解説

デマを拡散してはいけない-12 第2波、第3波に備えましょう

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。


 一昨日、昨日(2020年5月19日、20日)の東京都の感染者数は5名でした。今回のコロナ禍もやっと収束してきたようです。本学の講義は全て遠隔講義ではじまりました。でも、6月中には「ニュー・ノーマル」での対面講義も可能になりそうです。

 しかし、油断大敵です。歴史を見るとこのような感染症パンデミックは最初の大流行に引き続いて第2波、第3波の大流行を起こしています。日本でのスペイン風邪の流行を見ると、1918年の第1波よりも1919年の第2波での死亡率は4倍も高くなっています。そして、このような流行の波は繰り返し起こり、今日でもスペイン風邪H1N1亜種は弱毒化した季節性のインフルエンザとして毎年流行しているといわれています。

 Covid-19流行の第2波に備えましょう。こんなことを言えば、「縁起でもない」としかられそうです。もちろん、私も第2波は来ないことを祈ります。しかし.最悪を想定するのは危機管理の基本です。津波でも第1波より第2波が大きくなるのはよくあることです。

 幸いに、我々は今回のコロナ禍で多くのことを学びました。我々ひとりひとりのとるべき行動を学びました。また、それに必要な備えについても多く身にしみて学びました。もう少ししたら、以前とは少し異なる「ニュー・ノーマル」の日常生活になるでしょう。今までとは少し違った、それでも日常生活に戻れると思います。そのチャンスにコロナの隙を狙って第2波に備えましょう。4か月くらいの猶予のうちに必要な備蓄を行ないましょう。大学からの支援や国からの給付金を無駄にせず、遠隔授業を受けるための環境整備や後期のテキストの購入に投資しましょう。

 今はまだ「This is not a drill. (これは訓練ではない)」な状況です。でも、これを「This would be a good drill. (これは良い訓練になるだろう)」と言えるようにしましょう。そして、油断はしないように日々自分を律しましょう。

 

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しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 

片桐 利真

 

ダルトン?ドルトン?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以前の記事で原子論の確立に寄与したイギリスの化学者 John Dalton について触れましたが、この「Dalton」の日本語表記、ダルトンでしょうか、ドルトンでしょうか。化学の教科書にはドルトンとあるのはずですが、なんとなくダルトンのような...。そう言えば「ダルトン」という会社があったな。その際はこのように書いたのですがもっと公式な「ダルトン」表記があった、というのが今回のお話しです。

 そう言えば「○○万ダルトンの…」なんてフレーズを聴いたような。たしか学会発表で電気泳動の結果についての議論だったかな。

 そう、ダルトンというのは分子量や原子量の質量を表す単位でした。でも、これって「ダルトン」が正式な発音でしょうか。それとも「ドルトン」?

 ダルトン、というか Da は正確には重さの単位です。原子量12の炭素原子の質量の1/12で、具体的な数値は 1.660 × 10-27 kg だそうです。質量の単位は SI では kg ですが、Da もSI併用単位として認められていると言います。SIは国際条約で決まっているのですから、正式な文書があるはずです。 

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「アボガドロの法則」はヤバいよね。(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 化学を勉強した人間なら「アボガドロ」と来たら「6.02×1023」となるのですが、今回は「アボガドロの法則」のお話し。

 例によって Wikipedia での説明を引用しましょう。「アボガドロの法則」は

同一圧力、同一温度、同一体積のすべての種類の気体には同じ数の分子が含まれる

という法則です。これは「倍数比例の法則」などと違って原子や分子の概念を知っていてもどうしてそうなるのか分からないのではないでしょうか。化学を学び始めた学生さんに、この「アボガドロの法則」を納得できるように説明するのは難しいと思います。

 いえ、ダルトン、おっとドルトンの原子論とゲイ=リュサックの気体反応の法則を矛盾無く説明するための理論だ、という説明は問題ないのです。「同一圧力、同一温度、同一体積のすべての種類の気体には同じ数の原子が含まれる」と考えてしまうと気体反応の法則を巧く説明できない。だから分子という概念を考えて...、とその部分に注目すれば「アボガドロの法則」は分子の概念の必然の結果として理解できる。

 でも、そもそもの疑問として「同一圧力、同一温度、同一体積のすべての種類の気体には同じ数の」何らかの粒子が含まれる、という仮説はどう納得すれば良いのでしょうか?

