解説

デマを拡散しないように-5 BCGはコロナ肺炎の予防に効果があるか? 疑似相関のはなし(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 3月27日のNHKノニュースによると、「オーストラリアの研究機関は、新型コロナウイルスに有効かどうかを確認するため、結核予防に使われるBCGワクチンの臨床試験を行うと発表しました。」とのことでした。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200327/k10012354671000.html

 BCGは「結核」の予防接種です。我々の頃は、ツベルクリン反応で陰性の場合にBCG接種を行ないました。日本では1960年以降小学生に行なわれていました。2005年以降は1才未満でこの予防接種を行なっています。私のように小学生になってからスタンプ式でチクッとやられたのを憶えている人も、まだ学生さんの中にはいるかもしれません。
 結核は結核菌により引き起こされます。コロナウイルスと結核菌は、直接的に関係はありません。しかし、国別で見ると組織的にBCGの行なわれた国での感染拡大が比較的緩やかであるため、BCGがコロナウイルスの感染や重症化を抑える効果があるのではないかと期待されたわけです。さらに、国内の重症化患者はBCGが義務化される前の高齢者に多く、国内の若者の死者が少ないことは、そのようなBCGの効果を期待させるものです。

 BCGのような結核ワクチンが免疫力を高めるという話は、以前にもありました。「丸山ワクチン」とよばれるものです。結核の他にハンセン病や末期ガンにも有効だとされました。しかし、なぜ効くのか?、すなわちその有効性や薬理機序についてはまだ解明されていません。そのため、日本でガンの治療方法としては認められていません。

 このように「◯◯は××に効く」という話しは、その作用機序=メカニズムが解明されないと、なかなか信用されません。信用できません。プラセボ効果(プラシーボ効果=偽薬効果)の場合もあります。因果関係が不明確なのに、相関関係がある、関連しているという場合は「疑似相関」を疑ってかからなければなりません。「効果が見られるなら何でもOK」という考え方は、疑似相関の罠に陥りやすくなります。
 2018年11月のNHKで「入浴習慣のある高齢者は要介護リスク低くなる」という千葉大学の研究成果に関するニュースが流れました。「ふだん、どれくらいの頻度で風呂につかっているかなどを事前に調べたうえで、3年後の状態を確認し、そのデータを統計的な手法を使って分析しました。その結果、冬場に週7回以上、風呂につかっている高齢者は、週2回以下の高齢者より介護が必要な状態になるリスクが29%低くなったということです。」だそうです。
 でもこの記事を読んで、「入浴習慣のある高齢者は要介護リスクが低くなる」としても良いのでしょうか?。反論のためのひとつの仮説として、「体力がある老人は要介護になりにくい。」「体力のある老人は風呂に入ることができる。」と考えると、風呂に入ることと要介護になりにくいという事象の間の因果関係は崩れます。このような因果関係の成立しない相関を「疑似相関」と呼び、その共通の原因を「潜伏変数」と呼びます。
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不明確な機構でつながっている因果関係の場合は疑似相関を疑い、潜伏変数を探し、検討しなければなりません。
 
 このBCGとコロナ肺炎との間の関係も合理的な説明ができないのなら、やはり疑似相関を疑うべきです。そして、その潜伏変数を明確にすることはコロナ肺炎の制圧につながるかもしれません。
 でも,本当にBCGがコロナ肺炎の予防に有効であると良いですね。

 

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 このブログを執筆している最中に、志村けん氏の訃報に接しました。ご冥福をお祈りいたします。

デマを拡散しないように-4 イブプロフェンを使ってはいけないとするフランス保健相Twitterコメントへの個人的コメント (片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

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 この2020年のコロナ感染症騒動における3月15日のフランス保健相の「イブプロフェンを使ってはいけない、アセトアミノフェンを使え」というTwitterでのつぶやきは社会不安をかき立てています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20200315-00167830/
しかし、なぜイブプロフェンを使ってはいけないかについて、詳細な情報は無く、そのためこの情報をFake Newsと主張する人もいるようです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/masakazuhonda/20200317-00168265/
なぜ使ってはいけないかという理由は、その薬の作用機序を理解し、感染症への影響を考えれば、理解できるかもしれません。以下は、30年前に細胞性IV型アレルギー(対ウイルス免疫の暴走)の薬の開発に関与していたことのある、片桐の個人的な情報提供と見解です。

