日記 コラム つぶやき

アーサー・C・クラーク氏の想像した未来社会の教育(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 アーサー・C・クラーク氏は著名なSF作家。単なる小説家に留まらず科学者としての業績もある人物で静止衛星のアイデアを提案したのはクラーク氏だという逸話もあります。代表作は映画化されて有名になった「2001年宇宙の旅」だと思いますが、昨日紹介したSF小説「渇きの海」の作者でもあるのです。

 さて、今回はこの「渇きの海」の中で強烈に印象に残っているエピソードを紹介したいと思います。

 月に恒久的な基地が建設されて旅行客はおろか観光客までが月に行き来するようになった未来。とはいえ月にいけるのはやはり富裕層のみ、という程度の近未来がこの小説の舞台です。印象に残ったのは、このストーリーの中で大きな役割を果たす一人の科学者の生い立ちが語られる部分。彼は実は孤児だったのですが(おそらく)政府の支援によって高等教育を受け博士号を取得してエンジニアとして恵まれた地位に就いています。孤児と言えばチャールズ・ディケンズの小説に出てくるような境遇を想像していた当時の私からすれば非常に恵まれた境遇に見えるのですが、でも彼自身はそのことに特に感謝はしていません。なぜならこの小説が描く近未来の世界では「文明はいまや、それ自身を維持するためだけにも、見いだしうるすべての才能を必要としている」から「あらゆる子供にたいし、その知性と適性に応じた最高度の教育がほどこされる」のであって、政府の支援は社会そのものの利益のためにもたらされたものだからだ、というのです。

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「デカルト・カント・ショーペンハウエル」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログを読んでいるあなたがもし高校生だとして、はてどのくらいの人かタイトルの「デカルト・カント・ショーペンハウエル」のことを知っているでしょうか。いや、デカルトもカントもショーペンハウエル知ってますよ。有名じゃないですか、という人も居るかと思いますが、実はこの並びに意味があるのです。

 もったい付けるのは止めましょう。この「カルト・カント・ショーペンハウエル」をひとまとめにした「デカンショ」をかけ声にした「デカンショ節」という歌があるのです。(もっとも「デカンショ」の語源については諸説ありますが。)

 デカンショ、デカンショで半年暮らす

 後の半年ゃ寝て暮らす

という歌詞。これは「デカルト・カント・ショーペンハウエル」をネタに哲学の議論に花を咲かせることと、惰眠をむさぼること以外何も生産的なことをせずに怠惰な生活をする、という頭は良いのかも知れないが決してが賢くはない大学生の自堕落な生活を自虐を込めて、あるいは憧憬を込めて歌ったものなのです。

 あっ、ちょっと待って、怒らないで。これを読んでいるあなたが「今の」大学生なら「ふざけるな!」と言いたくなるはず。でもここで自堕落な生活を送っているという「大学生」は明治時代後期から戦前の昭和のころまでの学生のこと。この「デカンショ節」は当時の有名な学生歌なのです。

 さて、「寝て暮らす」が怠惰な生活なのは誰でも分かることだと思いますが、「デカンショ」をネタにした哲学の議論がなぜ怠惰で自堕落だということになるのでしょうか。これは議論(つまりディスカッション)には娯楽という側面があるということを反映しています。

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年末なので人間ドックに行ってきました(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「春、新学期の学生諸君にはガイダンスをはじめとしていろいろなイベントがありますが、その中には健康診断も。でも本学には秋の健康診断があります。いえ、学生諸君に二回目の健康診断を受けてもらう訳ではありません。秋に行われるのは教職員の健康診断なのです。」

 なんて書き出しの記事を毎年10月ころに書いているのですが、今年は無し。実は健康診断の通知を見落としていて予約の手続きができなかったのです。10月のある朝、大学にレントゲン車が停まっているのを見つけてやっと気が付きました。これはいけない。でも件の健康診断の通知を見ると「学内の健康診断をしなかった人は人間ドックに行って診断結果を提出してください」との注意書きが。おまけに人間ドックの費用の一部補助もあるとか。そうか、なら人間ドックに行ってみよう。