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「○○の法則」を暗記しておくべきか? (江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログで「倍数比例の法則」「ダルトン(ドルトン)の法則」そして「ボイル=シャルルの法則」について述べてきたので、まとめてコメントを一つ。

 化学の教科書にはこのような「○○の法則」というのが結構な数でてきます。これらの法則はどの程度覚えておくべきなのでしょうか。

 「倍数比例の法則」について紹介したところで述べたのですが、この法則は「原子から物質が出来上がっていることを理解していればあまりにも当たり前」で「なんでこれが法則と呼ばれるほど重要なのか」分からないと思います。ダルトン(ドルトン)の法則」も理想気体が何かを理解していれば当然のこと、「ボイル=シャルルの法則」の法則も理想気体の状態方程式の応用に過ぎません。

 原子や分子そして理想気体というものはそもそも、これらの法則を統一的に説明する、もっと言うと個別の覚えなくても済むようにするために作り出されたものです。極論すれば、原子、分子、理想気体について理解していればこれらの法則は忘れてしまっても構わないと言えるでしょう。

 では、なんで高校でこれらの法則が教えられるのでしょうか。覚える必要の無いものなのに。

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「ボイル=シャルルの法則を生まれてはじめて使いました」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「倍数比例の法則」「ダルトン(ドルトン)の法則」ときて今回は「ボイル=シャルルの法則」について触れてみようと思います。今回も wikipedia から「ボイル=シャルルの法則」の説明を引用してみましょう。

気体の圧力P は体積V に反比例し絶対温度T に比例する

なるほど。「理想気体の状態方程式を知っていれば当たり前すぎてなんで法則と呼ぶのか分からない」とか「絶対温度って何よ。これって絶対温度の定義じゃないの」とか思うのですが、これは措くとしましょう。今回の紹介したいのは表題のセリフ「ボイル=シャルルの法則を生まれてはじめて使いました」というもの。これ、学生さんとガスクロでガスの組成を計る実験を一緒にしていたときに言われた言葉です。

 ガスクロという装置にサンプルのガスを注入すると、そのサンプル内にどんな成分がどれだけ( mol数、おっと今は物質量ですね )含まれているかがわかる。そんな測定です。ガスの各成分の比率が知りたいだけなら、それだけでOK。でもサンプル内のガスの全ての成分を測定できたかどうか、を確認したいと思ったら装置に注入されたサンプルの量を調べて、それが各成分の量の総和と等しい(もちろん誤差があって正確に一致はしませんが)かどうかを検証する必要があります。

 混合ガスをガス採取用のシリンジ(小さい注射器です)で決められた体積だけサンプリングする。これでサンプルの体積を決めることはできます。しかし、同じ体積でも温度の高い日はガスは膨張している。逆に寒い日ならガスは収縮しているので、体積を知るだけではサンプルの量を正確に求めることはできないのです。

 そう説明をして、学生さんにガスクロでの分析時の温度と圧力を測定しておくように手順の説明をしました。そのときの学生さんのリアクションが「ボイル=シャルルの法則を生まれてはじめて使いました」となるわけです。
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「ダルトンの法則」の意味は?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの前回の記事は「ダルトンの法則」を落ちにしたので今回はダルトンの法則について少々。

