日記 コラム つぶやき

「純水を飲むとおなかを壊す」という都市伝説(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「都市伝説」というのはおかしいかな。「研究室(ラボ)伝説」とでも言うのでしょうか。研究室で先輩から後輩に語られる話には大切な注意事項や奥深い教訓に混じって真偽不明(おそらく偽)なお話が色々とあるものです。

 私が学生のころに聞いたそんな「研究室(ラボ)伝説」の一つが表題の「純水を飲むとおなかを壊す」というもの。でもこれ絶対おかしいですよね。純水と普通の水の違いは微量の混合物があるかないか。主成分は水であることには変わりはありません。もちろん水が体に悪いわけはない。残りの微量な成分で問題が起こる、というのなら話は分かりますが、微量な成分がないことで問題が起こる、というのはどうにも考えにくいことです。

 それに胃袋に水が入った状況を考えても、胃袋が空っぽ、なんてことがあるのでしょうか。胃袋の中にはもともと胃液があって、それに混ざったら微量成分が無いことなんて関係なくなってしまうと思います。

 とは言えこれは机上の議論。科学者たるもの実験で確かめるのがあるべき姿でしょう。ここは純水を飲んでおなかを壊すかどうか確認するべきでは?

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「考えるな!再起動するんだ」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 最近はパソコンがフリーズしてしまう、ということはあまり多くはないかもしれません。でも私がパソコンでワープロソフトを使うようになったころのパソコンは当たり前のようにフリーズしたり動作が怪しくなったりしたものです。

 一生懸命文章を作っていたらパソコンがフリーズしてしまった。一体どうして。何もおかしな操作はしていないと思うけど、どこが悪かったのだろう。

 いっそのことフリーズしてしまえばまだあきらめもつくけど、作った文章が保存できない。どうやったらちゃんと保存できるんだろう。

こんな時に私が言っていたのが表題の「考えるな!再起動するんだ( Don't think! Reboot.)」です。

 パソコンがフリーズしてしまったらセーブしていないデータを回復することは不可能。考えたって無駄です。そして不具合の多くは再現性のないものなので、いちいち理由を考えても仕方ない。どんなにいろいろ考えても結局はパソコンを再起動して新たにやり直すしかないですよね。

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会議と笑い(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 昔、いわゆるビジネス書(たしか「7つの習慣」スティーブン・R. コヴィー著 だったかな)で以下のような話を読んだ記憶があります。

 おっと、これはこちらの記事と同じ始まりになってしまいましたね。でも別の話ですからご安心を。今回思い出したお話は……

会議が長い、いや長すぎる、という不満はどこの組織にもあるものですね。いろいろな企業にコンサルタントとして雇われる著者は、クライアント企業の会議メンバーの一人にこんな秘密のミッションを授けるのだそうです。「○○さん、あなたは次の会議をなるべく早く終わらせるように動いてください。」でもこれは達成不可能なミッション、いわゆるミッション・インポッシブルだそうで、会議を短くすることはほぼ不可能。それどころか会議時間はいつも以上に長くなるのだとか。

会議を早く終わらせようとして、発言者を急かす、話を中断しようとする、こんなアクションをとられると件の発言者は「この話の重要さが伝わっていないのだろうか。これはいけない、もっと丁寧に説明しなくては。」と考えてますます発言が伸びるのだとか。だから「人の話をちゃんと聞くのが結局は早道だ」という文脈だったと記憶しています。

 さて「会議が長いという不満はどこの組織にもある」と書いたとおり、実は私も会議が長い、と感じる瞬間があります。よーし、この不可能なミッション挑んでやるぜ。

 そして何と!良い方法を見つけたんですよね。

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真剣勝負なのにずっと引き分け、それが何年も続くなんてあり得ますか?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 新型コロナウイルスによる感染症、いわゆる「コロナ」が話題になり始めたのは2019年末辺りだったでしょうか。当初は致死率も高く、非常に高い伝染性によってコロナ禍という世界的な事件を引き起こしました。

 このブログを読んでいるあなたが高校生だとしたら、いや、高校生だとしてもコロナ禍とそれによる世の中の大混乱はよく覚えているのではないでしょうか。私などはこのCOVID-19以前のSARSやMERSなどの病原性ウイルス出現の事例を思い出して「まあ、何とかなるだろう」程度に思っていたものです。でも、その後の展開は皆さんご存じの通りに。

 さて、このCOVID-19のパンデミックが深刻化したのはこのウイルスの高い感染性が原因です。それは潜伏期間が長く、そして症状を自覚する前に他人にウイルスを感染させてしまう、というこのウイルスの特徴に基づくものでした。ウイルスに感染した人が、自分の感染に気が付く前にいろいろなところに出かけ、多くの人に接触してしまう。それが新たな感染者を増やすことにつながるのです。

 ではこの長い「潜伏期間」はどのくらいの期間だったのでしょうか。中国の武漢で発見された最初のCOVID-19では「平均5.6日。最長で14日間」だったとか。なるほど。潜伏期間は5.6日や2週間でも「長い」部類なんですね。