 風邪を引くといろいろな症状が出ます。これらの「症状」はウイルスが起こすというよりも、ウイルスに感染した細胞を白血球が攻撃する細胞性免疫反応により起こります。発熱は免疫細胞を活発化するための人間側の防御反応のひとつです。炎症はその白血球の攻撃=活性酸素の流れ弾、で周囲の細胞も傷つくことにより起こります。咳や痰も同じく、感染症への免疫による防御反応です。
 しかし、これらの感染症への防御反応は行き過ぎると患者の命を奪うこともあります。わかりやすさのために少しウソのある説明ですが、肺炎は肺に感染したウイルスを白血球がやっつけようと攻撃するために、肺の機能を奪うことにより生じます。肺の感染細胞を攻撃するために、白血球は血管からしみ出してきます。そのため血管壁の透過性が高くなり血しょうもしみ出して肺水腫を起こします。これは最終的にその人の呼吸を困難にし、命を奪います。がん治療中に治療がうまくいきガンが小さくなると、これまでがん細胞を攻撃していた免疫系が暴走してARDS(急性呼吸切迫症候群)を起こし死に至ることがあります。作家の遠藤周作さんはガン闘病中に肺炎でなくなりました。

 むやみやたらと症状を抑えるのは感染を広げるおそれがあり、得策ではありません。一方で免疫系の暴走を許すと命にかかわります。適切にコントロールしてやらなければならないということですね。

 発熱や頭痛などの不快な症状を緩和するために、市販の風邪薬にはこれらの症状を抑える成分が多数含まれています。鎮痛剤、抗炎症剤、解熱剤と呼ばれるお薬成分です。よく使われるそのようなお薬を大きく分けると、ステロイド系のものと非ステロイド系のものになります。ステロイド系のものは細胞性免疫系を元から止めて炎症を抑える薬です。感染症に使ってはいけない薬です。肌荒れによく効くステロイド軟膏を水虫に使うともっとひどくなります。

 非ステロイド系のお薬には、今回話題の中心になっているイブプロフェンやアセトアミノフェンの他にもエテンザミド、イソプロピルアンチピリン、アセチルサリチル酸(アスピリン)やインドメタシン(貼り薬)などがあります。これらのお薬の作用はアラキドン酸カスケードと呼ばれる痛みや炎症を伝達する物質を作る生体内の反応系を阻害することです。より具体的にはシクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる酵素の阻害です。このアラキドン酸カスケードの作るプロスタグランディンは何種類もあり、そのような生体情報の伝達だけではなく、胃壁の保護などにも関与します。だからインドメタシンを使い続けていると、胃潰瘍のような副作用を起こします。

 このCOXという酵素も大きく2種類あり、さらにその作り出す物質は場所等により異なるようです。そのため、薬によってCOX阻害作用の効果は異なってきます。イブプロフェンは強い「抗炎症作用」を持ち、アセトアミノフェンはそれに比べて弱いと言われています。そして、アセトアミノフェンは別のシステムで痛みを止めると考えられています。詳細は、例えば「日本ペインクリニック学会」のページをご参照ください。
https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keynsaids.html

 結局、強力に炎症を抑えてしまう抗炎症作用の強いお薬、例えばイブプロフェンは免疫まで抑制してしまうために、対コロナウイルス感染免疫を抑制してしまうから好ましくない、ということだと思われます。このような風説は30年前から言われていました。そのため,前のブログでも風邪薬のアセトアミノフェンについてほんのちょっとと言及しておりました(2020.3.5)。よく効く「良い」薬ほど、そのような副作用に注意すべきだということです。あまりにも当たり前の結論になってしまいました。また、抗炎症作用の弱いアセトアミノフェンには肝臓機能障害の副作用があります。

