解説

"development"は「開発」か「発展」か(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「あ! どっちもデス」

なんて言われると返す言葉もないのですが、これは一般的な話ではありません。「sustainable development」という用語の中の"development"、これをどう訳すべきか、というお話です。

 最近有名なところでは「SDGs = Sustainable Development Goals」がありますが、これの邦訳は以下の外務省の説明にもあるとおり「持続可能は開発目標」となっていて、development = 「開発」と訳されています。

 では「持続可能な発展」という文言は?探してみると「環境基本法」に「持続的発展が可能な社会」という理念が示されています。

 さて、両者にはどんな違いがあるのでしょうか。「持続可能」とわざわざ断っているのですから、気を緩めると「持続不可能」になってしまうものだ、と考えると分かりやすいと思います。

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圧力と気体の伝熱(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「魔法瓶」は真空を利用した断熱性の高い保温用の瓶のことです。(「魔法」っていうのはどうかと思いますがね。) 熱は分子の運動だから、熱が伝わるには分子、つまり物質が必要なはず。真空なら熱は伝わらない、という発想の産物ですね。

 さて、真空では熱が伝わらない、ということを前提として、「気体の熱の伝わりやすさ」つまり熱伝導度と圧力の関係はどうなっている、と思いますか?

気圧0の真空では熱伝導度も0になる、ということは熱伝導度は圧力に比例するんだ!

と、その通りであればこんな記事は書かないですよね。期待に反して気体の熱伝導度は圧力にほとんど依存しないのです。

 以前、気体の熱伝導について紹介したのですが、そこで熱の伝わりやすさに関係する三つの要素を挙げました。

 一つは分子の速度。もう一つは分子の熱容量、そして分子が衝突しないで直進できる距離(これを自由行程と呼びます)です。

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分子の重さと熱の伝わりやすさ(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以前、こちらの記事で気体の比熱は分子の持っている自由度で決まる、という話をしました。例えばN2とH2は分子の重さは14倍違うのですがほぼ同じ比熱。HeはH2より重くN2より軽いのですが単原子分子なのでどちらよりも比熱が小さいのです。

 なるほど、気体の熱的な性質と分子の重さは関係ないのか...

いえいえ、関係する性質もありますよ、というのが今回のお話。その具体例が熱の伝わりやすさだ、ということです。

 熱の伝わりやすさはどう表現しましょうか。温度の高い壁と温度の低い壁に挟まれた気体を通してどれくらいの熱が流れるのか、熱い壁と冷たい壁の温度差と壁と壁の距離を一定にして比較すれば「熱の伝わりやすさ」の指標ができそうですね。温度差を1℃、壁間距離を1mとしたときに流れる熱量は熱伝導度と呼ばれていて、物質と温度・圧力がきまれば一意に決まる物性値です。(1℃は小さすぎだし1mは長すぎの様な気もしますが...。)

 さて、0℃、1気圧での熱伝導度、気体ではどんな値になるのでしょうか。

 H2 0.1675 W/mK

 He 0.1442 W/mK

 N2 0.0241 W/mK

となります。H2 > He > N2 となって、どうやら分子の重さの逆順に並んでいるようです。

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年間降雨量と年平均降雨速度は違うのか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 いや、同じでしょう。

 と言ってしまえばそれまでなのですが、降雨の速度についてはちょっと不思議な習慣があるようです。「年間降雨量は○○mm」だという言い方は普通なのですが、例えば自動車の「時間あたり平均走行距離は××km」だ、という表現は普通しないのではないでしょうか。「時速××km/h」だ、という言い方が一般的です。

 逆に「年平均降雨速度は○○mm/y」という言い方は聞いたことがありません。そもそも「降雨速度」という表現がきわめて希です。その証拠に「"降雨速度"」をgoogleで検索するとこのブログの記事がトップに来るありさまです。(””を付けない検索では「降雨」and「速度」の文書が多数ヒットします。「降雨速度」と連続して使う事はほとんど無いわけですね。)