 以前、大阪に住んでいた頃は大阪城近くの大手前病院の人間ドックに行っていたものですが、はて、ここだとどこの病院が良いのだろう?人間ドックの費用補助について問い合わせたついでに担当の人に「皆さんどこに行ってますか?」と聞いて教えてもらったところから「相模原総合検診センター」を選びました。日にちは自由に選べるので大学の授業が終了した冬休みにい行くことに。

 さすがに専用の施設で行う人間ドックだけあって、大学で行う健康診断に比べて内容は充実しています。それにオプションの検査もいろいろ。今年は厄年だし、思い切っていろいろ検査してもらおうか。

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化学者かギターヒーローか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 先の記事で紹介した本学のイベント「大学院フェスティバル」改め「サステイナブル工学研究会」、内容が「お祭り(フェスティバル)」から「学会(研究会)」にシフトしていると書いたのですが、そんな中でもお祭り要素満点の出し物が若手教員によるパネルディスカッションでした。本学工学部の若手の先生たちが自分の子供時代から今に至るまでを語り、学生達、いえ後輩達の参考にしてもらおうという企画です。なにしろ大学院進学は人生の大きな転機ですからね。

 さて、今回のパネルディスカッションでのお話。化学系の先生が実は中高時代にギターヒーローを目指して練習に熱中していたという意外なエピソードが。

 この先生はいろいろあって現在は化学者となっている訳ですが、さて、これが今2020年代の中高生のお話だったらいったいどうなるのか、少し考えてしまいました。

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「平均」にもいろいろありまして(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 本日のお題は「平均」です。

 平均とは何ですか、という問いに対しては「複数の数字に対して、その全てを足し算した値を数字の個数で割ったもの」というのが普通の解答でしょう。これはこれでまったく問題ありません。ただ、この解答は平均値のもとめかたを述べているだけで、本来、平均とは何であるかを説明してはいません。

 では、あらためて平均とは何なのでしょうか?

 例えば「複数の数値を1つの数値で代表させたもの(代表値)の一種」となるでしょう。そうであるならば別に平均値を「足し算して割った」ものに限る必要はありません。

 たとえば「幾何平均」と呼ばれる「平均」は「複数の数字に対して、その全てをかけ算した値を数字の個数分の根をとったもの」です。(これに対して普通の「平均」は算術平均と呼ばれます。)

 また「調和平均」は「複数の数字に対して、その逆数の算術平均の逆数」となります。

 下図には0から1まで変化するxに対してxと1-xとのいろいろな平均値を計算したものをグラフ化しています。

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チーズと豆腐(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

「ねぇ、チェダーチーズはどうしてチェダーチーズって言うの?」

「それはね、イギリスのチェダーという町でつくられていたチーズだからさ。」

「ふーん、じゃあゴーダチーズは?」

「ゴーダチーズはオランダのゴーダという街が発祥の地なんだよ。」

「なるほど!じゃあプロセスチーズは?」

「アメリカ西海岸のプロセス地方で…、ってそんなわけあるかい!」

 さて、件の「プロセスチーズ」英語では「processed cheese」というそうです。「処理されたチーズ」ということですね。

 最近いろいろなものが値上がりしています。チーズもその一つ。単に値上がりするだけなら我慢するのもありですがスライスチーズのサイズが異様に小さくなったり、いつものシュレッドチーズが食品の棚から無くなってしまうというケースも。

 仕方なくいろいろなシュレッドチーズを試しているのですがなかなか満足の行くものに出会えません。私はチーズを加熱してドロドロになった状態が好きなのですが、何というか加熱してやわらかくなっても「プラスチック感」みたいなものが強すぎる製品が多い気がします。

 そんな中で豆腐で作った「シュレッドチーズ」の代用食(?)を見つけました。これは試してみなくては。

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鍋を酸で洗う話(江頭教授)

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 先日はアルカリ成分を加えた洗剤の話を書いたので今回は酸について書くことにしましょう。随分前の話ですが新しいアルミの鍋を買ってきてパスタやそうめんを煮るのにしばらく利用していると、なんだか鍋の内側が黒ずんできたのです。色が変わっているのはちょうどいつも水を入れるくらいの高さ。うーん、これは一体…。