 以上、長々と述べましたが、抗炎症・鎮痛・解熱剤を理解して使うためには、それなりの知識が必要です。薬は毒にもなります。使う際にはバランスが必要です。その作用には個人差があります。生兵法は大怪我のもとです。専門家であるお医者様に相談して診断を受け、薬剤師の処方する最適なお薬を正しい用法で使うのが一番です。

 応用化学科の学生さんは、もしコロナ感染症が怖いと感じたなら、良い機会ですから一度、自分の使っている風邪薬や頭痛薬の「成分表」(薬の箱の横に書かれている)も読んでみましょう。

 

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片桐 利真

 

デマを拡散しないように-3 マスクは鉄壁ではありません(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

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 先のブログ記事「デマを拡散しないように-2」でマスクについていくつかコメントしました。


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 コロナウイルスの大きさはNIID国立感染症研究所のページに、MERSコロナの情報として「他のコロナウイルスと同様、脂質二重膜のエンベロープに包まれた直径100 nmの楕円体で、エンベロープ表面に王冠に似た突起、スパイクがある。」と記載されています[https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2320-related-articles/related-articles-430/6116-dj4304.html]。
<中略>
この100 nmという大きさはPM2.5の粒子の25分の1の大きさということです。この大きさでは、300 nmの粒子を95%シャットするN95と呼ばれるマスクでも減らすことはできても完全に防ぐことは難しいでしょう。一般のガーゼマスクで呼気中のウイルスを防ぐのはほぼ困難でしょう。
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さらに、少し古いものですが2009年に国民生活センターが「ウイルス対策をうたったマスク」という報告書を出しています。http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20091118_1.pdf
それによると、検査対象の国内販売の15商品のうち、記載されているスペックを満たしていたのはわずか3種類だったそうです。「ウイルス除去率99%」とうたっていても、実際は40%程度という商品もあったようです。そのためか、現在はウイルス除去率をうたって販売しているマスクはなくなりました。記載されていても、以前のように大きな文字で堂々とは書かれていません。

 このような記述を読むと「完璧にブロックできないのなら、マスクは無意味」と考えてしまう方がおられます。確かにマスクは鉄壁の防御ではありません。しかし、まったく無意味ではありません。
 飛沫感染を防ぐ効果はN95マスクでなくてもある程度期待できます。マスクもせずにくしゃみや咳をしている人のそばに行く場合には効果を期待できます。また、マスクをかけていると、ウイルスに汚染されている手指を口に触れさせない効果もあります。
 マスクは鉄壁ではなくても、やはりある程度の効果を期待できる予防対策です。大事なのは、マスクだけに頼らないことです。マスクはひとつの予防メソッドであり、それだけに頼ってはいけません。手洗やうがいなどの対策、免疫を高めるための栄養・食事への気配りなど他の対策と併用すべき対策です。金曜日にトイレで手を洗っていたら、マスクをかけた学生が手を洗わずに後ろを通り過ぎました。コロナ感染予防的に見ればちぐはぐな対応です。手を洗うチャンスがあれば必ず手を洗いましょう。

 先日参加した安全環境に関する研究会で、O大学の先生がコロナ騒動に関して「政府の水際対策は失敗したとお考えの方は手を上げてください」と観客に話をふった時に会場にいた大多数の人(大学や企業の安全の専門家)は手を上げました。手を上げなかったのは私を含めて1〜2割程度だったと思います。
 政府の水際対策はマスクと同じです。いろいろな対策のひとつと位置づけるべきであると、私も思います。いろいろな批判もありますが、確定患者の半数以上の感染経路を明らかにできるほどには流入の抑制に成功した今回の水際対策は、鉄壁ではなくてもそれなりに成功しているというのが私の意見です。

 安全工学の講義の「対策立案」の時に、一般の人の危険認識について「個別的認識と統計的認識」の話しをしました。「ガンの治癒率60%の治療法と40%の治療法があるとして、どちらが優れた治療法だろうか」というものですね。統計的には60%の治療法の方が優れていますが、患者にとっては自分に有効な治療法が優れています。どんな治療法でも患者は生きるか死ぬかの二択になり、60%生きている状態になることはありません。
 個人としてはコロナ肺炎にかかるかかからないかの二択です。だからこそ、水際対策には100%の完璧さを求めたくなります。そして100%でなければ0%の評価を下します。しかし、社会全体の統計的視点では、60%の対策もまた有効な対策であると評価できるわけです。

