解説

デマを拡散しないように- 28 必要対策・十分対策:安全工学の視点で新型コロナ対策を考える(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、引用文献などを読んで自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

 十分条件・必要条件ということばがあります。新型コロナ対策にはそれと同じように十分対策と必要対策を考える必要を私は感じます。これはmustでしておかなければならないという必要最小限の対策を必要対策と呼びましょう。ここまでしてあれば十分といえる対策を十分対策と呼びましょう。

 リスクアセスメントによる産業事故防止対策は、「十分対策」であることを求められます。あらゆる事故の可能性を洗い出して対策します。しかし、現在、政府の国民に対して「お願いしている」新型コロナ対策は十分対策と呼べません。残念ながら、現在の対策は必ず必要と思われる対策であっても、これで十分な対策とは言えません。実際、まだ対策は十分でないから、長期的にみて新型コロナの感染拡大を人為的に収められません。何度も波がやってきています。

 その対策が「必要対策」なのかどうかは国や集団、個人により異なります。日本ではマスクは必要対策という認識です。そのようなコンセンサスがあります。マスクの有効性はインフルエンザにおいても確認されています。浮遊飛沫を吸い込む可能性を大幅に確実に下げます。この対策により2020-2021年期のインフルエンザの発症数は、前の年の1/200だったそうです。また、マスク習慣の浸透している日本の2021年9月の時点での陽性者の人口比率は、欧米の1/10程度であることも、このマスク習慣の有効性を示唆します。しかし、欧米ではマスクは必ずしも必要対策と認識されていません。

 2020年10月になって、CDCは「「COVID-19 can sometimes be spread by airborne transmission」と言う声明を注意喚起のために出したそうです[https://www.asahi.com/articles/ASNBB3GMWNB8UBQU003.html]。

 ここで「airborne transmission」は機械翻訳では「空気感染」と訳されますが、日本の専門用語の空気感染=飛沫核感染、だけではなく、飛沫感染やアエロゾル感染などの、空気層を媒体とする感染全てを意味する広い概念です。日本では当たり前に理解・認知されている感染経路です。

 少し脱線しますが、2021年8月27日の新聞報道で「「コロナは空気感染が主たる経路」研究者らが対策提言」という記事が出ました。CDCが「空気感染」の可能性を認めたという記事です。その記事に添付されている報告書の写真には、やはり「airborne transmission」と書かれていました。この記事が日本で紹介されると、「新型コロナは(飛沫感染だけではなく)空気感染を起こす」という誤解を招く記事になります[https://news.yahoo.co.jp/articles/694fc9ee7cb1a79c830e23126ba994f8ca93f64a]。日本で当たり前に認知されていることは、アメリカでも当たり前であると考えたのでしょう。

 日本では当たり前のマスクによる飛沫感染防止が、アメリカでは少なくとも2020年10月まで当たり前ではなかった。マスクの着用は必要対策になっていなかった、ということです。日本の記者さんは、マスクは当たり前という前提でCDCの記事を読んだのでしょう。その上で空気感染対策が必要と考えてしまい、あたかも日本では対策できていない感染経路があるように誤解してしまったのでしょう。

 確かに、アメリカ大統領選挙の集会で、トランプ氏はマスクにしておりませんでした。必要対策の認識はTPOや国などの地域、果ては人により大きく異なるもので、任意性を持ちます。

十分対策を提案する必要性

 2020-2021年期のインフルエンザの激減(おおよそ1/200)に比べ、新型コロナの感染拡大は著しいものです。これは2021年3月15日の予算委委員会での尾見会長の言われる「見えない感染源」によるものでしょう。

 専門家は自分の守備範囲で問題を理解しよう、解決しようとします。そのためウイルスの専門家は感染の拡大収束をウイルスの性質に帰そうとします。ワクチンの専門家は高くなってきたワクチン接種率によると仮定します。公衆衛生の専門家は人の流れや行動様式に帰そうとします。しかし、真の感染拡大・収束の原因はそれ以外の要素であるかもしれません。専門家であるが故に、専門家の仮定する感染拡大・収束の原因はその専門分野のうち側に仮定され、その対策はその分野での必要対策になります。

 新型コロナ禍を根絶するための「十分対策」の立案には、安全工学的なリスクアセスメントの視点が必要です。学際的な多面的な視点が必要です。多重的ではなく、ありとあらゆる可能性からの多面的な対策立案が、今、もとめられています。