 その一方で自動車でも「年間走行距離」という表現はあります。(自動車保険にも関係しています。)

 さて、これはどう考えれば良いのでしょうか。

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雨量と降雨速度(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今年の夏、異常な暑さに始まって地震や大規模停電まで、いろいろな災害のあった夏でした。なかでも大雨は例年の常識を越えたもので、温室効果ガスによる気候の変動がいよいよ身近な物になって来たのかも知れない、とさえ思わせるものでした。

 と、言うわけで雨の凄さを表したニュースを探してみたのですが、たとえばウェザーニュースの以下の記事はいかがでしょうか。

 うーん、わざわざ「10分間に37.5mm」と書かれているのです凄い雨なのだろうとは思うのですが、あまり実感が湧かないのでは。続けて書かれている「1時間雨量70mm超」に併せて1時間雨量にすると「10分間に37.5mm」は「1時間雨量225mm」となって少し凄い雨感がでてきました。

 では、悪乗りして東京の1年間平均降水量 1528.8mm (1981~2010年の平均)と比べてみましょう。「10分間に37.5mm」の雨が降り続いたとすると1日では 5400mm、1年間では 1,971,000mm つまり 1971m 約2kmとなるのです。実際の平均年間降水量とくらべても千倍以上の開きがあって、これはさすがに「凄い雨」としか言いようがありませんよね。

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続・ガスの比熱と分子の自由度(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以前の記事でエネルギー等配分の法則を使ってガスの比熱をその分子の自由度から計算する方法について解説したのですが、そのときの結論はこの方法が適用できるのは「希ガスか二原子分子程度」ということになりました。

 これは大きな分子では並進と回転だけを考えた分子の自由度の計算が不十分だ、ということです。大きな分子では分子内にも自由度がある。それを無視しては正しい比熱を求めることはできない、というわけです。

 それなら、「分子内の自由度もちゃんと計算すれば良いのでは」という発想がでてくるでしょう。このアプローチはうまく行くのでしょうか?

 結論から言うと、うまくいかない、が答えです。理由は以下の図に。

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ガスの比熱と分子の自由度(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 やってしまいました。昨日の記事に間違い発見です。

 「二原子分子の気体の定圧比熱は7R、単原子分では5R」と書いてしまったのですが、これは間違い。正確には二原子分子は(7/2)R、単原子分は(5/2)Rですね。(元記事の間違いは先ほどこっそり修正しておきました。)おっと、ここでRは気体定数(8.31J/molK)です。

 さて、この比熱の求め方を皆さんはご存じでしょうか。まず定圧比熱Cpと定積比熱Cvとの間には

 Cp=Cv+R

という関係が成立しています。何故こうなるかについてはまた後で説明するとして、この関係から

 二原子分子の定積比熱は5×(1/2)R、単原子分は3×(1/2)R

となります。この5とか3とか、実は分子運動の自由度なのです。単原子分子なら並進の自自由度、つまりx、y、z座標の三つしか自由度はありません。二原子分子ではこれに分子の中心軸の方向を決めるφーθの二つの自由度(回転の自由度)が加わって五つの自由度があることになります。軸対称ではない分子にはもう一つ中心軸に対する方向の自由度が加わって自由度は6となります。

 自由度と比熱の関係、定積比熱では一つの自由度に対して(1/2)Rの熱容量が割り当てられる計算になっています。温度が1K上昇すると一つの自由度に対して(1/2)Rのエネルギーが増える。つまり、自由度ごとに等しいエネルギーが増えることを意味しています。(これがエネルギー等配分則ですね。)

 さて、定圧比熱の測定値と分子自由度から計算した値を比較したのが以下の表です。

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 実に良く合っている、と途中までは言えるのですが、はてさて二酸化炭素では少々事情が異なっています。二酸化炭素は直線分子ですから自由度は5のはずなのですが、実測される比熱はそれよりやや大きいのですね。

 もう少し大きな分子についてはどうでしょうか?