 ここで前回までのストーリーに戻りましょう。牛に発生する病気BSE(牛海綿状脳症)について。その潜伏期間は4~6年程度だとされています。えっと、書き間違いではありません。4~6「日」ではなく4~6「年」です。COVID-19の100~300倍ほど。桁違いの長さなのです。

 これ、BSEの病原体が実はウイルスでも細菌でもなく、異常プリオンと呼ばれる一種のタンパク質である、というBSEの特徴が原因です。「異常」プリオンと呼ぶくらいですから、もちろん正常なプリオンもあります。そして正常なプリオンは牛の脳に、中枢神経系、末梢神経系、さらに低レベルであれば身体のあらゆる部位に存在しているのです。それどころか牛以外の哺乳類、たとえば人間にも存在します。BSEの病原体である「異常プリオン」はそんなありふれたタンパク質である(正常)プリオンが変質したものなのです。

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歯医者さんとリサイクル(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 べつに歯が痛くて大変だった、というわけではありません。歯の定期的な検査と歯石のお掃除、というところ。それをなんでわざわざブログに書こう、と思ったかというと診察が終わって料金を支払った帰り際に「医療廃棄物はすべて完全焼却処分を行います。」というポップを見たからでした。

 そういえば診察台に乗せられて歯石を削る作業をされていたとき、なにやら作業用のアタッチメントを袋を破いて取り出していたことを思い出しました。おそらく使い捨ての部品が殺菌されて袋詰めにされて納品されていたのでしょう。一度使用してゴミ箱へ、そして完全焼却、という訳です。リサイクルやリユースが推奨される世の中でこれは如何なものか、あまつさえポップをつくって誇らしげに「完全焼却処分」とはこれ如何に。

 でもこの場合はこれが正しいのだと思います。

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映画「不都合な真実2」にはまだ言いたいことがあるんだ(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前回前々回と映画「不都合な真実2」を擦り続けているのですが、もう一言良いですか?(いや、これで最後にしますから。)

 「不都合な真実2」は気候変動問題の世界に注目させた映画(と書籍)「不都合な真実」の約10年振りの続編。日本語版のタイトルは「不都合な真実2 放置された地球」ですが、原題は「An Inconvenient Sequel: Truth to Power」です。今回は原題の副題にもはいっている「TRUTH」について、一言もの申させてほしいのです。

 映画は、世界各地で進む気候変動の影響を映像とデータで示しながら、アル・ゴア氏が講演や研修を通じて対策を訴える姿を追います。再生可能エネルギーの普及状況や企業・政治家との協力の様子が紹介され、特に2015年のCOP21でパリ協定が採択されるまでの交渉過程がこの映画のメイントピックです。インドとのやり取りも焦点となり、国際的合意形成の難しさが描かれるが、映画は最後に「TRUTH TO POWER」というメッセージで締めくくられています。

 さて、この映画のキーワード「TRUTH」とは何を意味しているのでしょうか。まずは、気候変動についての知識、と常識的に考えましょう

「人間が化石資源を利用して二酸化炭素を大気中に排出したことにより地球の気候に変化が起きている」

ということでしょうか?

 これを温室効果ガスの排出量削減に対して消極的な人、たとえばインドのモディ首相に伝えたとします。それで

な、なんだってー!これは大変だ!我が国で電気を使えない3億人の人たちのために火力発電所なんか造っている場合じゃないぞ、すぐに二酸化炭素の排出量削減に取り組まなくては

となる……わけないですよね。

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Our World in Data の事(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 ここ最近の記事で物価についてのデータを紹介していますが、そこで引用したサイト「Our World in Data」について紹介しましょう。まず Microsoft Copilot に尋ねたところ、次のような説明が返ってきました。

Our World in Data(OWID)とは

  • オックスフォード大学の研究者が運営する非営利のデータ公開プロジェクト
  • 世界の大きな課題(貧困、健康、教育、環境、人口、戦争など)について
    長期的な統計データをグラフや地図でわかりやすく可視化している
  • データは すべて無料・オープンアクセス・オープンソース
  • 世界銀行や国連、WHO などの公的データを整理し、
    誰でも使える形にして公開している
  • COVID-19 のパンデミック時には、
    世界のワクチン接種データの主要ソースとして国際機関にも利用された

なるほど。特に最後のポイント、COVID-19に際しての利用には心当たりがあります。2020年ごろ、私自身も結構このサイトで COVID-19 の世界的なパンデミック状況について調べていました。たしか、それ以前からこのサイトのことは知っていたのですがあの当時が一番このサイトにアクセスしていたように思います。(今見てみると一部のCOVID-19関連のデータはアップデートが中止されているようです。)