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 私はこのブログで経皮接触感染、汗腺からの感染の可能性を示唆しました(2021.1.21 http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2021/01/post-90684f.html)。しかし、実際に安全工学誌に公表した論文の共著者で論文の作成を指導してくれたY教授は、そのような経皮感染の可能性を論文に記載することに反対されました。Y教授はその分野の専門家であるが故に、情況証拠という弱いエビデンスによる仮説に基づく対策案の公表を学術的にはばかりました。確かに、学術の世界ではtoo much speakingを行なう者はbig mouseと呼ばれ、蔑まれます。専門の研究者は自分の口から出ることばにどうしても慎重になります。私も化学の研究者の端を汚す者として、自分の専門でのtoo much speakingは自制し避けます。

 一方で、このような姿勢は、例えば原子力の安全の実務では許されません。原子力の安全では、考えられる・想定される全てのインシデントの可能性を疑い、それぞれに十分な対策を講じることが求められます。全ての事故の可能性は公に検討されるべき課題です。同様に安全の実務者・担当者はあらゆる可能性の検証と伝達を求められます。そして、それぞれ可能性のあるリスクに対して、たとえそのリスクの発生のエビデンスに乏しくても、適切な対策を施すことを求められます。そして、日本の産業安全はこのような十分対策で支えられています。同様に、新型コロナの感染を完全に食い止めたければ、十分対策を行なわなければなりません。

 リスクアセスメントはそのような事故の可能性を体系的に洗い出す作業です。リスクアセスメントは対策を十分対策に近づけるための手法です。しかし、リスクアセスメントも人の思考に頼っている限り完璧なものにはなりえません。福島第一原子力発電所のように想定外は必ず残ります。十分対策やゼロリスクに近づくことはできても達成することはできないと考えるべきです。

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片桐 利真

 

デマを拡散しないように- 27 ワクチンを躊躇する心-2:反知性主義と確証バイアス。そしてサイエンス・コミュニケーターに求められるもの(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、引用文献などを読んで自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

 2021年10月号の「文藝春秋」に「読んではいけない「反ワクチン本」」という記事がありました。大阪大学の忽那教授の署名記事です。そこでは7冊の「反ワクチン」本とその内容に対する批判的な意見を掲載していました。興味がある方は、ぜひ購入してお読みください。このような反ワクチン勢力による『デマ(?)』の拡散は行政のワクチン接種推進の妨げになっています。

 先のブログ「デマを拡散しないように、ワクチンを躊躇する心25 2021.5.10」でスロビックの11因子、カーネマンのプロスペクト理論という人間心理の側面から、ワクチンを躊躇する心を記述してみました。今回は、それに加え、反知性主義(反権威主義)から、ワクチンを忌避する心理を考えてみます。このブログの内容は来年の安全工学の講義に反映させる予定です。もし私の認識に何か間違いがあれば、是非ご指摘ください。

 国立精神・神経医療センターの調査(https://www.ncnp.go.jp/topics/2021/20210625p.html)によると、『一人暮らし』『所得水準の比較的低い人(100万円未満)』『中学卒業および短大・専門学校卒業を最終学歴とする人』『政府ないしコロナ政策への不信感がある方』『重度の気分の落ち込みがある人』でワクチン忌避者の割合が高かったとのことです。

 ここからは片桐の個人的な仮説と意見です。

 ではなぜ、そのような「社会的に恵まれていない方々」「抑圧されている方々」でワクチン忌避が発生するのでしょうか。
 2016年のアメリカ大統領選挙ではクリントン女史を抑えてトランプ大統領が誕生しました。このとき、トランプ大統領の支持者もまた、中産階級から下、学歴や所得があまり高くない人たちでした。(https://www3.nhk.or.jp/news/special/2016-presidential-election/republic5.html
現在の生活に不満を持つ彼らはアメリカ第一主義を掲げるトランプ氏を支持し、彼を大統領におしあげました。
 そして2020年の大統領選挙の時に、トランプ氏はワクチン問題に関して、興味深い発言をしています。“He (Biden) will listen to the scientists.” “He (Biden) will listen to Dr. Fauch.” と発言しています。Fauch氏は国立アレルギー・感染症研究所所長で、アメリカの感染症対策の専門家です。その意見を聞くことを「問題である」とする姿勢が支持されていたわけです。
 それに対してバイでン氏はツイッターで“For once, Donald Trump is correct: I will listen to scientists.”と返しています(https://twitter.com/JoeBiden/status/1318357515680116737)。専門家を「敵」と見做し支持者の心をつかんだトランプ氏と、専門家を「味方」としたバイデン氏の争いの結果は、ご存知のようにバイデン氏の勝利におわりました。
 ご存知のようにトランプ大統領はマスクを拒否し、“コロナはただの風邪”という態度を取り、2020年のアメリカでの感染拡大を招き、自らも10月に感染しました。人口比でのアメリカの感染率は日本の10倍以上です。