 マスクに100%の防御力を期待しては行けません。マスクをしていれば大丈夫と不用意に安心してはいけません。だからといって、100%でないのなら無意味であるとマスクをあきらめてもいけません。大事なのは多重的より多面的な対策により小さなインシデントの不幸な偶然の重なりを避けることです。これはヒヤリハット対策で大きな事故を避けることに似ています。

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堺屋太一氏が描く「石炭産業の終焉」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 堺屋太一氏は石油ショックを見事に予見した「油断」をはじめとした未来予測小説の名手でした。だから最近の脱石炭の機運を予測して石炭産業の終焉を予測した小説を…。

 という訳ではありません。ここで終焉を迎えるのは「日本の」石炭産業。1950年代から始まった燃料の流体化の影響を受けて、日本でも国産の石炭から輸入された石油への燃料の転換がおこりました。それにともなって日本の石炭産業はほぼ消滅してしまったのでした。もちろん、小説ではなくいろいろな組織が発展したり消滅したりする、そのメカニズムを考察した書籍「組織の盛衰 」の一部なのです。

 さて、今でこそ日本の化石燃料は石油、天然ガス、石炭が大体同じ程度。やや石油が多いという配分で全て海外からの輸入という状態です。でも戦前はもちろん石炭が中心。世界では太平洋戦争の前後に石炭から石油への転換がスタートしたのですが、戦後の日本では海外から石油を購入する外貨が不足していたため、国内での石炭生産を優遇した、という経緯があるのです。そのため戦後の石炭産業が大発展し、日本の社会で大きな存在感を示していました。

 しかし、高度経済成長を経て外貨が豊富になると石炭から石油へのエネルギー革命の波が容赦なく日本に訪れたのでした。

「エネルギー源というものは、容易に転換できないが、一旦転換がはじまると急激に変化する」

堺屋氏の指摘の通りでしょう。エネルギー産業は基本的には BtoB で企業間の取引が中心となっています。どのエネルギーが有利か、安価か、というシビアな判断が行われますから、石炭と石油のコストがクロスすれば一気に変革が進みます。

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コロナ騒動 局限対策(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

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 2020年の2月後半はコロナウイルス騒動で大騒ぎになっています。このときこそ、安全工学の講義で習った危機管理を実践しましょう。感染しないようにするための「予防対策」だけではなく、かかってしまった時の「局限対策」を考えましょう。

 世間に出回っている情報の多くは予防対策に関するものです。しかし,火事の時の消火器のように、感染してしまった時のための「局限対策」も意識しましょう。コロナ肺炎にかかってしまったときのために,何を準備すれば良いのか?。答えは簡単です。インフルエンザにかかってしまった時と同じ準備をすることです。インフルエンザとコロナ肺炎の大きな違いは、特効薬のないことです。インフルエンザはタミフルやリレンザなど特効薬で軽く済ませされます。また、予防接種も有効です。しかし、コロナ肺炎にはワクチンも特効薬もまだありません。25年前のインフルエンザへの対応、対症療法を参考にしましょう。

 一番大事な局限対策は、栄養と睡眠により免疫力を維持することです。それに必要なものは、通常の日常品や食料、水の備蓄に加えて、以下のようなものを挙げられます。

 一人暮らしの場合、おかゆを作ってもらえることを期待できないので、ゼリー食を用意しましょう。あれならのどをすんなり通ります。また、水もミネラルウォーターだけではなく、スポーツドリンクも用意しましょう。桃缶については、各自のご判断でご準備ください。

 風邪薬も買っておきましょう。症状を緩和してくれます。アセトアミノフェン配合の風邪薬をすすめているWeb Pageの信頼性については自己責任でご判断ください。湿布約は筋肉痛の緩和の他に咳の緩和に有効です。のど飴、うがい薬も用意しましょう。ネギよりも長期保存できます。ビタミンCも風邪に良いと言われています。保険証や診察券も準備しておきましょう。

