暖化(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 大気中に排出された二酸化炭素によって温暖化が起こる。その因果関係について、以前は議論があったものの今は広く受け入れられているといって良いでしょう。ではもっと定量的に大気中にどの程度の二酸化炭素を排出したら何度温度が上がるのか、その関係を定量的に評価することはできないでしょうか。

 二酸化炭素の排出量から大気中と赤外線との相互作用を定式化し、地表と海のエネルギーと温度のやり取りもまた定式化し、それらの関係を適切扱いつつシミュレーションをする。もちろん、そのような試みは世界中で進められてきたのですが、どうにも複雑なモデルとなってしまいます。そのため、専門家以外がその内容について理解し、適切さを判断することは難しいでしょう。このような、いわゆる正攻法のアプローチではなく、もっと端的に温暖化の現状と将来予測を理解したい、そのような考えから導き出されたのが「二酸化炭素の排出量を横軸に、温暖化により温度変化を縦軸にとったグラフ」で考える、という方法です。

 以下に示した図はIPCCが作成した「Global Warming of 1.5 ºC」という特別報告書( Special Report )に示されているグラフです。この報告書(「1.5℃特別報告書」)は2018年の出版です。2015年のパリ協定で産業革命以後の温度上昇を2.0℃以内にとどめよう、できれば1.5℃に抑えよう、という決議がなされたわけですが、具体的にどの程度の温室効果ガスの削減を行ったらその目標が達成できるのか。それを具体的に示すことがこの報告書の目的だったのです。

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エアコンの電力消費は大きいか小さいか (江頭教授)

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 前回の記事ではエアコンの「期間消費電力量」から典型的なエアコンの電力消費速度が大体100W程度になることを紹介しました。この100Wという数値を「電球一個分」と表現したのですが、はて、 この数字は大きいと見るべきなのか、それても小さいと考えるべきなのでしょうか。

 大きい小さいという議論であれば当然基準が必要です。○○と比べて大きいとか小さいとか、ですよね。

 どんな基準が良いでしょうか?大きな所で日本のエネルギ-消費量を基準としたらどうでしょう。資源エネルギー省の「エネルギー白書」2020年版の「第2部 エネルギー動向 第1章 国内エネルギー動向 第1節 エネルギー需給の概要」に付属の表にそのデータがあります。日本の2018年度の最終エネルギ-消費は 13.12 X 1018 Jだそうです。年間の値ですからエネルギーの消費速度に換算できますね。一年間つまり3155万秒で割り算すれば 4.16 X 1011 W となります。100Wはその41億分の1ということになります。

 うーん、まだ大きくて良く分からないですね。では日本人1人あたりに換算しましょう。日本の人口は総務省統計局のデータによれば2018年で1億2644万3千人だと言います。日本人1人あたりのエネルギ-消費速度は 3300 W/人 となります。100Wはその33分の一ですから、約3%です。だんだんイメージし易い数値になってきました。

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エアコンの電気は「消費電力はわずか電球一個分」なのですが (江頭教授)

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 以前、こちらの記事でエアコンの性能としてAFPについて紹介しました。これは冷暖房に使われる仕事(電力)と実際に得られる冷暖房の効果(移動する熱量)の比率のことで、大きいほど「少ない仕事」で「大きな効果」が得られる、という数値でした。

 今回はもう一つの性能指標として、実際に冷暖房を行ったとき、どのくらいのエネルギー消費があるのか、端的に言うとどれくらい電気料金がかかるのか、という点に注目してみましょう。

 以下の図はPanasonicのクーラーについての商品紹介のページの一部ですが、AFPの数値と並んで機種毎の「期間消費電力量」が示されています。「日本冷凍空調工業会 」のサイトにこの用語の解説として

JIS C 9612:2013に基づくAPFから算出された期間消費電力量は、以下の条件による試算値です。実際には地域、気象条件、ご使用条件などにより電力量が変わります。(以下省略)

とある通り、東京の標準的な1年を基準として算出した年間消費電力の予測値ということですね。

 さて、表にある様に「期間消費電力量」は小さい部屋用のエアコンでは小さく、大きい部屋用のエアコンでは大きな値となっていますが、大体 1000 kWh 程度の値です。kWhというエネルギーの単位が使われてていますが、これは一年間での値ですから正確には kWh/y と書くべきです。h/y とついているのは不格好ですから単位を W に換算すると 114 W となります。

 昔、大型のテレビのコマーシャルで「消費電力はわずか電球一個分」というセリフがあったのを思い出します。100Wの電球を考えれば114 Wという値は「消費電力はわずか電球一個分」と言ってもギリギリセーフな値では。

 