 先のトランプ氏の発言は、彼の支持者の「感染症専門家」を軽視する姿勢、あるいは学術権威に対する反感・反発を表しています。このような専門家を軽視する姿勢を批難する人はトランプ氏の行動原理を「反知性主義」と呼び、賛同する人は「反権威主義」と呼ぶようです。
 反ワクチンを主張する方々もまた、そのような「反知性主義」あるいは「反権威主義」なのではないでしょうか。

 反ワクチンを主張する人の主張には類似性をみつけられます。厚生労働省や山中教授のブログなどの内容を引用せずに、SNS上の噂や反ワクチンを主張する一部のお医者様のコメントを、『市民の生活感覚に沿う主張』と高く評価し、採用しています。まさに権威を否定する姿勢です。このような反ワクチン主義者の論拠を支えているのは、反知性主義(反権威主義)と確証バイアスとだと思われます。
 確証バイアスとは、自分の主張に沿う情報のみを採用し、それに反する情報を無視する心理バイアスです。

 我々、科学技術者は、知らず知らずに「権威」とみなされ、反発を受けているかもしれません。周りをそのような反知性主義に陥らせないようにするためには、科学技術の丁寧な説明を心がけなければなりません。
 文芸春秋の記事は、それらの反ワクチン本に書かれている間違った内容を一つ一つ丁寧に潰しています。しかし、それだけではくすぶっている反ワクチンの火を消し止められないと思います。ワクチン忌避者の説得は、「理」だけでなく、権威に対する不信感を払拭する「情」の対応も必要です。
 科学技術を正しく伝えるサイエンス・コミュニケーターはこれからますます社会の中で重要な役割を果たしていくでしょう。そしてサイエンス・コミュニケーターには「正確にわかり易く」科学技術を伝えるだけではなく、権威者ではない立場から「市民感情」に沿って科学技術を説明することが求められるでしょう。

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片桐 利真

デマを拡散しないように- 26 第6波に備えましょう。(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、引用文献などを読んで自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

 私自身はウイルス学の専門家ではありません。しかし、30年前に免疫学を学び抗アレルギ薬の創薬に従事した経験を持ちます。そのときの(少し古い)知見やその後の科学者としての経験を元に、今回の新型コロナウイルスを理解する努力を行っています。その結果は、医療保健学部の横田先生の指導下で仮説論文にまとめました。

 片桐、横田 安全工学、2021, 60(1), 49-52. (https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/60/1/60_49/_article/-char/ja/)

この論文の内容は、今年の本ブログ(その1その2その3その4その5その6)に分割して紹介しています。私は感染症やウイルスの専門家ではありませんので、感染拡大・収束をウイルスそのものだけには求めていません。外部要因として、季節変化や気候との関係で解析しています。

 さて、昨年の東京の新規陽性者数のグラフを10倍したもの(青線)を、今年のグラフ(赤線)に重ねると、第1波と第4波、第2波と第5波がよく重なっています。昨年よりも今年の波は2週間程度後ろにずれているようです。この重なりは、東京における新型コロナの感染は季節性のものである可能性、気候により何らかの影響を受ける可能性を示唆します。しかし、その本質はまだ未解明です。

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 このグラフの波のシミラリティだけで、感染拡大収束の要因を分析し明らかにすることはできません。先に紹介した論文では湿度や日照時間と新規感染者数の増減を表す差分とのあいだの相関について述べました(ブログ 2021.1.13)。しかし、湿度や日照時間が直接的な要因なのか、それとも何らかの「疑似相関」であり、真の直接的原因である「潜伏変数」の存在はまだわかりません(ブログ2020.3.31)。例えば、夏の第2波第4波は、高温多湿になり、半袖の人の増加による思わぬむき出しの腕の皮膚接触により感染拡大した(ブログ2021.1.21)、というような仮説も立てられます。真の要因解明は広い視野からの今後の研究を待たなければなりません。

 そして,このグラフは、今年の11月終わり頃からの第6波の到来を示唆します。第6波に備えましょう。マスクを付けましょう。3密を避けましょう。「早寝早起き朝ごはん」で免疫力を強化しましょう。

  この「予言」が外れてくれることを、私は心から祈ります。

 

片桐 利真

 

pHメーターとガラス電極についての補足(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以前の記事でpHメーターについて紹介したのですが、その中でガラス膜について

