日記 コラム つぶやき

水素自動車のバスを見つけた!(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 我々応用化学科は東京工科大学の八王子キャンパスに所属しています。その八王子キャンパス近くの交差点(近所の人にはラーメン屋さんのある交差点といえば分かるでしょうか)で、随分前に真っ白なバスを見かけたことがあります。インパクトあるなぁ、と思って良くみると黒いゴチック調の文字で「Fuel Cell Bus」と書いてありました。

 Fuel Cellは燃料電池のこと。つまりあのバスは燃料電池で水素から発電した電気を使って走る水素自動車だったのですね。

 以前、そんな事があったのですが、先日また同じ交差点で水素自動車のバスを目撃しました。急いでとったのが以下の写真。(バスが交差点に入ってくる前から見ていたのですがスマホを出すのに手間取って右折したあとの後ろ姿しか取れませんでした。)

 今度はカラーリングされていて白無垢の時ほどのインパクトはありません。でも別の意味で個人的にはかなりのインパクトが…。

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江戸時代の平均寿命と平均余命(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 こちらの記事で紹介したように日本人の平均寿命はいまや80歳を越えています。でも昔の平均寿命はもっと短かった。例えば人口歴史学者の鬼頭宏氏は「人口から読む日本の歴史 (講談社学術文庫)」のなかで

出生時平均余命が五十歳を越えたのは、第二次世界大戦後の1947年であった

と述べています。ここで言う「出生時平均余命」生まれてすぐの子供がそれから後何年生きると期待できるか、という数値。要するに平均年齢で、それが75年で30歳以上延びたのですね。

 逆に過去に遡ると

1600年頃の寿命はよくてもせいぜい30歳程度であったであろう。

とのことですから、その後の江戸時代の人々の寿命は今とは比較にならないほど短いということが分かります。

 半分の人が30歳までで死んでしまうとすれば年を取った人はほとんど居ないのか。なら落語に出てくる「ご隠居」さんも実は意外と若い設定なのかも。などと思ってしまいます。確かに落語の「ご隠居」にはやや軽率な言動がみられがちで、意外と若い説にも分がありそう。でも、それはそれとして平均寿命が30歳程度であった江戸時代の30歳と平均寿命が81歳(女性なら87歳)である今の81歳とでは大きな違いがあるのです。

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平均寿命と平均余命(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 先週の記事で「日本人男性の平均寿命は81.4歳(女性は87.45歳)だ」というデータを引いて60歳の自分は「あと20年は生きられそう」と書いたのですが、今回のこの内容についての訂正です。

 私が書いた「あと20年」の根拠は単純に

(平均寿命)ー(自分の年齢)

という計算なのですが、これには問題がある。何しろいまちょうど平均寿命と同じ81.4歳の人がこの式で計算したら数値は0、いやそんなのおかしいですよね。もっと言うと、平均寿命はあくまでも平均なのですがから平均寿命以上の年齢の人も居るはず。そんな人が上の計算式を使ったらマイナスの値がでて「お前はもう死んでいる」ということになってしまいます。

 平均寿命まで生きた人がいると同時に、不幸にしてそれ以前に亡くなった人もいるはず。その人達の分は平均年齢を下げる方向に作用するのですから生き残った人はその分平均寿命より長生きしないと「平均」の定義に反してしまいます。つまり平均寿命まで生きた人にはその後も生きていると期待できる年数、つまり平均「余命」があるわけですね。これは別に平均寿命まで生きた人だけに言えることではありません。どんな年齢の人にも期待される平均余命が計算できるはずです。

 実は平均余命の計算は厚生労働省が計算して公表しています。実際のデータは以下のようになっています。

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「老後」か「第二の人生」か(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログを読んでいるあなたがもし高校生なら「自分が後何年いきられるのか」などあまり深刻に考えたことはないかも知れません。私はもう60歳になって「おじさん」から「おじいさん」に進化しつつあるので自分の寿命について考える様になってきました。

 ということで厚生労働省が出している日本人の平均寿命のグラフをみてみました。日本人男性の平均寿命は81.4歳(女性は87.45歳)だとか。そうか、あと20年は生きられそうですね。

 いや、このグラフ、凄いですよね。日本人の寿命がこの半世紀で20年ほど伸びたことは驚くべき改善。医療技術の進歩、健康意識の向上、社会制度の整備などがこの成果に寄与したのでしょう。でも、その根本には社会が豊かになったこと、栄養のある食料を十分に食べることができる環境が整ったことがあるのです。工学部の人間としてはどうしても「工学の偉大な成果!」と誇りたくなるところです。

 

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Bard(GoogleのAI)の意外な一面(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 前の記事(「ChatGPTとBard、どちらが偉いか」)ではGoogleの新しい対話型AI、Bardに本学応用化学科1年生に向けた課題