 着替えは多めに用意しましょう。特に汗をかいた後の下着は必要です。風呂やシャワーを使えないときのために身体を拭くデオドラントボディペーパーもあるといいでしょう。湿気た布団の代えの無い場合は、寝袋などを用意しておくと良いでしょう。布団乾燥器も欲しいですね。でもキリがありません。

 最後に、連絡手段を確保しましょう。携帯電話だけでなく、連絡先のメモも用意しましょう。救急車を迷った時の#7119、実家の電話番号、大学の電話番号のメモを作りましょう。自分で連絡できなくなった時にも有効です。

 後はTPOに応じて適切な準備しましょう。

 安全工学で習ったことを活用すれば、準備すべきことを明らかにできます。特に第15回で取り上げたBCPを個人の生活にも当てはめてみましょう。普段の生活に活かしてこそ実学です。

 

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片桐 利真

デマを拡散しないように-2(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

<この記事は2020年3月4日に公開したヴァージョンから修正されています。>

 

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 2020年の2月後半はコロナウイルス騒動で大騒ぎになっています。私も家族を守るためにいろいろな情報を仕入れようとしています。しかし、ネット上はどう考えてもおかしな情報に満ちています。
 以下にFake newsの例を上げます。

**** Fake News ************
拡散お願いします
コロナウイルス対策の内容 ◯◯病院の看護婦さんからのアドバ イスを提供いたします。ご参考にされてください。
今回のウイルスは、熱に弱いそう です。
<中略>
今回に武漢ウイルスは耐熱性がなく、26-27度の温度で死にます。 そのため、お湯をたくさん飲む。親戚にお湯を飲ませれば予防できる。 陽射しの下に行ってください。冷たい水、特に氷水を飲まないでください。 お湯を飲むことはすべてのウイルスに効果的です。ぜひ覚えてください。
コロナウイルスに対する医師の助言: 1.の大きさが非常に大きく、(セルの 直径は約400-500nm)、 すべての 一般マスク(N95の機能だけでなく) もこれをフィルタリングすることができます。
<後略>(原文では◯◯病院のところに実在の病院名が記載されていた。)
****************

 まず、「拡散お願いします」と書かれている情報はFake Newsだと考えるべきです。
 次に、前半の「熱に弱い」ですね。もちろんウイルスは煮沸などには弱いでしょう。しかし、体温より低い「26-27度の温度で死にます」は、どう見てもおかしい(それ以前に「ウイルスが死ぬ」という表現もおかしい)。体温以下の温度でウイルスを不活性化できるのなら、ほ乳類や恒温動物に取り憑いたとたんに不活性化し、感染できません。
 また、後半のウイルスの大きさもおかしい。NIID国立感染症研究所のページにはMERSコロナの情報として「他のコロナウイルスと同様、脂質二重膜のエンベロープに包まれた直径100 nmの楕円体で、エンベロープ表面に王冠に似た突起、スパイクがある。」と記載されています[https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2320-related-articles/related-articles-430/6116-dj4304.html]。インフルエンザウイルスも100 nmです。しかし、このウイルスは周りに水分をまとって実サイズはそれよりも大きなものになるそうです。この100 nmという大きさはPM2.5の粒子の25分の1の大きさということです。この大きさでは、300 nmの粒子を95%シャットするN95と呼ばれるマスクでも減らすことはできても完全に防ぐことは難しいでしょう。一般のガーゼマスクで呼気中のウイルスを防ぐのはほぼ困難でしょう。
 このような不確かな情報、少し調べればおかしいなと思われる情報を拡散してはいけません。どうしても拡散したければ、まず自分で信頼できる情報源により、裏をとりましょう。