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ガスの比熱とマスフローコントローラー(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「マスフローコントローラー」については以前もこちらの記事で紹介しています。マスフローコントローラーはガスや液の流量をコントロールするための機器ですが「フロー」コントローラーじゃなくて「マスフロー」コントローラと呼ぶのは何故なのか、というのがそのときのお話。

 まあ、マスフローコントローラー、と書いているのですが、実際にはマスフローメーターについて、ですね。図の様に、本当に流量を調節しているのは電磁弁。フィードバック制御を行うための流量の計測を行っているのがマスフローメーターです。マスフローコントローラーの特性はマスフローメーターで決まります。

 さて、件の記事の中で

 マスフローメーターでの流量測定には伝熱現象を利用しています。ガスが流れると熱が伝わりやすくなる。その熱の伝わりやすさと流れの速さの関係から流量を検出します。伝熱による温度変化を電気抵抗の変化として読み取るのですが、流路の構造や抵抗体のサイズと配置、そしてガスの種類によって熱の伝わりやすさが変化しますから、ガス流量と抵抗との関係を定量的に予測するのは難しい。そこでガスの種類に応じて検量線を作って流量を測ります。

と書いたのですが、今回は実際にやってみた、というお話です。 実験の都合で、N2仕様に調整されていたマスフローコントローラーにArを流して実験したい。本来ならば業者に送り返して再調整するところなのですが、当座の話なので検量線を書いてみよう、ということになりました。

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熱しやすく冷めやすい空気(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回、空気と水の密度の違いについて紹介しました。もっと一般的に言えば気体と液体の違い。液体の密度は高いですが気体の密度は小さい。たとえば100℃1気圧で水が蒸発して水蒸気になるとき、1700倍に膨らみ、その密度は1700分の1に減少します。

   単純に言って気体は液体や固体にくらべてスカスカだ、ということになります。それを反映して気体の熱容量も液体と大きく異なっています。おっと、これも条件をハッキリしないといけません。体積基準での熱容量が大きく異なる、ということです。逆に言うと質量基準で考えるとそんなに変わらない(同じではありませんが)という事になります。

 例えば1m3の空気を加熱する場合を考えてみましょう。前回の教訓に従って条件を明らかにしましょう。20℃1気圧で1m3の空気を1℃加熱するのに必要な熱量を計算してみましょう。20℃1気圧で1m3の空気は 41.6 mol になります。 1 mol の2原子分子の定圧比熱は 7/2 R (Rはガス定数)ですから 29.1 J/(K mol) 。 41.6 mol の物質量なら熱容量は1.2×103J/(K m3) となります。

 一方 1m3 の水(これも20℃1気圧)を加熱すにはどのくらいの熱量が必要なのでしょうか。1m3 の水は106g。1gあたり1℃温度を上げるには4.2Jが必要なので 4.2×106J/(K m3) となり、空気の場合の3500倍の差が生じます。

 ちょっとイメージが湧きませんか?

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水と空気はどっちが重い?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 いや、別に「水1トンと空気1トン」みたいなナゾナゾをやりたいわけではありません。普通に考える様に同じ体積での比較、つまり密度の違いのお話しです。水が重いのは考えるまでもないことですが、まずは基本的な情報から。

 水の密度は1mL当たり1g。これはOKですね。では空気はどうでしょうか。空気の密度を求めるには「1molの気体は標準状態で22.4L」ということを覚えていると便利です。空気が酸素20%、窒素80%の混合気体だとすると平均分子量28.8の気体だと見なすことができます。22.4Lで28.8gですから1L当たり約1.3g、1mL当たりなら1.3mgとなります。まさに水より桁違いに軽いわけです。

 さて、ここからが本題。さきほど「標準状態で」と書きましたが、これは0℃1気圧の条件です。室温付近、20℃1気圧では空気はもう少し軽くなりますが、もっと違った条件ならどうでしょう。水が空気より軽くなる条件はあるのでしょうか。

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