 例によってダルトンの法則について、wikipedia から引用してみましょう。ダルトンの法則とは

理想気体の混合物の圧力が各成分の分圧の和に等しいことを主張する法則である

とのこと。

 このダルトンの法則、「倍数比例の法則」 とは別の意味でツッコミどころのある法則だと思います。

 気になるのは「分圧」って何よ、という点。気体の圧力は測定できる実体のある物理量なのですが分圧はどうでしょうか?分圧を直接的に測定する手段はありません。混合気体中のある成分のみを通さないような理想的な半透膜があればそれにかかる圧力、ということになるのでしょうが「理想的な」と言っている時点でそんなものはないと言っているのも同じです。だとすれば分圧は全圧にその成分のモル分率をかけた値だ、としか定義できないのでは。モル分率の総和は1と決まっているのですから、分圧の総和が全圧に等しいのは当たり前、ということになるのですが…。

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「倍数比例の法則」とその例外 (江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回は私が高校生のころのお話です。最初に教科書(参考書だったかな)で「倍数比例の法則」を知った時の話です。

 まず「倍数比例の法則」について。Wikipediaの記事(下図)にある様に、「同じ成分元素A、Bからなる2つの化合物X、Yを考える。この時、同じ質量のAを含むX、Yについて、X、Yそれぞれに含まれるBの質量は簡単な整数比をなす。」という法則です。この記事では具体例として一酸化炭素と二酸化炭素の例が挙げられているのですが、私が見た参考書では酸化銅の例が挙げられていました。これは歴史的な経緯を反映したものだったのですが、一酸化炭素や二酸化炭素の例に比べるとシンプルさに欠けるのでは。まあそれは数値が複雑だ、という程度の話なのですがこの参考書に例外として不定比化合物の説明まで書いてあったのです。

 一体何が言いたいのだろう?これが当時の私の印象です。

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デマを拡散してはいけない-11 インフォデミック(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 今回のコロナ禍はいろいろな横文字ことばを流行らせました。パンデミックからはじまり、いろいろなカタカナ医薬品名(アビガン、カレトラ、シクレソニド、ヒドロキシクロロキン、ナファモスタット、イブプロフェン、アセトアミノフェン)、感染拡大に関する用語(アウトブレイク、エピデミック、エンデミック、オーバーシュート、クラスター)、感染防止対策に関する用語(ゾーニング、ロックダウン、ソーシャルディスタンス、ステイ ホーム、テレワーク、リモートワーク)、その他(コロナハラスメント)などなど。いろいろなカタカナ用語をニュースでは使っています。

 その中で、私の気になったのは「インフォデミック」という新語です。これは、大量の情報が社会に「感染症」のように広がり影響してしまうことを指します。2019-2020年Covid-19感染拡大時に、SNSを利用して危険情報などを拡散する速度は2002~2003年のSARSコロナウイルスの感染拡大の時に比べ、68倍も早いとのことです(2020.4.6 日本経済新聞「情報パンデミックの拡散力、SARSの68倍 新型コロナ」)。これはSNSの普及により、誰でも情報を発信できるようになったことによります。このような情報発信は多くの場合は善意で行なわれるのでしょうが、中にFake Newsが紛れこむと、たとえ善意でも社会の混乱を招きます。それが、トイレットペーパー騒動などの社会混乱を巻き起こしました。

 我々は自分が発信する情報だけでなく、自分が「中継」する情報にも責任をもたなければなりません。それは情報を扱う者の矜持です。

 日本赤十字社のWeb Pageに「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう! ~負のスパイラルを断ち切るために~」という特集記事がありました。 http://www.jrc.or.jp/activity/saigai/news/200326_006124.html この中では3つの「感染症」として、①病気そのもの、②不安と恐れ、③嫌悪・偏見・差別、をあげています。あえて分類すれば、①肉体の感染症、②精神の感染症、③社会の感染症、ということでしょうか。この記事にはどのように肉体の感染症が不安をかき立て、それが嫌悪を通して、偏見・差別に結びつくかをわかり易く説明しています。そして、それぞれの「感染症」を防ぐ手段が示されています。

 肉体の感染症の予防には、「手洗い」「咳エチケット」「人ごみを避けること」が示されています。精神の感染症に振り回されないためには「気づく力」「聴く力」「自分を高める力」が必要であることをまとめています。そして、社会の感染症を防ぐには「ねぎらい」と「敬意」が重要であるとしています。