水素イオンだけが透過することができる「半透膜」のような機能をもっている

と説明しました。今回はこの点について少し補足説明をさせてもらいましょう。

 実はガラスの中を動くのは水素イオンではありません。そもそもガラスというのはケイ酸のナトリウム塩です。まずケイ酸は、いわゆる原子の「手」が4本のケイ素に4個のOH基がくっついているものだと思ってください。OH基から水素イオンが抜けてナトリウムイオンと置換する、あるいは二つのOH基が脱水縮合してケイ素とケイ素の間を酸素がジョイントするような構造をつくる。この二つの過程が混ざり合ってナトリウムイオンを含んだ酸素とケイ素からなる大きなネットワークのような構造になったもの。それがいわゆるガラスなのです。

 ナトリウムが多いケイ酸ナトリウムは「水ガラス」と呼ばれる粘稠な液体です。ナトリウムが少なくケイ素ー酸素ーケイ素のネットワークが発達したものはガラスに。そしてナトリウムを全く含まず結晶となったものが石英です。ナトリウムの代わりにカリウムを入れたカリガラスや鉛を入れた鉛ガラスなども知られていますが、一般的なのはやはりナトリウムガラスです。

 ガラスの中にはそもそもたくさんのナトリウムイオンが入っていますから、そのたくさんのナトリウムイオンが一方向に少しずつ動けば「膜の片面から反対の面にナトリウムイオンが通り抜けた」のと同じように見えるでしょう。

 一方、膜の中に存在していなかった(あるいはOH基の形で酸素に結びつけられている)水素イオンの場合、本当に膜の端から端まで移動しなくてはならない。これが大変なことは容易に想像できます。

 えっ、じゃあガラス膜は水素イオンは通らなくてNaイオンが通るのでは。ということはpHメーターが計っているのはpNaなのでは。

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pH試験紙とpHメーター(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以前の記事で、リトマス試験紙とpH試験紙の違いを説明しました。リトマス試験紙には色見本が要らない。サンプルに漬けた部分と、まだ乾いている部分との色を比較すれば良いから。つまりリトマス試験紙そのものが色見本の役割果たしているからです。別の見方をすると色見本の見本の数だけ試験紙が必要になるとも言えます。リトマス試験紙はpH=7を挟んで酸性とアルカリ性の二つ状態のどちらに入るかを判別するもの。色見本の数は2種類なので、赤と青二つペアで用いることになっています。

 ではもっと細かくpHを計りたいならどうするか。リトマス試験紙の方法を応用するなら14枚組のリトマス試験紙を用意すれば良いのでは。14枚に一斉にサンプルをつける。変色無しと変色有りの境目になったところがpHだ、ということになるでしょう。おっと、pHを1ずつ計るのなら「1以下」のリトマス試験紙から「14以上」のリトマス試験紙までの色の15枚セットが必要。もっとデラックス版では29色とか43色セットとか。これこそ子供心に訴える設定でよく売れるのでは。

 一方で普通のpH試験紙は色見本との比較が必要となります。昔はカラーの印刷物の校正には「色校正」というものがあったそうで(いや、今でもあるか)、印刷で忠実に色を再現するには手間暇がかかるものでした。特にpH試験紙の色見本はメーカーが測定時の精度を保証して提供するのですからそれなりの出来のものである必要があります。もっとも例えそうだとしても15色セットとかを準備するのに比べたら楽なものですね。

 さて、pHの測定方法は何もこの指示薬や試験紙をもちいた方法だけではありません。

 良く知られているのは pHメーターによる測定です。

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「pHメーター」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年9月20日 (月) 06:03、URL: https://ja.wikipedia.org

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アボガドロ定数とファラデー定数と電気素量を全部覚えておく必要はない、という話(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

「クイズです。アボガドロ定数は?」

「6.02×1023 です!」

「では、ファラデー定数は?」

「96500 C だね。」

「じゃあ電気素量は?」

「えっ、えーっといくつだっけ?」

答えは1.60×10-19 C です。

 ファラデー定数が電子1molの電荷だ、ということを理解していれば電気素量が 96500÷6.02×1023 で求められることは容易に理解できますよね。

 もっともクイズの答えがこんな感じになるのは私が化学の分野の人間だからかも知れません。電気を専門にするひとにとっては「電気素量」が常識「ファラデー定数」が基礎知識で

 ファラデー定数が電子1molの電荷だ、ということを理解していればアボガドロ定数が 96500÷1.60×10-19 で求められることは容易に理解できますよね。

となっていたかも知れません。

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pHとpKa(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの9月13日の江頭先生の記事で、pHの話題が出ました。今回はこのpHに類するpKaの説明で、このpHやpKaがエネルギーに比例する尺度であることを説明します。

 pHに類する概念として、かなり前のこのブログの「有機化学Ⅰ」の講義解説でpKaという酸性度を表す指数についてお話ししました。(http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2015/11/-1pka-035c.html)。