  さて、このようなサイトが存在していること、これは今の世の中(いわゆる情報化社会)というかインターネットが一般的になった社会の非常に良い一面だと思います。

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世界の物価動向(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 ここ最近、2022年以降の物価上昇について紹介しているのですが、今回は世界の動向について見てみましょう。以前も紹介した Our World in Data というサイトのデータ(世界銀行のデータをIMFがまとめたもの)を利用しましょう。このデータは2010年を100としているのでグラフの横軸も2010年からスタートとしましょう。たくさんの国のデータがあるのですが、まずはアメリカ合衆国(図では United States ですね)とEU代表としてドイツ( 同じく Germany )をグラフに表示してみました。

 アメリカとドイツのグラフ、データの絶対値は少し違いますが形はよく似ています。そして日本の形とはかなり異なっています。

 まず、日本の物価上昇が始まった2022年とそれ以前(2021)とを分けて考えましょう。2021年以前の日本は、2014年のちょっとした上昇を除いてほとんど変化がありません。(ちなみに2014年は消費税増税があった年です。)その一方で、同期間のアメリカ、ドイツの物価はゆっくりと(年率1%~2%くらい)ではありますが増加を続けています。

 その後の経過は日本と似ていて、急速な上昇に転じています。アメリカ、ドイツともに物価の上昇は2021年にはスタートしており、さらにいえばその上昇幅がかなり大きい。実際2022年の指数は日本では2020年比で2.2%増であったのに対し、ドイツでは10%増、アメリカでは13%増と著しく大きいのです。

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デフレ経済下の日本(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回の記事は前回の続きです。最近の物価高を切っ掛けに、昔日本が物価の上昇、つまりインフレを経験していた時代に働いていた私の父の話をしたのですが、その後の父の話をもう少し続けたいと思ったのです。

 昭和5年(1930年)生まれの父は1973年以降の狂乱物価の直前に家を建て、住宅ローンはインフレの影響で返済はかなり楽になったはずです。そして60歳の定年を迎えてリタイアしたのは1990年ころ。このころはバブル景気の真っ最中でしたが、すぐにバブルは崩壊。その後日本では2022年まで物価が上昇しない、下手をすると下落するデフレ経済に陥るような状態が続いたのでした。

 さて、1991~93年のバブル崩壊以降のデフレ経済の中で、父はどのような暮らしをすることになったのでしょうか。

 父はいわゆる年金生活者となったわけですが、幸いなことに手厚い企業年金を受け取っていて生活にはかなり余裕があったようです。父から聞いて印象に残っている話があるのですが、父と同じころに退職した同僚に企業年金の代わりに一時金を受け取った人がいたとか。

年率5%以上で資産運用をするなんて簡単なのだから一時金で受け取って自分で運用した方が良い

というのがその理由(父の勤務先は金融機関だったのでみんな金融リテラシーが高かったのでしょう)。しかしデフレ経済への移行によって資産運用で利益を得ることは難しくなりました。その一方で父は年金をもらい続けていたのです。詳しい内情は分かりませんが、父の年金は勤務先だった企業が父の代わりに運用に苦労して、というかおそらく年金の原資を補填して維持されていたのではないかと思います。言いにくい話ですが、その企業で働いている現役世代の人たちが私の代わりに父に仕送りをしてくれていた、ということでしょうか。

 さて、1990年にリタイアした父は母ともども世界各地に旅行に行ったようです。

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物価が上がるのは良いことか?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回のタイトルは「物価が上がるのは良いことか?」としました。「いや、良いわけないだろう!」という声が聞こえてくるようですね。わざわざこんな記事を書こうと思ったのは、以前の記事の終わりに書いたこと

物価が上昇することは過去に働いて貯蓄をしていた人たちよりも、現在働いてお金を稼いでいる人たちが有利になる現象

について補足が必要だろうと思ったからです。

 ということで今回は、物価の上昇局面で働いていた人の実例を紹介したいと思います。誰あろう、私の父のお話です。

 私の父は昭和5年生まれ。戦前の生まれです。終戦の昭和20年(1945)には15歳で「マッカーサー暗殺」を企てるような血気盛んな少年だった、と語ってくれたことがありましたが、果たして本当だったのでしょうか。その父が働き出したのは1950年ごろ。戦後間もなくのことなのでデータも整っていなかったのでしょうか、総務省のデータは1970年からしかありませんでした。少し探して Our World in Data というサイトで以下のデータを見つけました。もともとは世界銀行のデータをIMFがまとめたもので、1960年からのデータが示されています。

 入社10年目くらいの父が暮らしていた日本は年に5~6%物価が上がる社会。いまの日本よりもかなりのインフレだったのです。そんな父が人生最大の買い物をした、つまり家を建てたのが1973年ころ。私は1973年4月には新築の家に引っ越して新しい学校に転校しましたから、1973年に入る頃には家は出来上がっていたのですね。そして、この1973年ころから物価は急上昇を始めます。いわゆるオイルショックの影響です。

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International Monetary Fund (IMF) International Financial Statistics, via World Bank (2025) – processed by Our World in Data

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