 まとめてしまうと簡単になりすぎますが、皆さんには是非このページを訪れ、自分でこの記事を見てほしいと思います。当たり前のことを当たり前のようにやることが安全の基本です。

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しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 

 

片桐 利真

 

デマを拡散してはいけない-10 もう少しの辛抱です(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。


 政府の外出自粛の要請から1週間が経ちました。私も在宅勤務になり、会話するのは家族とたまにスーパーへ買い物に行った時にレジのお姉さんだけになりました。これが、後3週間も続くと考えると「萎え」ます。

 ネットの掲示板を見ると、「このまま自粛をすれば経済が死ぬ。病死するか飢え死にするかなら、俺は病死を選ぶ。飢え死には嫌だ!。どうせ若者は死なないし。みんな、外へ出て経済を活性化しよう。」という匿名の主張が散見されます。この考え方にも一理あります。現状の自粛は「持続可能な発展」を放棄した状態であり、「サステイナブルではない」といえるかもしれません。でも、日本も世界もその道を選びました。サイは振られたのです。

 かなり前に、井上純一「キミのお金はどこへ消えるのか」角川書店というマンガの書評をこのブログに書きました(2018.10.30ブログ)。そこで、2つの経済政策、幕府—徳川吉宗の「倹約」と尾張藩−徳川宗春の「振興」を対比させ、「どちらも正しい、しかし、中途半端はいけない」と結論付けました。今回のコロナ肺炎騒動では日本も世界も「節制」によりコロナ感染を沈静化させた後に経済的なダメージをU字回服させる道を選びました。戦術としての節制と自粛です。
 本日15日の読売新聞(2020.4.15 13S 9面)にIMF成長予測の経済低迷の3つのリスクシナリオが掲載されていました。基本シナリオは最善のもので、「感染症の拡大が2020年後半に収束する」というものです。リスクシナリオ①は「封じ込め期間が基本シナリオよりも5割長くなる」、リスクシナリオ②は「2021年に第2弾の感染拡大がある」、リスクシナリオ③は「封じ込め期間が長期化し、(続けて)2021年に第2弾の感染拡大がある」、というものです。そして経済成長予測は、基本シナリオで、2020年は3.0%の下落、でも2021年は5.8%の成長、シナリオ①、シナリオ②では2020年は下落、2021年は基本シナリオより低いけどまだ成長、でもシナリオ③では2020年21年ともに3%程度の下落が続くという予測です。いずれにしても2020年の経済低迷は避けられない、しかし、2021年以降の経済状況はシナリオにより異なります。これは学生皆さんの就職にもかかわることであり、注視しなければなりません。

 このIMFの成長予測は、新型コロナ肺炎対策として「節制」を前提とした世界の流れを前提にしているので、「節制」を行なわなかった場合との比較はできません。しかし、「節制」を行なうなら、徹底して行なうことで、早期収束を目指すことの重要性を示しています。やるなら徹底的に行なうことを求めています。

 もはやサイは振られました。世界の方針が「節制」による早期収束と決めたのなら我々もその方針を守り、そのための努力(=引きこもり)を徹底するべきだと思います。ネット上の「経済を殺さないために、私は普段の生活を放棄しない」という主張は自分のストレス発散を正当化するための言い訳とも見なせます。一方で、私のこのような意見は意見の多様性への弾圧でもありましょう。しかし、今は多様性よりも一致団結して共通の敵と対峙すべき時ではないかと思います。
 我々はそのような易きに流れる主張に呑み込まれないように、揺らがないようにしましょう。やるなら徹底的にやらなければ作戦は失敗に終わります。少数でも裏切りで作戦は失敗に終わります。もう少しの辛抱です。あと3週間の辛抱と信じてがんばって引きこもりましょう。コロナから逃げ切りましょう。