N2とH2からNH3を合成するプロセス、ハーバー・ボッシュ法が実用化された経緯(歴史)について調べて簡単にまとめたのち、ハーバーと ボッシュ、どちらの業績を評価するか(どちらが偉いか)、君自身の考えを述べよ。

を出して「テキトーなことを言って」「問いただされるとすぐに折れて」「簡単に投げ出す」ところがChatGPTとよく似ている、と評価しました。この記事ではバーバー・ボッシュ法のハーバー(フリッツ・ハーバーです)のことを「フリードリヒ・カール・ハーバー」と間違えている点(ChatGPTは「フレデリック・ハーバー」と間違えている)について注目したのですが、今回は解答の内容について注目してみました。ポイントは「ハーバーと ボッシュ、どちらの業績を評価するか(どちらが偉いか)」というところですが、Bardの答えは

ハーバーとボッシュの両方がアンモニア合成法の開発に重要な貢献をしたことは間違いありません。しかし、アンモニア合成法を商業的に実用化したボッシュの業績は、より大きな影響を与えたと私は思います。ボッシュの業績は、食糧生産量の増加に貢献し、世界中の人々の生活を改善するのに役立ちました。

となっていて、明白にボッシュを評価すると述べている。それも「…私は思います。」とまで書いています。

 このレポート課題は本人の意見を問うもので「君自身の考えを述べよ」とまで書かれているのですから、このように立場を決めて明確な答えをだすのが正しい。でもAIには(AIでなくてもレポートに解答する本人以外の人間にも)本人がどちらが偉いと考えるかを決めることはできません。

 ChatGPTではこの辺を曖昧にして「どちらも偉い」という結論しか出していませんでした。しかしBardは明確にボッシュを選んで解答している。この点については(「フリードリヒ・カール・ハーバー」は別として)なかなか評価に値するのではないでしょうか。

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ChatGPTとBard、どちらが偉いか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 最近話題のChatGPTのおかげでGoogleの検索はすっかり古びてしまいました。(いや、随分前から空気になってましたが。)ということでGoogleも新たにAIを公開。その名もBard。ということで、今回はChatGPTとBardを比較してみたいと思います。以前、ChatGPTに試してみたレポートの課題

N2とH2からNH3を合成するプロセス、ハーバー・ボッシュ法が実用化された経緯(歴史)について調べて簡単にまとめたのち、ハーバーと ボッシュ、どちらの業績を評価するか(どちらが偉いか)、君自身の考えを述べよ。

を、今度はBardに入れてみると…

N2とH2からNH3を合成するプロセスは、ハーバー・ボッシュ法として知られています。これは、窒素と水素を高温・高圧下で反応させてアンモニアを合成するプロセスです。このプロセスは1908年にドイツの化学者、フリードリヒ・カール・ハーバーによって発明されました。しかし、このプロセスは商業的に実用化するには高価で効率が悪かった。

1913年、ドイツのエンジニア、カール・ボッシュはハーバーの理論を基に、アンモニア合成法の改良に成功しました。ボッシュは、鉄触媒の開発と反応器の改良により、アンモニア合成法を商業的に実用化しました。

ハーバー・ボッシュ法は、化学肥料の製造に革命をもたらしました。アンモニアは、植物の成長に不可欠な窒素の供給源です。ハーバー・ボッシュ法は、アンモニアの製造コストを大幅に削減し、食糧生産量の増加に貢献しました。

ハーバーとボッシュの両方がアンモニア合成法の開発に重要な貢献をしたことは間違いありません。しかし、アンモニア合成法を商業的に実用化したボッシュの業績は、より大きな影響を与えたと私は思います。ボッシュの業績は、食糧生産量の増加に貢献し、世界中の人々の生活を改善するのに役立ちました。

私の意見は主観的なものであり、他の人には異なる意見があるかもしれません。ただし、ハーバーとボッシュの両方が偉大な化学者であり、アンモニア合成法の開発は人類の歴史に大きな影響を与えたことは間違いありません。

そういえばChatGPTは「フレデリック・ハーバー」なる謎のアメリカ人を生成したのですが、何とBardは「フリードリヒ・カール・ハーバー」を召喚してくれました。あの、「フリッツ・ハーバー」ってそんなに言いにくいのでしょうか。

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いや、自信がないときはちゃんと「自信がない」と言ってくださいね(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 そうそう、ちゃんと言ってくれたらわからないところは教えてあげますよ。知ったかぶりしてたまたま答えが合っていたとしても、それは実力にはなりませんから。君たち学生の目標は実力をつけることです。設問に正解する、しないはその実力を測る判断材料に過ぎないのですから。

いやそれはそれで正論なのですが、今回のタイトル、別に学生さんに対して言っているのではありません。最近なにかと話題の生成型AI、ChatGPTに言っているのです。

 ChatGPTの問題として、どんな質問にも簡単に答えが得られてしまって宿題やレポートが無意味になってしまう、という教育上の課題が挙げられています。それと同じような問題としてChatGPTから得られる回答が全く正しくない場合があり、利用者がそれを安易に信じてしまうのではないか、という指摘もあります。