 私は「呼気のろ過」による予防という目的でのマスクの使用はあまり期待できないと思います。実際、十分な装備だったと思われるダイアモンドプリンセス号の検疫官も感染しました。医療関係の方々の感染もニュースになっています。医療のプロが同じように感染するということは、人的なミスではなく設備(マスクなど)の機能不足を疑うべきだと思います。我々一般の者は、感染者のいるかもしれない人ごみを避ける予防対策を実践すべきです。
 一方、飛沫感染を防ぐ効果はN95マスクでなくても期待できます。マスクもせずにくしゃみや咳をしている人のそばに行く場合には効果を期待できます。でもより効果的なのは、やはり、そのような人のそばに寄らないことです。患者さんのマスクは飛沫の拡散を抑えることでウイルス拡散防止の効果を間違いなく期待できます。だから、風邪気味の人、花粉症の人は周りを不安にさせないように、マスクをしましょう。
 また、マスクをかけていると、ウイルスに汚染されている手指を口に触れさせない効果を期待できます。電車の手すりやつり革に付着しているウイルスからの感染の懸念される場合、そこに触れた手や指で顔の粘膜を触れる行為は危険です。その意味では、普通の手袋(例えば軍手)も同様に効果的です。手袋をはめた手でそのまま目や口を触らないでしょうから、有効な防御手段になります。

 このように科学的に分析し判断すれば、これから本当に対策すべきことを明らかにできます。このように普段の生活に活かしてこそ実学です。

 

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 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。

片桐 利真

デマを拡散しないように-1(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばを鵜呑みにして踊らされるのは危険です。

 2020年の2月後半はコロナウイルス騒動で大騒ぎになっています。この週末に近所のスーパーへ買い物に行ったら、まだ開店後30分だというのに、マスクの他にトイレットペーパー、ティッシュ、キッチンタオル、特売の米、袋ラーメン、ホットケーキミックス、缶詰などのいくつかの棚は空っぽでした。これまで自宅に備えていなかった人は「売り切れ続出」のニュースを見て我先にと買いだめに走ったのでしょうか。

 1972年のオイルショックの時も「トイレットペーパーがなくなる」という噂で、同じような事態になりました。1993年の米不作の時は埼玉のスーパーの米は消え、販売していても2倍量のタイ米と抱き合わせでした。2011年の東日本大震災の時には岡山でもペットボトルのミネラルウォーターの「売り切れ」を見かけました。「足りない」という情報に対する人の行動はいつも同じようです。
 ここで、本当に足りない、これからも不足するのかは、自分の目で見極めなければなりません。そのとき、定量的な分析能力を必要とします。確かに、マスクは不足しています。日本衛生材料工業連合会のデータ[http://www.jhpia.or.jp/data/data7.html]によると、もともとマスクの生産・輸入量は2018年において55億枚です。一人当たり年間で43枚ですね。日本人の3割は花粉症と言われていますから、花粉症の人は100枚くらいを1年で使うとしてまあ妥当な量でした。しかし、今回の騒動で中国からの輸入されなくなると、国内生産は11億枚なので、年間一人10枚以下しか手に入らない計算になります。これでは品不足になるのは当然です。政府はこの3月に6億枚の生産を指示しているそうです。年間だと72億枚ですから、これから状況の改善を期待できます。あとは供給スピードの問題ですね。
 一方、トイレットペーパーについては、おしりの増加はありません。その需要量はほとんど変化しません。また,その97%は国内生産です。そうすると、今不足しているのは備蓄に回されている分で、家の物置をいっぱいにしたら需給のバランスは元に戻るでしょう。慌てる必要は無いということになります。国内生産の比率の高いキッチンタオルや食料品も同じです。その意味でお米の買いだめもナンセンスと言えばナンセンスです。
 このように分析してみれば、「トイレットペーパーが不足する」というSNS上で拡散している情報はFake Newsだと判断できます。いや、確かにこのようなFake Newsに踊らされた買い溜めにより「一時的に」品薄になるというのは容易に予想されることです。常日頃から災害に備えて2週間分の食品や日用品の備蓄を行なっていれば、このような騒動に巻き込まれません。

 このように定量的に工学的に分析し判断すれば、これから本当に対策すべきことを明らかにできます。このように普段の生活に活かしてこそ実学です。

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片桐 利真

カーボンニュートラルな森林火災(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 昨年末から今年にかけて、オーストラリアでは深刻な森林火災が起こっています。私がオーストラリアで乾燥地植林の研究をしていることを知っている人から「大変なのでしょう?」というお言葉をもらうこともあります。