 調べてみるとアルミ鍋の表面に付けてある酸化アルミの被膜が剥がれて水酸化アルミが生成していることが原因とか。なら白いはずでは、とも考えたのですが粉になっていれば多少の着色でも黒く見えるものですよね。純粋な酸化アルミで白く見えるケースもあるそうですが水に含まれる不純物で色が付き、黒く見えることもあるそうです。

 ここまで分かれば解決方法は比較的簡単なのでは。水酸化アルミを酸で溶かしてやれば良いのですね。

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私事ですが…(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 いや、全くの私事なのですが私は本日が誕生日でして60歳となりました。

 だから何だ、という話なのですが一応区切りの年ですよね。今まで学生さんに

温暖化がこんなに話題になるなんて、おじさんの私からすれば感無量だよ

と言っていたのを一文字増やして

温暖化がこんなに話題になるなんて、おじいさんの私からすれば感無量だよ

と言うことにしなくて。

 あっ、良いこともあります。映画がシニア料金になって割引になる。それから「60歳未満は…」と後回しにされてきたワクチン差別からもおさらば。いや、これはもう解決済みだったかも

 それ以外は、はてあまり思いつかないのですが…って、いやいや六十歳なら「耳順」ですよね。

 

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そうそう節目の年というなら「還暦」もありました。

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水酸化ナトリウムと洗剤(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 11月ももう終わり、ついこないだ2022年が始まったと思ったら(いや大袈裟)もう年末(これも大袈裟)です。

 というわけで年末の大掃除を意識しているのでしょう(要出典)最近、掃除絡みの話題がちらほらと。そんな中に「業務用の洗剤を使ったら油汚れが凄くきれいになった」という話がありました。

 洗剤の主成分は石けん、あるいは界面活性剤ですが用途によってはアルカリ剤として水酸化ナトリウムが入っています。取りにくい油汚れを取り除く、というか溶かして処理するためでしょう。油汚れを乳化させて取り除くのが石けんの働きですがいっそのこと油を水酸化ナトリウムで分解してしまえば水に溶けるようになるはず。この反応は石けんを作る化学反応であるケン化そのものですから「石けんで油をとる」ではなくて「油を石けんにする」ことできれいに取り除こう、という考え方ですね。

 試験管やビーカーに油と水酸化ナトリウムを入れてよくかき混ぜて加熱すれば確実に石けんになるのですが実際に油汚れを試験管に入れることはできません。(いや、試験管に入れられるならもう掃除は終わっていますよね。)それに一般的に加熱するのも難しい。となればなるべく高い濃度で反応を早くしてやろう、と考えることになります。5%、10%、いやいっそのこと飽和濃度まで。でもそんな製品は一般では入手できません。5%を越えて水酸化ナトリウムが溶けている薬剤は「劇物」として扱われることになるのです。

 

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やはり電力‥‥!! 電力は全てを解決する‥‥!!(江頭教授)

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 いや、何の話かというと先日紹介した「サステイナブル工学プロジェクト演習」の中間発表会の感想です。

 この発表会、内容はいろいろな工業製品について、そのライフサイクル全体での環境負荷をどのようにして小さくするか、その方法を提案する、というものです。発表は8会場にわかれて行われ、私は各会場をいろいろな発表を聞いて回りました。全体の発表数と比べるとごく一部の発表しか聞いていない計算なのですが、それでも各発表に共通する特徴があったと感じています。

 今回の発表では環境負荷を「温室効果ガスの排出量」で評価しているのですが、この評価基準だと多くの発表で「電力」の問題に行き当たるのです。

 いろいろな製品のLCAで電力が全く使われていないケースはほとんどないでしょう。ですから電力のCO2原単位(発電等でどのくらいCO2が発生するか)が下がれば全ての製品で温室効果ガスの発生量が削減される。そう、「電力は全てを解決する」のです。

 これは今回の発表だけの話ではありません。世のなか全体の温室効果ガスの発生量の削減、つまり脱炭素社会の構築に際しても「電源の脱炭素化」には大きな役割が期待されています。

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