 さて、pKaの定義を以下に示します。このようにしてみると、このpKaは[A ]という化学種のエネルギー的安定性(ポテンシャルエネルギー)を表現しています。このpKaはいろいろな操作で、そのH-Aという化学種のプロトン放出能を[A ]という化学種のエネルギー的安定性として表現しているわけです。

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つまり、平衡定数をエネルギーに換算するためにlogを使い、ポテンシャルエネルギーは値の小さい方が安定、大きい方が不安定だから、マイナスの符合を付けるわけですね。つまり、pKaもpHもそのポテンシャルエネルギーと比例する尺度です。

 これだけでは何だか良く分かりません。もう少し説明しますね。

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あなたが「サステイナブル工学」学ぶと何が変わるのか?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。ここに取り出したるは東京工科大学の工学部。この工学部、工学部といってもそんじょそこらの工学部とはわけが違う。なんたって「サステイナブル工学」をやる工学部だ、てーんだからさあお立ち会い。

って、このテンションで続けるのもしんどいのでいつものスタイルに戻しましょう。

 「サステイナブル工学」は本学工学部が設立された際、工学部での教育の柱の一つとされたコンセプトです。従って、このブログでも「サステイナブル工学」については何度も取り上げていたのですが、よく考えると「高校生の皆さんの視点に立って『サステイナブル工学』を学ぶと何が変わるのか、どんなメリットがあるのか」を直接説明したことはなかったなあ、などと、ふと思ってしまったのです。

サステイナブル応用化学で扱う物質は分子から違うよ。なんたってサステイナブル炭素がサステイナブル骨格をつくってそこにサステイナブル水素が結合…

いや、そんなバカな。人がどんな教育を受けたとしても扱う物質に違いはありません。これは化学の、いや、科学の常識です。では、他の工学部では教えてくれない化学反応を教えてくれるのでしょうか。

今は昔、サステイナブル工学を志した学者達が八王子奥地のサステイナブル山の霊峰に閉じこもってはや100年。下界の喧噪を離れてひたすら研究に邁進して独自に作り上げたのが、このサステイナブル工学。専門家曰く約50年は進んだその威力をばご覧じろ…

とまあ、これもあり得ないですよね。

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リトマス試験紙とpH試験紙(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 酸と塩基、いやアルカリについて勉強したのは小学生の頃だったと思います。「リトマス試験紙」をつかって酸性は赤、アルカリ性は青、などなど。このリトマス試験紙というのが「色が変わる」のはもちろん、「赤と青でワンセット」とか、いかにも子供の好奇心をそそるような設定ですよね。(設定言うな!)「青いリトマス試験紙を酸に漬けて赤くすれば赤いリトマス試験紙の代わりになるのか?」などと考えたことを覚えています。

 酸性とアルカリ性と中性、小学生のころは単純で良かった。でも中学、高校と進むと酸性にもアルカリ性、いや塩基性にも程度があるよ、という話がでてきた。それが pH です。酸性とアルカリ性は「酸の素を含む」と「アルカリの素を含む」というよりも、「酸の素が多い」酸性と「酸の素が少ない」塩基性、と理解するべきだ。そして「酸の素」の正体は…酸素じゃないんですよね。

 結局「酸性」の指標は水素イオン濃度であり、その程度を表す数値としてpH、水素イオン指数が導入されているわけです。では、この水素イオン濃度は具体的にどのように測定するのか。その一つがリトマス試験紙の発展型であるpH試験紙です。

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指数とpH(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 指数って何だろう?そう思って調べると「不快指数」や「知能指数」といった何かの性質の程度を数字で表したものだ、という説明が見つかります。でも指数の用例はこれだけではありません。例えば「指数関数」で使われている指数という用語は何かの程度を表すものではありませんよね。

 指数にはもう一つ、102(10の二乗)の2、103(10の三乗)の3といったべき乗を表す数字、という意味があり、これを冪指数といって区別することもあるそうです。先ほどの指数関数は10やeなど、きまった数に対して与えられた数字を冪指数としたときの値を対応させる関数ですからこちらの意味での指数なわけです。

 などと考えていてふと気がついたのですがpH、つまり水素イオン指数の「指数」はどちらの意味の指数でも通じるのでは。いや、ちょっとまって。水素イオン指数の定義には「マイナス」がついているな。中性は水素イオン指数では7だけど水素イオン冪指数だと-7とすべきなのでしょうか。

 pHについてもう一つ疑問が。pHのpって何の略なのでしょうか?

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