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 心理学的に、今回の1か月という期間は、正直、我慢できるぎりぎりの線でした。もしこれが3か月とか半年なら、最初から自粛をあきらめ、私は普段通りの生活をしていたでしょう。「危機管理は最悪を想定するのが基本」です。したがって、まだ正体不明のコロナ感染症について、最悪を想定するのなら半年を想定するべきでしょう。しかし、あえて1か月と楽観的に想定し、その上で実現困難とも思える接触の8割減を打ち出したのは、政治家の大きな決断だったと思います。実際、政府と都の間ではその戦術に関して活発な駆け引きがあったようです。

 しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

片桐 利真

 

デマを拡散してはいけない-9 イブプロフェンとコロナウイルス-2  LancetのCorrespondenceの紹介(片桐教授)

| 投稿者: tut_staff

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 Lancetという医学雑誌の2020年4月号に、糖尿病や高血圧などの基礎疾患を持つ方やイブプロフェンの投与による、コロナウイルスによる肺炎の劇症化の理由に関する仮説が紹介されていました。

https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30116-8

他大学の友人がFacebook経由でこの論文を紹介してくれました。

 私はこの分野の専門家ではないので、30年前に学んだ細胞接着の知識を元にこの文献の解説をしてみたいと思います。もちろん,非専門家の解説ですから、間違いがあるかもしれません。また,この論文に書かれている内容そのものがまだ仮説でしかありません。

 だからこそ、このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら自分で論文を読み、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。

 人の細胞は、「アンジオテンシン変換酵素(ACE)」と呼ばれる酵素を持ち、それを細胞外に飛び出させ、作用させています。このACEのうち、ACE2という酵素とSARS-コロナウイルスのエンベロープからから飛び出したトゲタンパク質とはくっつき易い性質を持っています。このACE2は肺や腸や腎臓の上皮細胞に現れる酵素だそうです。

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 さて、このアンジオテンシン変換酵素(ACE2)はアンジオテンシンというペプチドを作ります。アンジオテンシンは、血管を収縮させたりして血圧を押し上げる作用を持ちます。だから、高血圧の人や糖尿病のような基礎疾患を持つ人は、高血圧で血管に負担をかけることを避けるために、このアンジオテンシン受容体の拮抗阻害剤を継続的に服用しています。

 しかし、人体は何らかの理由で血圧を上げているので、そのような形でアンジオテンシンの作用を邪魔されれば、ACE2酵素を増やしてアンジオテンシンを増産しようとします。薬でブレーキを掛けているのに、体はその分アクセルを踏んでしまいます。この増えたACE2酵素がコロナウイルスの標的になり、コロナウイルスを取り憑かせてしまう=感染促進してしまう、ということです。そして、このACE2酵素はイブプロフェンによっても増加するそうです。

 なるほど、イブプロフェンと基礎疾患の話しがつながりました。ACS2酵素の増大が、コロナウイルスを取り憑かせ易くして、劇症化を招くということのようです。

 でも、この文献は多くの仮説を含み、そのため「風邪が吹くと桶屋が儲かる」的な一つ一つは正しい因果関係でも、全体では正しいのかどうか、まだわかりません。また,だからどうすればコロナ劇症化を防げるかに関して、有効な示唆を行なっているわけでもありません。

 そして、ACE2阻害剤は高血圧患者さんの命綱です。コロナウイルス感染が恐ろしいからといって、高血圧の人が服薬を控えれば、命にかかわります。

 コロナウイルスの制圧には,我々はまだまだ無知です。

 八王子市のホームページによれば、4月9日時点の市内の感染者は14名です。https://www.city.hachioji.tokyo.jp/emegency/007/p026487.html

 八王子市の人口約58万人ですから感染者は4万人に1人です。その低い確率のリスクと薬を控えるリスクでは、後者の方がより大きなリスクです。それでも、毎日行なわれる報道で「怖いよ」と刷り込まれてしまうと、恐怖心から本当の危険を見誤ることになるのではないかと、危惧しています。

 しつこいようですが、このブログの内容は不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解してから、自分の言葉として発言しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは危険な行為です。

 

片桐 利真

 

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