 とはいえ、私自身のはそんなに危機感はないんですよね。そもそも私が対象としているのは乾燥地。植生が豊かではありません。それでも野火の後に遭遇することはありますが、それが大規模に燃え広がることはありません。(そもそもそんなに燃えるものがないですからね。)

 また、今回のシーズンの森林火災は最近まで南オーストラリアが中心。私の研究対象地は西オーストラリアなので安心していましたが。ただ、先日パース近郊で火災があったというニュースでいよいよ来たか、という感じです。

 さて、この火災のせいで不幸にして命を落とした方もいらっしゃいますし、焼け出されたり家を失った方々のいらっしゃってそれだけで深刻な事態です。野生動物にも大きな被害が出ている、というニュースもありました。ただ、今回お話ししたいのはこの森林火災と温暖化、正確には大気中の二酸化炭素濃度との関係についてです。それも、温暖化による異常気象がこの火災の原因なのかどうか、ではなくて、この火災によって大気中の二酸化炭素濃度が増えるのか、という点です。

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 EmergencyWA(「西オーストラリア緊急情報」とでも訳しましょうか。)では西オーストラリア州の南の方に森林火災(Bushfire)の警告が出ています。一方で中部西河岸では洪水の警報が出ているのですね。

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後進国?発展途上国!開発途上国!!(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回の記事では「日本はすでに先進国ではない」「このままでは後進国になってしまう」という言説について私の考えを述べたのですが、「先進国」はともかく「後進国」という表現、最近は使わない表現です。いつのころからか「後進国」は「発展途上国」と言い換えられています。

 「発展途上国」は英語では "developing country"です。

"developing country"がdevelopを完了して"developed country"になる

こう考えるとわかりやすいですよね。でも

「発展途上国」が発展を完了して「先進国」になる

というのはしっくりきません。発展したからといってほかの国より「先」になるわけではありません。英語での表現は一つの国のdevelopの前と後とを表現しているのに対して、やっぱり「先進国」という表現のもっている他との比較で「先」という感覚が「発展途上国」とは釣り合わないのでしょう。

 いっそ、「先進国」をやめて「発展完了国」と言い換えればどうでしょうか。

「発展途上国」が発展を完了して「発展完了国」になる

となって明快ではないでしょうか。

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先進国とは?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「日本はすでに先進国ではない」「このままでは後進国になってしまう」そんな主張が最近気になっています。今回はこの主張に乗ってみましょう。

 そもそもは有名企業の経営者がインタビュー記事のなかで日本は現状を憂いて「このままでは後進国になってしまう」と言ったのがきっかけだと思いますが、もちろん同様の主張をしている人はその前にも後にもたくさんいると思います。その一つ一つを詳しく検討する時間も意欲もないのですが、私が気になっているのは一点だけ。そもそもこの人たちは「先進国」「後進国」という言葉をどういう意味で使っているのだろうか、という点です。

 「先進国」も「後進国」も、その定義はいろいろあるのですが、私自身がしっくりくると思っているのは「FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」の著者、ロスリング博士がイギリスBBCと作成した動画"Hans Rosling's 200 Countries, 200 Years, 4 Minutes - The Joy of Stats - BBC Four"(「ハンス・ロスリングの200ヵ国200年を4分で」)に示されてる考え方です。この動画では縦軸に寿命を、横軸に収入をとったグラフに世界の200ヵ国のデータをならべ、その200年間の変化を動画で示しています。収入が低く寿命が短い(画面に向かって左下)の領域にあった国々が収入が高く寿命が長い(画面の右上)に向かって移動してゆく様子がはっきりと示されています。後進国とは短命で貧困な国、先進国とは長寿で豊かな国、というわけですね。

 さて、少し話は変わっていわゆる「先進国」「後進国」は英語では何というのでしょうか。それぞれ"developed country "、"undeveloped country"`であって、日本語の持っている「先」と「後」というニュアンスは感じられません。

 先の動画を見直すとすべての国々が左下の後進国から右上の先進国に向かって移動してゆくのが分かりますが、先に移動する国もあれば後から移動を開始していてまだ右上に到達していない国もあります。日本語の「先進国」「後進国」という言葉の持つ「先」と「後」というイメージはここにあるように私は思います。

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