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COPからAPFへ(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 部屋のクーラー、もうずいぶんと古くなったなぁ。省エネのためにも新しいエアコンに買い換えよう。そう思ってカタログを眺めていて気がつきました。COPの表示がなくなってAPFというものになっているのです。COPについてはこちら(冷房のCOP暖房のCOP)で紹介していますが、エアコンがどのくらいの電力でどのくらいの熱を吸収したり、放出したりしているか、という比率であり、エアコンの効率の指標です。

 APF(Annual Performance Factor )で日本語では通年エネルギー消費効率とよばれています。エアコンは本質的にはヒートポンプですから、仕事によって熱を温度の低い方から高い方に移動させるものです。その際、移動する熱と仕事との比率だ、という意味ではAPFもCOPも同じなのですが、APFは「通年」とついている様に年間を通じての値、という意味があります。一年間を通じて標準的な使い方をしたときの平均のCOPということですね。

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発熱する直線周りの温度分布(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 発熱する点は周りに熱を放出しますが、その密度は距離の二乗に反比例する、これは逆二乗則の一つの例なのですが、そのとき熱の流れのポテンシャルである温度は距離の一乗に反比例します。これは前回の記事で紹介した内容でした。

 さて、発熱する点がそうなら、発熱する線ならどうなるのでしょうか。熱量 Q [W] で発熱する...、おっと直線からの発熱だとしたらこう言うべきでしょう、単位長さ当たりの発熱量 q [W/m] で発熱するワイヤー状のものが均一な媒質の中にあったとします。ワイヤーは無限に長く(あるいは、充分に長く)、周囲の温度分布はワイヤーの長手方向には均一だと見なせるものとしましょう。

 発熱するワイヤーの周りに長さ L [m] で半径 r の円筒状の面を考えると、その面(面積は 2πrL を通過する熱量は qL [W] であり、r によらず常に一定なので、

 

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という関係式を得ます。整理すると

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発熱する点の場合は逆二乗則だったのですが、直線状の熱源の場合は逆一乗則になるのですね。

 ではポテンシャルである温度 T の分布はどうなるのでしょうか。逆二乗則でのポテンシャルが逆一乗だったのだから、逆一乗則に対応するポテンシャルは「逆0乗」なのでしょうか。

 いえいえ、上記の微分方程式を解くと -ln( r ) に比例していることが示されます。あるいは ln(1/r) でも同じですね。

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逆二乗則とポテンシャル(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回の記事で「太陽定数 S は地球と太陽の間の距離 r の2乗に反比例している」と説明しました。この「2乗に反比例」という事例は物理の中ではよく見られる現象で「逆二乗則」とよばれたりします。

 前回の説明では「太陽から一定のエネルギーが放出されていて」そのエネルギーが地球の軌道まで届くまでに広がってゆく。でも、「地球と太陽との距離を半径とする巨大な球殻」を考えて、その内側にくる太陽のエネルギーをすべて集めれば、ちょうど太陽から放出されていたエネルギーに等しい。この関係は別に地球の軌道で特別に成り立つわけではなく、どんな距離 r についても成立するので、距離 におけるエネルギーの密度に巨大な球殻の面積 4πr2 をかけた値は常に一定となる。逆に言えばエネルギー密度は 4πr2 に反比例するわけです。4π は定数なので、本質的なのは r2 反比例という点、つまり逆二乗に比例する、という点ですから、「逆二乗則」と言うのですね。

 さて、太陽から放出されるエネルギーは電磁波、要するに光ですから、光について「逆二乗則」が成立することが分かります。輻射伝熱だと言い換えれば、輻射伝熱でも同じということになります。

 他にも逆二乗則に従うものはいろいろあります。化学物質の移動などもその一例です。重力も逆二乗則に従うのですが、これは一体何が放出されているのか、不思議ですよね。

 さて、同じ伝熱でも真空中ではないケースではどうでしょうか。この場合は伝導伝熱、つまり温度の高い方から低い方に向かって熱が伝わる現象が対象です。この場合も、途中でエネルギーが無くなっています訳ではありませんから、もちろん「逆二乗則」が成立します。このケースをもう少し詳しく考えてみましょう。

 均一な媒体の中の原点に大きさゼロの熱源が存在していて、Q[W]で発熱していたとすると、熱源からの距離 r での熱の流れは「温度 Tr で微分した値にマイナスをつけたもの」(熱が低い方に流れるのでマイナスがつきます)に「熱伝導度 k をかけた値」に等しくなります。熱源の周りが均一だと考えているので、r が同じならどの方向でも同じ熱の流れとなる。ですから、これに 4πr2 をかければ発熱量Qに等しい。この関係は以下の式で表されます。

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これを変形して

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という微分方程式が得られます。

 熱源から無限に離れた距離の温度をTとすると

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から、以下の結果を得ます。

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