 例えば、先日の記事で紹介した藤子・F・不二雄氏の短編漫画「定年退食」について。定年退職の「職」を「食」に入れ替えて深刻な食糧危機を描いたディストピア小説なのに、ChatGPTは「ハートウォーミングな漫画作品」と言ってくる始末。おそらく勝手に「定年退食」を「定年退職」のタイプミスだと決めつけているのでしょう。

 このように自分が正解を知っている問題であれば判断が下せるのですが、これに頼ってしまってはいつ大きな間違いをしでかすかわかりません。

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インフレ下での「FIRE」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 またまた「FIRE」の話しですか、と言われそうですね。いや、今回で終わりにしたいと思いますが、最後に今後の「FIRE」について考えておきたいのです。

 前回「FIRE」が資産を「利回り4%」で運用するという前提で考えられている、という話しをしました。例えば年間100万円で生活する(相当倹約するのでしょうね)と仮定した場合、貯めなければならない資金(原資)は2千500万円。これを4%で運用して毎年100万円の収入を手に入れるという想定です。

 とはいえ、これは物価上昇を考えていない計算です。例えば今後、物価上昇率が年2%となったと仮定しましょう。最初の年は2千500万円の資産で年100万円を得ることができます。それは翌年2年目も同じ。でも2%の物価上昇を考えると1年目の100万円と比べて2年目の100万円は2%分だけ価値が減っていることになります。だとすると2年目は約102万円稼ぐ必要がある。そのための原資は2千500万円より2%、つまり50万円増やさなくてはなりません。ですから初年度に運用でもうけるお金は100万円では足りなくて150万円が必要となるのです。結局物価が上昇する時は「利回り4%」では足りないのですね。

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「FIRE」ブームはコロナ禍の影響なのでは(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 私の最近のマイブームは「FIRE」(Financial Independence, Retire Early)。でも私がリタイアしたいという訳ではないのです。早期退職を目指して頑張る、という価値観はずっと以前から知られていたのに、なぜ「FIRE」が突然ブームになったのだろうか。今更感というか屋上屋を重ねるというか。なにか腑に落ちなくて気になってしまうのです。

 さて、今回の私の仮説は

「FIRE」ブームはコロナ禍の影響

というもの。あっ、ただのアイデアで実証的に検討した訳ではないので話し半分に聞いていただければ。

 世の中で出回っている「FIRE」の説明ではリタイア後の生活費は投資によって稼ぐということになっています。そして、若いうちにお金を貯めてそれを利回り4%で回す、という説明が付いてきます。年100万欲しいなら2千5百万、200万なら5千万というわけです。節約生活を前提とすれば無理のない話しなのでは、と思わせる絶妙な設定ですよね。

 とはいえ私が気になるのは「利回り4%」というところ。そんなこと可能なのでしょうか。元本保証の付いた預金等でこんな高利回りは最近見たことがありません。いや、0.4%でも良い方かと。ということはリスクのある金融商品でこの高利回りを達成しようという話しなのでしょう。

 そんな「FIRE」経済危機が起きたらお終いじゃないか。

 いえ、それは個々人がリスクを考えた上で決めれば良いことだと私は思います。それより私が気になるのは「資産を年率4%で回す」といういうことはのほほんとしていてできることではないでしょう。金融知識を身につけ新たな情報を見逃さないように精神を研ぎ澄まし、ことに当たっては機敏は判断と行動力で適切な運用を続ける、という結構ハードな「仕事」なのでは。普通そいういうのはリタイアじゃなくて「投資家」への転職と言うのですが。

 おっと、「FIRE」ブームはコロナ禍の話しでしたね。

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人間はなぜ働くのか、自分はなぜ働くのか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 昨日「FIRE」(Financial Independence, Retire Early)について書いたのですが、今回もその続きの話をしたいと思います。「FIRE」の後半、REはRetire Earlyとなっていますが、それに準ずる「early retirement」(早期退職)という言葉に私は以前から聞き覚えがあるのです。それも、

 アメリカのエリート会社員には猛烈に働いてどんどん稼いで「early retirement」するのが目標だ、という人が結構いるんだよ。

といった文脈で、です。(どこの誰に聞いたのかはっきり覚えていないのですが、多分大学生のころに先生から聞いたのでしょう。)つまり、人生はあくせく働くためにあるのではない。仕事をするのは必要悪の様なもので本来の自分の生活をエンジョイするのが本当の人生なのだ。という米国エリートの割り切った考え方です。

 わざわざこんな説明しているということは「仕事は必要悪」という考え方が日本では一般的ではないからでしょう。一生働かないと食べていけない、という切実な事情はひとまず棚に上げたとして、人は働く事で他人とつながり、社会の一員となるのだ、という考え方の方がより一般的ではないでしょうか。少し大袈裟な言い方ですが「仕事は生き甲斐」と考えているひとが多い、ということでしょうね。

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